犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

宮崎市定①~運河論

2007-12-04 00:11:11 | 韓国雑学

 韓国の大統領選が大詰めです。

 今後,よっぽどのスキャンダルが出てこないかぎり,李明博の優位は揺るがないでしょう。彼の公約である,京釜大運河構想(ソウルからプサンまで運河を作る構想)を聞いたとき,中国史の宮崎市定を思い出しました。


 中国の大河川は大体並行して東に向って流れるので,これが中国の歴史に大いに関係をもつ。いったい河川は人類の交通に多大の便益を与えるので,水の流れにしたがって交通が発達する。中国の古代文明は西アジアから影響を受け,先ず中国の西北方から開け始めたと思われるのであるが,それが黄河水系を伝わって東に向って拡がり,華北一帯に光被する速度は非常に速かった。併し次に方向をかえて南に向い,揚子江流域を同化するには長い時間を要した。(中略)

 前述のように河川は,その流れに沿って交通が発達するが,その流れを横断しようという時には非常な障害となる。中国の河川は大体において並行して西から東へ流れているので,東西よりも,南北の交通の方が利益が大きいのである。何となれば東西方向だと,緯度の高さが同じで従って気候に大差がなく,其の物産も大同小異である。然るに土地の南北の差は自然界の分布の差異を伴うので,南北間における産物の交換は人類にとって最も有利である。そこで中国の河川が東西に流れることは,そのままだと有利な南北貿易に障害を与える結果になる。だからもしも中国の河川が南北に流れていたならば,中国社会はもっと早く文明が進歩したであろうという想像も成立つのである。

 併し文明の方がある程度進歩すると,今度は不利な自然の条件を人為で補うことを考えるようになる。幸い中国の本部は平坦地が多いから,運河を開鑿して,並行して流れている河川を縦に連結することが可能である。こうしていわゆる大運河が成立したのである。(宮崎市定「中国河川の史的考察」,向井敏『表現とは何か』より再引用)

 隋の「大運河」によって,唐における中華文明の飛躍がもたらされた事情を説明しているわけですが,ソウルとプサンは確かに「南北」だけど,スケールも違えば時代も違う。

 はたして,どんな経済効果があるんだろうか。


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2 コメント

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大運河 (スンドゥプ)
2007-12-04 09:24:03
大きな運河は平地に造られると思うのですが、ソウルとプサンの間って山じゃなかったんでしたっけ?
そんなところに運河ってできるのでしょうか?
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はて (犬鍋)
2007-12-05 22:52:37
トンネル掘るんじゃないですか?
返信する

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