韓国の鉄道事情～セマウル号

　先日，久しぶりにセマウル号に乗りました。

　セマウルとは「新しい村」。

　かつて朴正煕大統領，全斗煥大統領時代に繰り広げられた農村振興運動（セマウル運動）にちなんだ名前のようです。ＫＴＸ（高速鉄道）が出るまでは，韓国鉄道の花形でした。
　韓国版新幹線，ＫＴＸは速さが自慢ですが，車内が狭いといって，評判はあまりよくない。セマウル号のほうがゆったりしています。

　首都圏を抜け出て車窓を見ていると，なんか気分がいい。日本の電車の車窓とどことなく違うような気がします。
　さびれた田舎町の駅に降り立って，その理由がわかりました。

　電柱がない。

　実はセマウル号はディーゼル機関車なんですね。それで，日本なら線路脇に一定間隔で立っている電柱が必要ない。車窓からの眺めがすっきりしていたのは，電柱に邪魔されなかったからなのでした。

　しかも，単線！　広々とした野原を走っているようです。

　毎年，秋夕（チュソク）とか正月（ソルラル）になると，鉄道も満席，高速道路は大渋滞ですが，その理由は貧弱な鉄道網。単線区間が多いので増発ができない。日帝時代に日本がせっせと整備した鉄道網は，その後ほとんど拡張されなかった。見習うべきは日本じゃなくてアメリカだ，ということで，陸上輸送の主力を鉄道から自動車に切り換え，日本から得た請求権資金を主に高速道路建設につぎこんだ。そのつけが，現在の貧弱な鉄道網に回ってきたわけです。

　日本に見習って鉄道網を充実させればよかったのに。
　さらに言えば，フランスのＴＧＶじゃなくて，（驚異の輸送量を誇る）日本の新幹線の技術を導入しておけばよかったのに……。

　いまさら言っても始まりませんが……。