私は若き日にフランスに語学研修に行ったことがあります。20歳のときのことです。
一カ月ずつ,別の語学学校に行きました。最初は温泉町ヴィシー。第二次世界大戦時,ナチスに占領され傀儡政権が置かれた街です。
翌月はカンヌ。映画祭で有名なリゾートです。
内陸のヴィシーと地中海沿いのカンヌ。ヴィシーが3月でカンヌが4月だったということもあるのでしょう。カンヌは暖かく,太陽がまぶしく,華やかだった印象があり,ヴィシーはまだ肌寒く,曇りがちで,地味な印象が残っています。
そこに来ていた留学生も違った。カンヌは北欧やドイツなどから保養を兼ねて勉強に来ている学生が多かったのに比べ,ヴィシーはアジア,中東,アフリカなどからの政府留学生が多かった。
ベトナム,中国,スリランカ,ヨルダン,アンゴラ…。
その中に一人のリビア人がいました。昼食のあと,留学生たちは連れ立ってコーヒーを飲むことが多いのですが,リビア人はほかの人に払わせない。おごってくれるのです。
当時,リビアをアフリカ随一の産油国になっており,オイルマネーによって潤っていた。
「今,リビア国民はみな金持ちだ。カダフィ大佐のおかげだ」
その言葉が正しかったのかどうかは知りません。当時文学青年で世界情勢にうとかった私は,そのリビア人の話を素直に受け止めていました。
カダフィの革命の前,石油が生み出す富は国王とその取り巻きに独占されていた。政権を奪取したカダフィは,社会主義的な政策で富を国民に還元したのでしょう。
そして今,カダフィ政権は風前の灯火です。
「権力は腐敗する」
40年以上にわたる独裁政権の中で,再び貧富の差は広がり,失業率は30%を上回り,国民の不満が高まる。
30年前に同じ教室で学んだ人々と,その後,連絡をとっていません。もしかしたら,政府の要職についた人もいたかもしれません。あのリビア人は今,何をしているのか気になります。
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今回の地震、大丈夫でしたか
揺れは恐かったし、交通期間マヒで家に帰り着くまで大変でしたが、被災地のみなさんの苦痛に比べれば物の数ではありません。
犠牲者のみなさんのご冥福をお祈りします。