犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ポンテギの話(3)

2006-04-06 21:16:59 | 食べる
 知り合いの日本人が,ポンテギの匂いを嗅いで,「これって,昔,釣り堀で嗅いだ匂いだ。ようするに魚の餌だろう」と言っていた。私は釣りをしないのでわかりませんが,日本では魚の餌に使われてるようですね。

さくらももこさんの同じ本から,別の一編をご紹介。

「ニシキゴイの子供達は,狭いタライの中で過激に泳ぎまわり,時折いきおい余ってタライの外に飛び出て死ぬものもいた。やはり,子供のコイといえども,コイをタライで飼うなどという事はかなり無理があったようである。飼い始めてから半年余りの月日が流れたが,子供のコイ達は一向に大きくならなかった。

 ある日,母が「やっぱり,うちでコイなんか飼うのはムリだよ。池のある家へもらってもらおう」と,とうとう言い出した。私は「えーっ,やだよ」と一応言ったが,実はその頃にはもうコイへの情熱も冷めていたので激しく抵抗するのも労力のムダだと思い,軽い抵抗で受け流した。あまり抵抗しない私の姿を見て父が「そうだな。ももこも,コイを一回飼ってみたっていうだけで別にもういいだろ」と,まるで私の情熱の冷めたことを見透かしたように言った。あの呑気者の父ヒロシには見透かされたくない胸の中であった。

 あっというまにコイ達は同じ町内の立派なお宅へもらわれてゆく事に決まった。もともとコイなんて,そのような家で生きるべきなのである。この家には広い庭があり,松やその他の樹木が繁る中,大きな池が造られてあるのだ。私は,そんな家にもらわれてゆくコイが少しうらやましかった。

 私と母がみすぼらしいバケツを手にその家を訪れ,池にコイを放つ時がやってきた。

 広い池に放たれたコイ達は,新たな世界に踏み込んだ驚きを隠せない様子でうろたえていた。古参のコイ達は皆40センチ以上ある大きな体をしているのに対し,うちのコイ達はわずか10センチ弱であったため,貧乏臭さとあわれさがつのり,いたたまれない気持ちになってしまった。

 数カ月後,母が「あのね,うちで飼ってたニシキゴイ,すっごい大きくなったんだってさ。あそこの奥さんが『見においで』って言ってくれてるから,一緒に見に行こう」と言うので見に行くことになった。

 なるほど,うちのコイ達は立派になっていた。やはりコイはこうあるべきだという姿になっていた。小さいコイをもわずか半年で大きくしてしまう,金持ちの実力を私はつくづく思い知ったのである」

さくらももこの『ももこのいきもの図鑑』(1998集英社文庫)より,「ニシキゴイ(もらわれてゆく編)」でした。

 この金持ちが,コイをポンテギで育てたかどうかは不明です。

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