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弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ウォルフレン著「誰が小沢一郎を殺すのか?」

2011-08-28 08:45:17 | 歴史・社会
誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)

表紙の帯には、
『異分子を「抹殺」する検察、メディア、日本というシステム
「反小沢キャンペーン」の騒乱に、この国を支配する「非公式権力」を今こそ見抜け--。日本取材30年のオランダ人ジャーナリストが斬る!』
とあります。

日本を実際に動かしている“陰の”政治システムは何なのか、それは他の先進民主主義国とどのように異なっているのか、という話を、小沢一郎を追い詰める検察とメディアの行動を通じて明らかにしよう、という趣旨の本です。
ただし、綿密に事実を検証して真実をあぶり出そうとするには、ページ数が足りません。非常におもしろい見方だと注目する一方で、本当にその通りなのかが本の中できちんと検証されていないので、著者の説を信じて良いのかどうかが不明のままです。その点がとても残念でした。

例えば、「日本は政治主導ではなく官僚主導だ」という点に関して・・・
『もちろん他国では、このような課題は政治家にとって少しも目新しいものではない。なぜならばほかの先進諸国においては、どのような課題を優先すべきか、そして国家がどちらに向かって進んでいくべきかを決定することこそが政治家の役割であると、当然のようにみなされてきているからだ。そしてそのような民主国家では、省庁の官僚というのは大臣のために働く存在である。ところが日本のキャリア官僚たちは、大臣や政治家を、彼らの省庁につかの間やってくる訪問客としてあつかう。大臣たちがやってくれば、省庁の官僚はうやうやしく彼らを迎える。ところが、本来は省庁を指揮する立場にあるというのに、大臣が政策を打ち出すことは殆どない。・・・大臣には忠実なスタッフもいなかった。そして大臣は、高級官僚に四六時中取り囲まれているうちにすっかり洗脳されてしまうのであった。』(20ページ)
書かれている日本の状況については、「まさにその通り」ということで是認します。しかし、他の先進民主主義諸国では、日本とは全く異なり、正しく政治主導が行われている、という認識については知りませんでした。日本もひどい官僚主導だが、他国だった多かれ少なかれ同じなのではないか、と思っていたからです。

『先進国の大臣なら、閣議において国家が優先すべき課題について議論し、政策を作り出さなければならない。そしてまた国家予算がどのように配分されるかを決定するのも彼らである。・・・またほかの先進諸国であれば、こうした優先課題の割り当てについて、その大半を指示するのは、首相もしくは大統領の役目である。』(20~21ページ)
そうだったのですか。
先進民主主義諸国と日本との間にそのような乖離があるのであれば、「先進諸国はそれぞれこのようなシステムである。違うのは日本だけだ。」という点を実証するのみで、日本の向かうべき道は明確となり、官僚主導から政治主導への道がこのように困難を窮めることにはならないと思うのですが。

著者は小沢一郎を非常に高く買っています。
『すでに10年ほど前から、私のみならず、日本人であれ外国人であれ、日本の経済や政治の状況を詳しく検証する友人たちもまた、これまでに頭角をあらわした政治家たちのなかで、日本が必要とする抜本的な改革に取り組めるのは、小沢氏をおいてほかにはいないだろうと見ていた。』(25ページ)
残念ながら、著書の中には、小沢氏をこのように高く買うことの根拠が書かれていません。かといって私には「その結論は間違っている」と指摘するほどの知識もないので、「いったいどちらが正しいのだろうか」という疑問が残ってしまいました。

日本では、1993年当時から現在に至るまでずっと、小沢氏に対する「人物破壊(character assassination)」が続いていると著者はいいます。「人物破壊」とは、標的とする人物を実際に殺さないまでも、その世間での評判や人物像を破壊しようとする行為を指すそうです。
さらに著者は、他国ではなく、自国の一市民(である小沢氏)に対し、これほど強力な人物破壊キャンペーンが展開される例は他にない、といいます。
日本の外から見たら、それほど異常なキャンペーンだったのですか。

著者は、「小沢氏を標的とした日本でのこうした一連の動きは、政治活動に関する諸外国のいかなる基準に即して考えてみても、極めて異常と言うしかない」として、日本の歴史にさかのぼって検証を始めます。その内容は、非常におもしろい着眼点だとは思うのですが、残念ながら検証が不十分であり、「なるほどそういう見方もある」と納得するには至りません。逆に「それは間違っている」と反論するネタを当方が持ち合わせていないので結論は宙ぶらりんのままです。

取り敢えず、「著者のウォルフレン氏はどのような指摘をしたか」という点については覚えておいて損はなさそうです。今後日本で発生する事象について、ウォルフレン氏の指摘が当たっていたという事象に遭遇すれば、その事象の裏に隠れているシステムをあぶり出すことができるかもしれません。

ついでに、小沢一郎氏に言及した当ブログ記事を上げておきます。
2008-04-03 小沢一郎という政治家
2010-07-17 管政権はもはや死に体か
2010-08-29 小沢一郎に振り回される日本
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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ありがとうございます ()
2011-08-29 01:23:38
知りたい事を抜書きしてくれて
便利に拝見いたしております。
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