弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

郵便法と特許法

2007-09-30 15:18:34 | 知的財産権
先日記事にしたとおり、特許庁から以下の案内が出されました。

「特許法第19条(願書等の提出の効力発生時期)に規定されている 郵便物のうち小包郵便物については、郵政公社の民営化に伴う郵便法の改正により、平成19年10月1日以降、郵便物に該当しなくなります。
平成19年10月1日以降、「小包」で特許庁宛に提出された場合は、特許庁に到着した日が書類等の提出日となりますのでご注意ください。」

特許庁への提出期限が定められた書類について、原則として期限内に特許庁に到達していなければなりません。いわゆる「到達主義」です。しかしその物件を郵便により提出した場合で郵便局差し出し日時が明らかな場合は、その差し出し日時に特許庁に到達したものとみなされます(今までの特許法19条)。

郵政公社もできる前、書類を特許庁に発送しようとしたら、以下の手段がありました。

①郵便局から出す普通郵便
②郵便局から出す小包
③民間業者の信書便
④民間業者の宅配便

以上のうち、①②を用いた場合には、郵便局に差し出した日付が、特許庁提出日とみなされます。
一方、③④を用いた場合にはそのような扱いがなく、現物が特許庁に届いた日が提出日となります。特許法19条の「郵便」に該当しないからです。
この扱いは、郵政公社に変わったあとも同じでした。


そしてこの10月からの郵政民営化です。

そもそも、特許庁到達日の取り扱いについて、上記①②と③④とでなぜ異なるのでしょうか。特許法19条を何もいじらなかったため、条文の文言解釈としてそうなっているだけなのか?

特許法19条の趣旨として、工業所有権法逐条解説(青本)には、「いわゆる発信主義である」と書かれています。どういうことでしょうか。
「発信日さえ証明できれば、期限内に発信すればよい」ということでしょうかか。そうだとしたら、公社か民間かで差別するのはおかしいです。民間扱いの配達でも、発信日は十分に証明可能です。
さらにいえば、「郵政民営化」です。もはや、「公ならOK、民間ならNG」という論理は存在しません。そこで、郵政民営化後に特許法19条の取り扱いがどのように変更されるのかに注目していました。


今回(10月1日施行の法改正)の取り扱い変更を追ってみると、以下のようになるようです。

郵便法における「郵便物」の定義(旧16条、新14条)が、「通常郵便物+小包郵便物」から、「第一~四種郵便物」に変更になりました。「通常郵便物」とは、「第一~四種郵便物」のことです。
従って、特許法19条を改正しない限り、発送日が特許庁到達日とみなされるのは、①~④のうちの①のみとなってしまいます。

そこで特許法19条の改正です。一体、②~④のいずれを対象に加えたのでしょうか。
結論は、③です。

つまり、従来の対象が①②であったのに対し、郵便法改正で②が対象から外れ、特許法改正で代わりに③を対象に加えたということです。


そもそも特許法19条の趣旨が「発信主義」なのであれば、通常郵便物と小包郵便物とで差を設けることの意味が分かりません。

一体どのような考え方に基づいているのでしょうか。


(参考)
以下に郵便法と特許法の改正前後の条文を紹介します。ただし、改正後の特許法19条については、骨子のみを取り出し、枝葉部分を注釈として分離しました。

郵便法(昭和二十二年十二月十二日法律第百六十五号)

(本年10月改正前)
第一条 (この法律の目的)この法律は、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。

第二条 (郵便の実施)郵便の業務は、この法律の定めるところにより、日本郵政公社(以下「公社」という。)が行う。

第十六条 (郵便物の種類)郵便物は、通常郵便物及び小包郵便物とし、通常郵便物は、第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物とする。

(最終改正までの未施行法令)平成十七年十月二十一日法律第百二号 (未施行)

(本年10月改正後)
第一条 (変更なし)

第二条 (郵便の実施)郵便の業務は、この法律の定めるところにより、郵便事業株式会社(以下「会社」という。)が行う。

第十四条 (郵便物の種類)郵便物は、第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物とする。


特許法(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案新旧対照条文から)
(本年10月改正前)
第十九条 願書又はこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているものを郵便により提出した場合において、その願書又は物件を郵便局に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時に、その郵便物の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時に、その郵便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であつて時刻が明瞭でないときは表示された日の午後十二時に、その願書又は物件は、特許庁に到達したものとみなす。

(本年10月改正後)
第十九条 願書又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているものを
郵便又は*3「信書便」の役務*4により提出した場合において、
その願書又は物件を
郵便事業株式会社の営業所であつて*5郵便窓口業務を行うもの*6に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時に、
その郵便物又は*7「信書便物」の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時に、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であつて時刻が明瞭でないときは表示された日の午後十二時に、
その願書又は物件は、特許庁に到達したものとみなす。

*3 民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号。以下この条において「信書便法」という。)第二条第二項に規定する*3-2信書便
*3-2 *1一般信書便事業者若しくは*2特定信書便事業者の提供する
*1 民間事業者による信書の送達に関する法律(信書便法)第二条第六項に規定する
*2 同条第九項に規定する
*4 であつて経済産業省令で定めるもの
*5 郵便窓口業務の委託等に関する法律(昭和二十四年法律第二百十三号)第二条に規定する
*6 (同法第三条第一項若しくは第三項の規定による委託又は同法第四条の規定による再委託を受けた者の営業所を含む。)
*7 信書便法第二条第三項に規定する信書便物
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