弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

2~6号機から撤去した「蒸気凝縮系」とは

2011-06-03 22:10:53 | サイエンス・パソコン
東電が5月23日に公表した「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について」を読み解いてきました。
昨日は2号機の「隔離時冷却系が正常に動いている間」について検討しました。
その結果にはびっくりしてしまいました。
隔離時冷却系が正常に動いていたのに格納容器の温度が上がりすぎて、地震から21時間という早い段階で、格納容器にφ10cmの穴が開いたらしいし、もし穴が開かなかったとしたら圧力が上がりすぎ、隔離時冷却系が正常に動いているにもかかわらずベントが必要であった、というデータだったからです。
これが事実としたら、2号機が全電源喪失時の冷却機能として準備していた「隔離時冷却系」が、実は設計として能力不足だった、ということを示すことになります。驚くほかないでしょう。

本日、週刊文春6月9日号を買ってきて、2度びっくりしました。
それによると、2003年2月17日の原子力安全委員会定例会議で、「福島第一原発2~6号機の蒸気凝縮系を削除する」という議題が検討されていました。
「蒸気凝縮系」とは何でしょうか。週刊文春の記事によると、『原子炉から出る蒸気を配管に通し、「熱交換器」で冷却して水に戻し、再び原子炉に注水するという冷却システム』で、電源がなくても作動するそうです。
これって、1号機の「非常用復水器」(図面)と同じ機能ではないですか。この「蒸気凝縮系」がとにかく撤去され、今回の地震発生時には存在していませんでした。
昨日の記事でも書いたように、もし2号機の隔離時冷却系が単独のシステムとしては冷却能力不足であったのなら、撤去した「蒸気凝縮系」は必須の冷却システムであったことになります。「蒸気凝縮系」は、1号機の「非常用復水器」と同じ機能であるのなら、蒸発する冷却水を供給し続ける限り、そしてバルブを作動させる電源が生きている限り、圧力容器を永久に冷やし続けることができるはずです。その必須システムを撤去した結果として、2号機は3月11日から14日まで隔離時冷却系が奇跡的に正常に作動していたにもかかわらず、冷却不足に陥ってしまいました。

東電が5月23日に公表した「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所運転記録及び事故記録の分析と影響評価について」における解析データと考え合わせ、「蒸気凝縮系」を撤去したことが今回の原発事故にどう影響したのかしなかったのか、厳密に解析して欲しいものです。

なお、全交流電源喪失時に、バルブを操作するバッテリーは8時間しか持たない設計になっているそうです。そのことが今回の事故にどのように影響していたのかという点はよくわかりません。

続く
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