弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

1年前の原子炉建屋放水作業

2012-03-25 11:42:21 | サイエンス・パソコン
今からちょうど1年前ですね。
昨年の3月17日、福島第一原発の原子炉建屋に対しての大放水作業が敢行されました。
まずは自衛隊のヘリコプターを用いた放水です。1回に7トンといいますが、プールの容量は1400トンだそうじゃないですか。それに放水の映像を見たら、7トンのうちの2トンでもプールに到達すれば良い方、といったような状況でした。
次いで警察の放水車での放水開始です。うまくいかなかったようです。
それに引き続き、航空自衛隊の消防車による放水が始まりました。自衛隊の消防車が、消防署の消防車よりも性能が良いのかどうかわかりませんが。
それから2日経って、19日に東京消防庁ハイパーレスキュー隊の屈折放水塔車が登場し、難なく核燃料プールへの注水をやってのけました。
さらに22日には、コンクリートポンプ車の登場です。

コンクリートポンプ車は本部がその存在を知らなかったので、最後に登場したことはやむを得なかったとして、東京消防庁の屈折放水塔車がなぜ4番目にしか登場しなかったのか。効果が薄いことは始めから判っていたであろうヘリコプター放水をなぜ実施したのか、という点がずっと疑問として残っています。

昨年4月3日に原子炉建屋への放水作業の経緯で記事にしたように、首相官邸災害対策ページ東京電力(株)福島第一・第二原子力発電所事故関連情報に行くと、「平成23年(2011年)東京電力㈱福島第一・第二原子力発電所事故(東日本大震災)について」の2番目に「~7月19日」pdfファイル(以下「原災本部レポート」)があります。
この書類の「4.各省庁の活動状況」の終わりの方、139ページに「○消防庁」の欄がありまして、その3月12日に興味深い記載があるのです。
『3月12日
18:02 原子力安全・保安院から施設を冷却するための装備を持った部隊を派遣してほしいとの要請があり、消防庁長官から、東京消防庁のハイパーレスキュー隊及び仙台市消防局の特殊装備部隊を緊急消防援助隊として派遣要請
 →原子力安全・保安院の要請取り消しにより、中止』
『3月17日
07:00 総理大臣から東京都知事に対し、福島第一原発への特殊車両等の派遣の要請があり、都知事がそれを受諾。これを受け、18日00:50、消防庁長官から東京消防庁のハイパーレスキュー隊等を緊急消防援助隊として派遣要請(派遣:18日~)』

この原災本部レポートは、昨年3月頃には毎日更新され、最新のものから日付の古いものまで閲覧することができました。私は3月31日15時の版を印刷物として持っていますが、3月12日のハイパーレスキュー隊要請と要請取り消しについてはすでに記述されています。

昨年4月3日の私の記事では、
『3月12日に何があったのでしょうか。
12日の時点で、原子力災害対策本部はハイパーレスキュー隊とその装備について知っていたことになります。それにもかかわらず、一度は派遣要請を取り消し、再度派遣要請したのは17日、まさに自衛隊のヘリコプター、警視庁機動隊の放水車による放水がはじまった日です。
誰かが、ハイパーレスキュー隊の出動をとめたのでしょうね。この件のいきさつについては、いずれ追求すべきです。
また、原子力災害対策本部からの文書「平成23年(2011年)福島第一・第二原子力発電所事故について」の中に、3月12日の「派遣要請取り消し」の文章を挿入した人物がいるわけですが、何かを伝えたかった意思が感じられます。』
と述べました。


3月1日に「原発事故・民間事故調報告書」として記事にしたように、民間事故調の報告書が公表されました。この報告書を読むためには書籍として購入しなければなりません。私は購入して読んでいるところです。
福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書
クリエーター情報なし
ディスカヴァー・トゥエンティワン

この本の161ページに、3月17日以降の放水活動に関する検証結果が記述されています。
『第二に、3月12日の消防庁への派遣要請と直後の取り消しである。原子力安全・保安院は施設を冷却するための装備をもった部隊を派遣してほしいと消防庁に要請を行った。これを受け、消防庁長官は、東京消防庁のハイパーレスキュー隊及び仙台市消防局の特殊装備部隊の緊急消防援助隊としての派遣を要請した。しかしながら、出動途上において原子力安全・保安院の要請取り消しにより、両消防本部に対する出動要請は解除された。要請の取り消しについて経済産業省関係者は「道路がダメだったから」という理由をあげている。この要請と要請取り消しの事実は後述のとおり官邸に伝わっていない(注4)。このことから、原子力災害対策本部である官邸は、対応を把握していなかった事実がうかがえる。
(注4)細野補佐官インタビュー、2011年11月19日』

私の疑問は、「本当に官邸・原災本部は、東京消防庁ハイパーレスキュー隊の装備について3月17日直前まで知らなかったのだろうか。少なくとも原子力安全・保安院は12日の段階でハイパーレスキュー隊のことを知っていたわけで、原災本部が知らなかったということは極めて不自然である」という点です。
昨年3月末の段階で、「原災本部レポート」は毎日更新され、ネットで閲覧可能でした。少し工夫すれば、バックナンバーを読むこともできました。そして、3月31日の版には12日の「ハイパーレスキュー隊要請と要請取り消し」の事実が記載されているのです。ということは、この「原災本部レポート」のバックナンバーをたどれば、少なくとも3月の何日に原災本部が「要請・要請取り消し」を知ったのかが明らかになるはずです。

ということで、私は民間事故調にメールを出し、原災本部レポートのバックナンバーを調べてもらうようにお願いをしました(本年3月14日)。
それに対して、さっそく3月24日に返答をいただきました。ただし残念なことに
『ご質問のありました、消防庁への派遣要請と直後の取り消しについて。
調査担当者に確認をとりましたところ、この要請と要請取り消しの事実が官邸に伝わっていなかった、という事実認定のみ行ったとのこと。
ご指摘の記録書類についても、バックナンバーの取り寄せができず入手できませんでした。
ご要望にお応えできず大変申し訳ありません。』
とのご回答でした。

そこで次に、政府事故調にも同じ趣旨で質問メールを投げかけました。政府事故調の最終報告書に反映されるかどうか、注目しています。

昨年3月17日のハイパーレスキュー隊の派遣については、その要請の仕方にも問題がありました。
何と、管総理大臣から東京都知事に要請があり、都知事が東京消防庁に命じてハイパーレスキュー隊を派遣したのです。
私は、てっきりこのルートが正式なのかと思っていました。ところが上記「民間事故調報告書」の162ページには以下の記述があります。
『3月17日の東京消防庁への放水活動の依頼は、被災地に向けた全国からの緊急消防援助隊の部隊運用を担っていた総務省消防庁が調整を行うはずであったが、東京消防庁ハイパーレスキュー隊の派遣決定は、首相から都知事という本来は想定されていなかったルートで行われた。』
そうだったのですか。
何であのとき、「首相 → 都知事 → 東京消防庁」というルートが用いられたのでしょうか。官邸はあの時点で総務省消防庁と調整し、正規の要請ルートを把握しているべきでした。
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放水のひとつの結果(私見) (xls-hashimoto)
2012-03-26 00:58:04
私は、3月12日あたりは、
「何にしろ冷却しなければならない。
しかし、ヘリコプターでの放水や放水車などでの放水はしてはいけない。
山側から海側にホースを抱かせある程度垂らしたワイヤーをヘリコプターで渡し、山側から消防車で水を送る様にしなければならない。
水が勢いよく高汚染物にぶつかると、とんでもない放射性ダストが舞い上がる。
私が現場で「夏の甲子園現象」と呼んでいたグランドへの水撒きのような状況になるからです。」
との内容のメールを知り合い達に送りましたが、現場には届きませんでした。

このブログも知りませんでしたから、どこへも伝えられませんでした。

この結果がどうなったか?
群馬大学の早川教授が作成した
「福島第一原発から漏れた放射能ルートとタイミング」
http://gunma.zamurai.jp/pub/2011/route930.jpg
を見れば分かります。
ピンクの「2011年3月21日 柏ルート」が、放水により舞い上がった物が飛んでいったルートです。

と、私と一部の知り合いが思っていることです。
放水のひとつの結果を示すデータ (xls-hashimoto)
2012-03-26 08:36:24
日本原子力発電株式会社
http://www.japc.co.jp/

発電所情報
http://www.japc.co.jp/plant/index.html

東海第二発電所を「さらに詳しく」
http://www.japc.co.jp/plant/tokai/dai2top.html

発電所周辺の放射線監視状況(トレンドグラフ)
http://www.japc.co.jp/plant/driving/trend2_tokai.html
の「先月の監視状況」

発電所情報データ集
http://www.japc.co.jp/plant/data/management/mp/tokai.html
の「過去の監視状況」

東海・東海第二発電所周辺の放射線監視状況(月毎)
http://www.japc.co.jp/plant/data/management/mp/tokai_mp_past.html
の「2010年度詳細グラフ3月」

空間線量率と降雨量の測定結果(2011年3月)
http://www.japc.co.jp/plant/data/management/mp/mpdata/tokai/2010/tkmp2303g.pdf

3月15日のピークは、3号機の水素爆発で飛んできた物です。
3月21日からのピークは、ハイパーレスキューの放水作業により飛んできた物です。
この時には、悪いことに降雨も度々あり、天然スクラバ(集塵機)として機能しました。
モニタリングポスト周辺に飛んできた物を落としました。

このピークから数時間後に、柏周辺にピークが着たものと思います。
3月21日柏ルートの原因 (snaito)
2012-03-26 21:25:24
xls-hashimotoさん、コメントありがとうございます。

私は、3月21日の柏ルートについては疑問に思っていました。3月21日には特別に放射能が放出する事象が報告されていないからです。
一つの想定として、「3月17日以降は常に同じような放出量が続いていたが、大部分の時間帯は風が海に向かって吹いていたので無害だった。たまたま3月21日は南南西に向かって風が吹き、さらに降雨があったために柏や松戸が汚染された」のかな、と考えていました。
それに対してxls-hashimotoさんは、「3月21日は放水作業によって特別に多くの放射性物質が舞い上がり、それが柏ルートの原因になった」と考えておられるのですね。
その考え方については、いろいろのところに発信してはいかがでしょうか。
私は、「これは重要だ」と思いつくと政府事故調や民間事故調にメールを送るようにしています。

3月15日の大量放出の原因について、xls-hashimotoさんは3号機の水素爆発とされているのですね。
私は、3月15日朝の2号機圧力抑制室破損が原因だとずっと思ってきました。
間違いました!3月15日は、2号機です (xls-hashimoto)
2012-03-27 06:59:28
お詫びして、訂正いたします。

年のせいか、1年前のことは忘却の彼方に行きつつあります。

3号機は、14日11時01分に水素爆発。
2号機は、15日6時10分に圧力抑制室の圧力が0MPa。

ですから、2号機から飛んでいった物が東海に達しました。

「私は、3月15日朝の2号機圧力抑制室破損が原因だとずっと思ってきました。」が正解です。

福島第一2,3号機 トーラス室事前調査について
http://photo.tepco.co.jp/date/2012/201203-j/120314-01j.html
に2号機圧力抑制室の写真が載っています。
2号機 北西(4)の写真は、圧力抑制室全体が赤色です。
http://photo.tepco.co.jp/library/120314/120314_04.JPG
2号機 北東(3)の写真は、圧力抑制室が白く変色し、何かが流れ落ちたようになってます。
思うに、この上にある圧力抑制室につながる配管の中で水素爆発が起こり、配管がギロチン破断し、蒸気が噴出したんでしょう。
この噴出した蒸気が圧力抑制室に当たり白く変色させたと、勝手に思っています。

3号機 北東(3)の写真では、圧力抑制室の入り口扉が外にふくらんでいます。
圧力抑制室の中で、これ程圧力が高くなることが起こったことを示しています。

原子炉建屋1階でも圧力が高くなることが起こりました。
3号機 北東(1)の写真に、1階から降ってきたものが手すりにあたり、激しく曲がっています。
これだけの勢いで飛んできたんです。

2号機には、このようなことが見受けられません。
建屋ないで水素爆発を起こしてないからだと思われます。
水素爆発が起きたとしたら、配管の中で起こしてギロチン破断させたと考えるのがすじですかね。


3月21日の被曝 (nikonikopan)
2012-04-09 22:46:16
3月21日に被曝したと思われる松戸の住人として福島第1で測定された空間線量の3つピークの原因が謎でした。放水によるものとは考えてもみませんでした。納得しても詮無いことですが。
ところで東電社長が海水注入時期を逸してメルトダウンさせて技術経営責任をFUKUSHIMAレポート(大前研一氏のレポートにつぐ技術的に的確な分析)で山口栄一先生が追及しています。日経ビジネスオンライン20110513-01でも見られます。
ご参考まで
原発事故初期状況 (snaito)
2012-04-10 00:23:13
nikonikopanさん、こんにちは。
昨年5月13日の報告書ですね。
あの時期に書いたこのブログ記事を読み返しました。「炉内ではいったい何が起こっているのか」を知ろうと努力したことを思い出しました。

現在の通説では、以下のようになっています。
1号機は最初からICが作動していなかったのに、現地も東電本店もそのことに気づかず、淡水注入開始が圧倒的に遅れてしまった。
3号機は海水注入しようとしたが、そのためには圧力容器の圧力を下げるために主蒸気逃がし安全弁を開放しなければならず、弁を作動するためのバッテリーをかき集めるのに時間を浪費し、海水注入開始が遅れてしまった。
2号機は、3号機の経験があったにもかかわらず、やはり主蒸気逃がし安全弁を開放するのに手間取り、海水注入開始が遅れた。

以上のように通説では、東電社長の判断が遅れたため、とはなっていないようです。
現場は知恵の回る範囲内で最善を尽くそうと努力していたが、知恵が回りきらなかった、とされています。
「SPEEDI」よりも有用な米国大気海洋研究所の解析ソフト【NOAA HYSPLIT MODEL】 (xls-hashimoto)
2012-08-22 11:23:18
日本芝草学会が、平成23年9月30日に福島市で、
「2011放射能物質除染対策緊急集会」
http://www.jsts-online.com/start/conference/nuclear
を開催しました。

集会は終了しましたが、下記の講演資料がダウンロードできます。
「福島県内の公園緑地や芝生地の放射性物質による汚染状況について」 茂木道教:(株)日本環境調査研究所(約2124KB)
http://members2.jcom.home.ne.jp/0859ggxi/events/110930fukushima1.pdf
私は、この講演資料を今日初めて目にしました。

茂木氏は、福島第一原子力発電所の事項に伴い、放出された汚染物質が気流によってどのように拡散したか、発電所周辺の線量率の変動を基に、米国大気海洋研究所の解析ソフト【NOAA HYSPLIT MODEL】を用いて私的に解析しました。

7ページには「3月12日の大気放射能拡散解析結果」が示されています。
1号機のベントや水素爆発時に南風で北に飛んでいった放射性プルームは、女川原発のモニタリングポストの値を通常の4倍に上げました。

8ページには「3月13-14日の大気放射能拡散解析結果」が示されています。
3号機のベントや水素爆発時に西風で海に飛んでいった放射性プルームは、太平洋に展開していた米海軍の艦船をえらい目に遭わせました。その日以来、空母ロナルド・レーガンの名をマスコミが口にすることは無くなりました・・・・・多分、私の記憶では・・・・・。

9ページには「3月14-15日の大気放射能拡散解析結果」が示されています。
4号機の水素爆発等で飛んでいった放射性プルームは、常磐道を上ってきて、首都高で反転し、東北道を下っていって、郡山と福島で雨にあたりました。

10ページには「3月15日の大気放射能拡散解析結果」が示されています。
2号機のサプレッションチャンバー室内での爆発により飛んでいった放射性プルームは、南東の風により北西に飛んでいって、浪江町赤宇木地区(ダッシュ村)や飯舘村に雪と共にしんしんと降り積もりました。
群馬大学の早川教授が作成した
「福島第一原発から漏れた放射能ルートとタイミング」
http://gunma.zamurai.jp/pub/2011/route930.jpg
の飯舘ルートは、飯舘村を下ってきて、福島市で反転し、東北道を上っていったことになっていますが、この点が違います。

13ページに「3月20-24日の大気放射能拡散解析結果」が、14ページには「関東地方(千葉市)の降雨による放射線量の変化と放射性核種組成」が示されています。
茂木氏は、3/20-24に起こった事象を「3号機 トラブル?」と記しています。
私と一部の知り合いは、3/21に起こった事象は「スーパーレスキューによる放水作業が命中した」と思っています。

放射性プルームは、ガス状ですから雨や雪が降らない限り、満遍なく汚染させます。
従って、家の中も、外も同じ様に汚染し、同じような線量率になります。
水戸市等が、この例です。
しかし、雨や雪が降ると、放射性プルームが家の中に入る前に、落としてしまいます。
従って、家の中の線量は低く、家の外の線量は高くなります。
福島市等が、この例です。

米国大気海洋研究所の解析ソフト【NOAA HYSPLIT MODEL】
http://ready.arl.noaa.gov/HYSPLIT.php
には、Windows版(PC Windows-based HYSPLIT)もあります。
Windows版の無い「SPEEDI」より、はるかに有用です。

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