弁理士の日々

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上杉隆「民主党政権は日本をどう変えるのか」

2009-08-26 00:23:17 | 歴史・社会
上杉隆氏の著書については、今まで「世襲議員のからくり」「ジャーナリズム崩壊」の2冊を読み、ジャーナリストとして信頼できる人だと思っています。
衆院議員総選挙の直前になりましたが、上杉氏著作で以下のような本が出ていることを一昨日知り、あわてて購入して読んでみました。
民主党政権は日本をどう変えるのか (家族で読める family book series 004) (家族で読めるfamily book series―たちまちわかる最新時事解説)
上杉 隆
飛鳥新社

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薄い本で大きな文字なので、あっという間に読み切ることができます。

この本を読んでみると、ジャーナリスト上杉隆氏が民主党の幹部たちに種々の取材を重ねてきたことがわかります。その取材を通して上杉氏が見聞したことを基に、現在の民主党とはどんな政党なのか、という点について解説した本です。

読後の第一印象は、“上杉氏は民主党シンパだな”という点です。上杉氏の他の著作を読まずにいきなりこの本を読んだら、“これは民主党の宣伝本か”と思ってしまうでしょう。

“いやいや、信頼する上杉氏が書いたのだから、客観的に描写しているに違いない”との観点で理解すると、現在の民主党が見えてくるという仕掛けです。

《小沢一郎氏について》
「小沢氏の政治手法を見るときのキーワードは、ズバリ『自民党型政治の破壊』です。世間では、小沢氏の『権力への執念』の強さを挙げますが、実際はそうではないでしょう。小沢氏が究極的に目指すものは、『総理ポスト』ではなく、旧来の政治システムの破壊なのです。」
2年前の民主・小沢代表と福田首相との「大連立騒動」を理解する上で、上杉氏はそのように解説しています。「大連立騒動」の謎は、小沢氏の政治目標である「自民党型政治の破壊」という観点から見るといとも簡単に解けるといいます。

大連立騒動のとき、小沢氏は民主党内から「小沢は何も変わっていない、独断専行だ」と批判されました。しかし、長年「小沢一郎」をウォッチしてきた上杉氏にいわせれば、小沢氏は十分に変わっていたとのことです。
以前の小沢氏であれば、大連立構想がつぶれた後、プッツンして民主党を飛び出たはずですが、そうはせず、代表辞任を取りやめます。まだ「自民党をぶっ壊す」ということに未練を持っていたためと上杉氏は解釈します。

《民主党ってどんな党?》
96年、鳩山兄弟を中心とした民主党結党のいきさつから解説しています。
当初の民主党の事務方は、ほとんどが旧社会党の書記局出身の職員ばかりだったそうです。そのため当時の民主党は、労組系職員の意向を汲んだ意見がどんどん採用されたとのことです。

98年になると、やや保守的な政治家たちが民主党に大量に合流してきます(第二期民主党)。

それからの民主党の特徴が、以下のような内容で語られます。
・「小沢肉食系」vs「民主草食系」
・どんな主張の人たちの政党か?
・権力を分散するペンタゴン体制
・旧社会党と旧自民党の不思議な合意

従来、民主党というのは、右派から左派までの寄り合い所帯で、結局まとまりきれないのではないか、と危惧されてきました。この点について上杉氏は、小沢氏が参画して以降の民主党は変わった、と評価しています。
政権党として十分な結束力が生まれているのかどうか、その点が注目されます。

《保守系から左派まである党内グループ》
民主党内の各グループ(自民党の派閥に相当)について解説しています。

《民主党の政治力》
民主党での小沢氏について解説しています。「剛腕」「権力志向」など、恐い小沢イメージに関しては現実を超えて作られているとしています。
小沢氏の真の政治目的は、官僚が主導する政治システムの打破にあります。
今年5月に突然、民主党代表を辞任したのも、こだわったのは自らのポストではなく、あくまで民主党の挙党一致と政権交代の実現でした。

民主党が政権党となった暁にやろうとしている大目標は、現在の官僚主導の政治体制を打破しようとすることであり、方向性は間違っていません。
ただし、霞が関は全力を挙げて改革を妨害しようとするでしょう。それに対し、民主党は改革をやり遂げる力があるのかないのか。その点については、上杉氏も結論は出していません。

いずれにしろ、この本を読んだおかげで、民主党という政党をいろんな視点で見ることが可能になりました。
衆院議員選挙の結果として民主党政権が誕生したら、この本を参考にしながら民主党を眺めていくことにしましょう。

“自民党はなぜ現在のような体たらくになったのか、自民党の現在はどうなっているのか”という点を解説した本も探さねばなりません。
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