弁理士の日々

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高橋洋一氏と小泉構造改革(2)

2007-11-29 22:04:41 | 歴史・社会
前回に続いて、高橋洋一氏と小泉構造改革の推移を、月刊誌「諸君!」12月号から拾います。

郵政民営化と並行して行われたのが「政府の資産負債改革」です。ターゲットにしたのは各省庁が持っている特別会計です。特別会計はじつは資産超過のものが多く、各省庁はそれをポケットにしまって勝手に使っています。道路公団のときと同じ手法で計算したら、全体でなんと46兆円の資産超過と出た。それで竹中さんは「政府の資産・負債を全部洗い直しましょう」となりました。
しかし、特別会計に手を突っ込むとなると、官庁全体を敵に回すことになる。とりわけ怒ったのが高橋氏の古巣の財務省です。財務省は財政融資金特別会計と外国為替資金特別会計の二つだけで40兆円近く余剰金を抱えていました。そして財政融資資金特別会計の方は20数兆円のうち半分の12兆円を一般会計に拠出させました。これは財務省にとって屈辱で怒り心頭でした。

そして2005年9月の郵政選挙で小泉与党が大勝します。

財投制度の中で、金を貸す方の郵貯がその枠組みから外れれば、借りる方の政策金融機関がそのままでいられるはずがない。しかし政策金融に手を出すと、財務省が黙っていません。
ところが選挙は自民党の大勝利。竹中さんから「熱の冷めないうちに政策金融をやろう」と言われ、わずか二ヶ月で案を仕上げます。
どの国にも政策金融機関はありますが、ひとつくらいです。だから「ほとんど民営化して最後に一つでも残ればいい」という方針を出したところ、財務省と経産省の逆鱗に触れます。しかし小泉総理と竹中さんの力で押し切ったので、財務省も経産省も最後は手も足も出なかった。ある雑誌に某財務省高官のコメントとして「高橋は3回殺しても殺し足りない」という談話が載ったそうです。

郵政選挙に勝った後の小泉政権1年間は、政権がスーパーパワーになって何でも改革できるというムードでした。
その時、郵政法案と同時並行的にやったのが「小さな政府法案」といわれるもので、上の政策金融と政府資産負債に公務員人件費を加えて、それぞれ半減させるという法案でした。これがぜんぶ通ってしまいます。

安倍政権になって、高橋さんは安倍さんから声をかけられ、昨年の9月から内閣参事官として官邸で仕事をすることになります。竹中さんが政権から去って高橋氏が経済金融分野に携わることは少なくなり、やってくれと言われたのが公務員制度改革です。

今の公務員制度は完全な年功序列で能力はまったく関係有りません。しかし上の方にいくとポストの数が限られているから定年まで勤めさせてもらえず、その代わり省庁が天下りを斡旋してあげるという慣行でした。
高橋氏の改革案の大事なポイントは能力主義の導入と斡旋的な天下りの禁止です。
能力主義になれば、働きに応じて給与を変えることができ、能力がない人は給料を抑えられます。その代わり定年まで勤めていいよと言うことです。その代わり省庁は天下りの面倒を見ない。

野党は「人材バンク廃止」を主張したわけですが、じつは能力主義に反対で年功序列を望んでいます。政府内の改革反対派も同意見で、かれらの望むとおりになると、辞める公務員が少なくなって高給取りの公務員がどんどん増えてしまうでしょう。野党が「人材バンク廃止」にどこまでもこだわるようなら、能力主義の導入と引き替えに「人材バンク廃止」を呑むというの一つの選択肢でしょう。

天下り禁止という公務員にとって大変なことに踏み込んだわけですが、この時期になると、高橋氏と接触しているだけで身が危険だったからか、誰も接近してくる人はいなくなりました。
「天下りの斡旋を禁止しよう」なんて、公務員は絶対にいわないでしょう。というのは、斡旋をしているのは官房の人事関係の超エリートだから、人事に睨まれることをいうはずがない。

安倍政権から福田政権に代わりました。
福田政権だからというのではなく、衆参ねじれ国会となった結果として、小泉政権のような官邸主導の改革は難しいでしょう。国会での与党の力が強いからこそ、昔の官僚主導も、小泉時代の官邸主導も成り立ちました。これからしばらくは、国会プロセスが最重要です。これからの改革は本当に大変でしょう。みんなが納得する大義名分を何に求めるかですね。
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ということで、高橋氏に対するインタビューが終了します。

小泉構造改革については、最近は「格差の拡大」などマイナス面が強調されていますが、個々に実現した項目について評価をしていくべきでしょうね。

このインタビューで語られている高橋氏本人に関する事項については、また回を改めます
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