弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

方法発明と間接侵害-大合議判決(2)

2006-04-26 12:45:26 | 知的財産権
パテント誌4月号を見ると、興味ある議論がいくつも載っています。最近このブログの知財ネタが枯渇していたので、これはちょうど良いです。
その中に、一太郎知財高裁大合議判決について、特に方法クレームとプログラムの間接侵害に焦点を当てた論文(上羽英敏著)が載っています。

大合議判決では、松下特許の方法クレームと一太郎との関係について、「一太郎インストールパソコンを使用する行為が直接侵害」、「一太郎インストールパソコンを販売する行為が間接侵害(特許法101条4号)」とはしましたが、「一太郎ソフトを販売する行為は同号の間接侵害に該当せず」と判断しました。

この点について、私の2月11日の記事では、「101条4号の素直な解釈からすれば、一太郎ソフトを販売する行為も間接侵害に該当するのではないか」という疑問を呈しました。

パテント誌の上羽論文でも、同様に、一太郎ソフトを販売する行為は、松下特許の方法クレームの間接侵害に該当するとすべきではないか、というように判決を批評しています。
また、上羽論文によると、一太郎大合議判決の評釈として以下の5点を挙げ、いずれも大合議判決の方法クレームと間接侵害の結論に対しては批判がされているとしています。
(1) 上山浩 SLN103号(2005)
(2) 生田哲郎 発明Vol.102, No.12(2005)
(3) 帖佐隆 発明Vol.102, No.12(2005)
(4) 飯田秀郷 L&T 30号(2006)
(5) 井上雅夫
私は(1) ~(4) にはアクセスできませんが、(5) の該当部分を読みました。

以上から推定すると、一太郎大合議判決の方法発明と間接侵害の結論については、学説評論では概ね批判されているようです。私も同様に反対しています。

しかし、上羽論文でも指摘されているように、知財高裁の大合議判決であるという重さがありますから、特にコンピュータソフトのように間接侵害で戦わざるを得ないような技術分野では、方法クレームのみとするのではなく、必ず装置クレームを作成しておくべきです。出願済みの案件であれば、できるかぎり補正で装置クレームを追加しておくべきということになります。
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