ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

庄助

2018-02-09 16:36:02 | 食事
 庄助とは東京都墨田区曳舟にあった居酒屋である。今はもうないようだ。最近の暇な週末の昼下がりにはもっぱら愚かなグーグル地図を使って、昔暮らした場所を訪ね歩いている。そうすると当時贔屓にしていた酒場やスナック、コンビニエンスストアなどが思い出され、「あったあった」などと呟いて時間を潰せるものだ。しかし10年も時が経つと街は変わり、あるはずのものが消えていることもしばしばあるだろう。庄助もその一つだ。愚かなグーグルで庄助の消息を調べるも、門前仲町などにあるメジャーな庄助ばかりが出てきて曳舟の庄助の情報は出ない。庄助の閉店を惜しむブログなども見当たらない。庄助もまた、西部邁氏や有賀さつき氏のようにひっそりと姿を消したようだ。いつか誰かが同じように庄助を調べたときの為に、ここに記録を残しておきたい。


このお店との筆者の思い出は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①場所
東京スカイツリーが6割ほど立ち上がっていた頃の京成曳舟駅駅北側の向島郵便局がある通りは、小さな小さな下町の、商店街とも呼べないほどの商店街になっていて、はんこのお店や小さなスーパー、スナック・居酒屋がポツポツと並んでいて、庄助もそこにあった。古い住宅の1階を居酒屋風に作った小汚いその店構えに、孤独な20代独身式サラリーマンはごく自然に吸い込まれたのだろう。初めて入ったときの記憶がない。


②主人
その頃の庄助の主人は60代くらいの初老の痩せた男性で、面長で優し気な表情、白くて長い髪を後ろで結わえた風貌は似非マイク真木のようであった。土曜日も働かされていた筆者は、予定の無い悲しい週末の夜に立ち寄るのが常であった。たいてい早い時間に現れるため、カウンター10席とこあがり2卓の小さな店内にはまだ誰も居ないことが多く、他の客がやってくるまで主人と他愛もない会話をしながら飲んでいたし、土曜の夜は客がほとんど来ない日もよくあったので世の中について話し込むこともままあった。だが何を話していたのかは忘れてしまって、主人がかつて営業マンで日本全国を列車移動して働いていたこと、福島県の山奥出身であること、体を壊して煙草もお酒も止めていること、身寄りは福島の妹のみであることなどを憶えている。注文する肴を迷っていると、「○○が旨いって言われるんだよね・・」と恥ずかし気に勧めてくる顔もよく憶えている。


③メニュー
庄助は焼き鳥屋を標榜していて、“誰も来ないけど、肉はこだわって選んでいる”と宣う主人が選別してきた鶏肉は、備長炭(と主人は言っていた)を使って焼きあげられ、柔らかくとても美味しかった。焼き鳥以外にもメニューは沢山あって、どれも20代独身式サラリーマンには旨いものだった。その日限定のメニューがカウンターの隅のホワイトボードに記載されていて、よくそれから選んでいたのを憶えている。また、福島から取り寄せているという蕎麦も絶品で、〆によく注文した。極め付けはサンショウウオだ。これも福島の田舎から取り寄せているとのことで、小さなサンショウオがそのままのカタチで串に刺されて焼かれて出てくる。これは一度しか食べなかった。




④庄助で出会った人たち
庄助では、狭い店内で同席する人と交流することがあった。草野球帰りの江戸っ子30代の2人組既婚サラリーマンとは、そのまま錦糸町のマリンに出掛けて盛り上がった。地質調査会社に勤務しながら大学院へ通う人や、ジャズか何かのバンドを趣味でやっている人などとも会話が盛り上がった。でもそのうちの誰の消息も今は知らない。皆、主人の人柄に惹かれて来店しているような様子があった。会話の途中で2階の天井裏をネズミが走り、ゴトゴトと音を立てた。



 諸氏らはどこで30代独身日本式サラリーマンとしての素養を身につけられたであろうか。筆者はこの庄助であったような気がする。当時から内臓を悪くして医者にかかっていた主人のことだから、おそらく店を続けることができなくなったのであろう。福島の妹のところに寄せているのか、もうあの世に旅立っているか、はたまた単に移転しただけで、どこかで左うちわでヨロシクやっているのか・・週末の昼下がりに感傷的になってしまった。愚かなグーグルの所為である。


3月11日追記
どうやら庄助はまだやっているようだ。食べログを覗くと“お店の運営状況が確認できていない”との表示があり、早合点したのであった。週末の昼下がりに無駄に感傷的になってしまった。愚かな食べログの所為である。

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たいぞう)
2018-03-10 12:10:11
庄助まだやってますよ(^^)
ぜひ行ってあげて下さい!
Unknown (筆者)
2018-03-11 04:38:34



Unknown (まるひろ)
2018-03-11 21:45:39
普通に店主生きてました。
投稿者はお店行ってあげて、どうぞ

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