ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

鍛高譚

2023-11-30 13:56:31 | 食材
鍛高譚とはしそ焼酎である。日本酒は“SAKE(発音はサキ)”という呼称で、特に2020年代から北米に暮らす人々にいっそう普及し始めている(ように見える)、という内容は本ブログで再三述べてきた。焼酎もまた少しずつ目にするようになったが、2023年現在ではカリフォルニア州でも販売はアジア系スーパーに限られおり、白人やヒスパニックの人々にはあまり知られていない、もしくは受け入れられていないように見える。筆者はこのしそ焼酎をカリフォルニアで見つけた。実は学生時分以来飲んでいなかったので、懐かしさのあまり手に取った。2023年の11月、日本では池田大作さんがついにこの世を去ったという報道があり、アンタッチャブルなざわつきがある。


この焼酎の思い出は以下の通りだ、参考になればよいのだが。



①北米で鍛高譚を発見
筆者が鍛高譚を見つけたのはサンノゼ市の中華系スーパー、マリーナ・スーパーマーケットである。 “あ、鍛高譚だ”筆者は懐かしい気持ちになったと共に、駐在員系日本人が訪れることの少ないこの中華系スーパーで、鍛高譚が売られていることに驚きを感じたのだ(筆者の注意力不足かも知れないが、これまで日本スーパーでは見かけたことがなかった)。720ml瓶が30ドル弱と、かなり強気な価格設定である。安物買いを信条としている似非30代独身日本式サラリーマンだが、約20年ぶり(?!)の劇的な再会に感動し、ついつい手に取った。



②鍛高譚の思い出
それは筆者が大学生になったばかりの頃である。高校時代の友人C君が筆者の下宿(コスモビル)を訪ねてきたので、当時近くに住んでいたカミヤと3人で部屋で随分酔っぱらったのだ。そしてさらに酒を追加購入しようと近くのサークルKにくりだしたときに、C君が“あ、タンタカタンがある!”と騒ぎ出し、“タンタカタンは梅干し割が旨いのだ”と講釈を垂れ、タンタカタン一瓶と梅干一パックを購入した。C君はコップの中に梅干しをたくさん放り込み、割り箸でグチュグチュと梅干を下品に潰し、それにお湯とタンタカタンを注いで飲んでいた。その夜の記憶はそれ以外にない。翌日流しにグチュグチュになった梅干しが大量に残っていた不快な記憶がある。




③鍛高譚
調べてみると、実はこの酒は北海道の大雪山麓の村で、村おこしの一環で平成になってから開発された焼酎なのだそうだ。どうりでラベルのデザインには九州の男らしい焼酎瓶とは異なる、どことなく80年代シティ・ポップ(角松敏生風)な雰囲気がある。このラベルに描かれた鰈のような魚と大雪山と紫蘇は、その村の伝説がモチーフになっているそうだ。そして、この“タンタカ”とはアイヌ語で鰈のことなのだそうだ。そんな鍛高譚が海を越えて北米の中華系スーパーで売られるほどになっているのは、なんともロマンのある話である。




実はあのとき初めて飲んだ鍛高譚を、筆者は“旨い”と思えなかった。紫蘇の香りの良さを理解しなかったのだ。だが改めてサンノゼの下宿で飲んでみるとこれがたいへんに旨い。ほんのりとした紫蘇の香りが大変に心地よく、食事にとてもよく合う。お湯で割って暖かく、ロックでも飲みやすい。そのため割高なこの焼酎をちょいちょい購入していた。それは去年のことである。つい最近、日本で就労ビザ更新を終え、帰路の羽田空港内のコンビニで『鍛高譚ソーダ割』の缶を見つけたのでまたびっくりし、すぐに購入した。サンフランシスコ行の飛行機が離陸し、シートベルトのサインが消えるとほぼ同時にカバンから鍛高譚ソーダ割を取り出して、チーズ鱈をつまみに飲んだ。C君ありがとう。

赤坂見附にて

2023-11-29 12:51:54 | 生活
赤坂見附にてとは、筆者が米国就労ビザ更新のために滞在した赤坂見附近辺での思い出の記録である。2023年現在、米国の就労ビザの有効期限は5年であり、更新する場合は在日米国大使館で必要書類の提出と簡単な面接を行う必要がある。そう、会社の金で日本へ帰ることができるのだ。それに“アカサカミツケ”という、響きだけで恰好よく感じる魅惑のスポットに宿泊するので、田舎者似非30代独身日本式サラリーマンは、ワクワクする。とはいえ結論から言えば、赤坂見附で足つぼマッサージをしてから酒を飲んだだけである。田舎のネズミは都会の楽しみ方を知らないのだ。でもタイトルは格好つけて志賀直哉先生よろしく“赤坂見附にて”としている。


この思い出は以下の通りだ。参考になるだろうか。



①地下鉄赤坂見附駅周辺をウロウロ
夕暮れ時に地下鉄赤坂見附駅周辺をウロウロしていると、割と似非30代独身サラリーマンフレンドリーな大衆酒場が多くて安心する。そして気が付いたのが、足つぼマッサージ店の多さだ。よく歩く東京人の足は疲れているのだ。そういえば長いこと足つぼのマッサージをしていない。米国にも同様のマッサージはあるにはあるが、行ったことがない。筆者にとってマッサージ店はあくまで“通りすがり”に入るところなので、車社会の米国ではなかなか入るきっかけがないし、そのうえ米国のマッサージ店は健全店か否かや、対象性別、サービス内容が不明瞭で入りにくいのだ。



②台湾式足裏専門店
そこで“足”とデカデカと白抜きで書かれた赤い看板が目立つ、“台湾式足裏専門店”と言う名の店へ入ってみることにした。ただし英語表記ではFOOT&BODYとの記載があり、サービス内容を見れば整体マッサージもあるので、決して足裏専門という訳ではないようだ。逆誇大広告である。ガラス戸を開けると中年の大陸系女店員が腰を掛けていて、メニューを尋ねてくる。筆者は足裏60分を注文する、初めての客には割引があった。奥行きのある部屋の両側に斜め向きにカーテンで仕切られたマッサージコーナーがいくつもあり、何だか空港のゲート口を思わせる。



③台湾式足裏専門店
マッサージ師は若い大陸男性が多いようで、全員しあつ野郎さんのようないかにもな白い服を着ている。一番手前のゲートに案内され、ズボンだけ履き替えてマッサージ開始だ。これがおそらく棒を使った足つぼマッサージで、とにかくとても痛くて、足裏が内出血しているのではないかと思うほどだ。かつてバラエティ番組であった罰ゲームで見たようなアレである。同じ痛いところをしつこくグイグイと押してくるし、『・・・痛いので少し弱めに』と言っても、ほんの少ししか弱くしてくれないのだ。だが周りの客は慣れた人が多いのか、店内には筆者の『うっ・・うハぁ』などという喘ぎ声以外には何も聞こえない。思えばBGMなどもなく、マッサージ師たちもやけにひそひそ声で話す静かな雰囲気であったから猶更である。ふくらはぎのマッサージ、熱タオルによる温めを終え、すっかり気持ち良くなった筆者は、若いマッサージ師に二千円のチップを渡しておいた。




マッサージを終え、体全体がポカポカと元気が出てきたので二軒隣の地下にある“梓川”という趣味のよさそうな居酒屋へ入ってみた。90年代懐メロが流れる店内の狭い小上がりの雰囲気はよいし、日本酒の取り揃えはたいへん豊富(鍋島と貴をいただいた)だし、おつまみも手ごろな価格の良いものばかりでたいへん満足だったが、店に入るなりに『お酒は飲みますかー!!!?』と素っ頓狂な質問をされ、店内の壁やメニューにもしつこく『お酒を飲まない人は来ないで!』という“下戸ヘイト”なメッセージが目立つお店だった。外国人観光客が増えていることも影響しているのだろうか。地代の高い赤坂エリアでこだわりの店を続けることの大変さを垣間見ることができた。田舎の似非30代独身日本式ネズミは、〆に安心の天下一品ラーメン(大盛)を食べました。

甲子うまから磨き八割 

2023-11-23 23:59:48 | 食材
甲子うまから磨き八割とは日本酒の銘柄である。きのえねと読む。非常に旨い酒なので、是非とも読者諸氏に紹介したい。純米酒である。最近の筆者は、大吟醸のフルーティー日本酒よりもソリッドで辛口な純米・特別純米酒が好みなのだ。白鶴“丸”のワンカップなども実に旨い。2023年秋の日本では、やや消化不良なまま沈静化しつつあるジャニー騒動を引き継いで、羽生結弦選手のスピード離婚が多くの国民の生きる糧となっている。



この酒の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



① モーリーストーン
甲子うまから磨き八割を見つけたのは、トマトのロゴでお馴染みの“モーリーストーン”というスーパーマーケットである。これはベイエリアの中でもパロ・アルトやバーリンゲームといった富裕層が住むエリアに店舗を構えるスーパーで、やはり何でも高めだ。そのため筆者は滅多に寄り付かない。総菜コーナーが充実している様子は、スーパーマーケットというよりは“デリ”のイメージが筆者には強い。今回モーリーストーンのサン・ブルーノ店を訪ねたのは、たまたま金物屋のACEがこの店に併設されていたからである。因みにモーリーストーンさんのウェブサイトによれば、1986年年に始まったという比較的新しめのスーパーのようだ。



② モーリーストーンの日本酒コーナー
デス・メタル好きのACEの店員と話が弾んだ後、『せっかくモーリー・ストーンにも来たのだから、酒類コーナーでも見物するか』と冷やかし気分で歩いてみると、そこにはなかなかどうして充実したSAKEコーナーがあり、筆者を驚かせた。通常のアジア系スーパーではあまり見ない品が置いてある。高い吟醸酒よりも純米酒が目立ち、北米富裕層は燗酒を好むのかと予想される。その中で筆者がこの読めない品名の酒、“甲子うまから磨き八割”を手に取ったのは、それが千葉県酒々井の酒蔵のものだったからだ。筆者は京成・新京成、北総や東葉高速といった千葉県の民鉄とはかつて浅からぬ関係にあり、酒々井の地名に懐かしさを覚えたのだ。



③ 甲子うまから磨き八割~外観・価格~
正面に貼られたラベル紙は切り口に繊維が残る和紙風のラベルで、その色はまるで参政党のような濃い橙色だ。そこに大きく不思議な書体で“甲子”と書かれている。酒瓶の首元には同じく橙色の小さいラベルがあって、そこにひらがなで“きのえね うまから”と書かれているから、筆者でも商品名がわかる。値段は16ドル、円安化といえども北米で販売される日本酒の相場でいえばかなり安い方で、オレゴン州産の日本酒よりも安い。製造元の飯沼本家さんには、もう少し高めの価格でも買い手がいることを伝えたい。




このお酒が、“うまから”と銘打っているだけあって、常温で飲んでもずっしりとした辛さが胃袋まで下りてくる温かみのある酒で、とても嬉しい。そして甘さもほどよい。今回は同じくモーリーストーンさんで購入した野菜ピクルス盛合せ(これも旨い)、チーズ、羊肉のサラミをつまみながらチビチビと飲んだが、きっとどんな食べ物ともよく合うのでついつい飲み過ぎてしまうだろう。嬉しくなって酒蔵さんのウェブサイトを訪ねたらば、似非30代独身日本式サラリーマンには近寄りにくいほどのお洒落で野心的な内容になっていてやや腰が引けた。バブル期の記憶にすがり続けた団塊世代がすっかり引退し、若い人の力で日本の良いものがもっと良くなっていくに違いない。そんな勢いを感じた。またモーリーストーンさんへ行こう、高いけど。

エジプト・ベスト・ライス

2023-11-20 09:13:22 | 食材
エジプト・ベスト・ライスとは、エジプトで生産されている米ブランドのひとつである。日本ではパン食文化の浸透以来、長く“コメ余り”の状態が続いており、政府はいわゆる減反政策を行ってきた。そのうえ昨今では“脱炭水化物ダイエット”と称する米食の否定がブームとなっていて、米の替わりにブロッコリーを食べている健康志向の人もあるようだ。だが世界を見れば日本米には高い需要があるようで、北米では北カリフォルニア産の日本原種の米は総じて一等高く、2023年の激しいインフレ下において吝嗇な30代独身日本式サラリーマンの頭を悩ませている。だからという訳ではないが今回はエジプト・ベスト・ライスを紹介したい。


この米の特長は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。


①エジプト・ベスト・ライスとの出会い
筆者がエジプト・ベスト・ライスと出会ったのは、2022年の秋から冬にかけてコネチカット州で長期出張をしていた頃である。カリフォルニアの長屋から帰任者の払い下げ品の炊飯器を持ち込んで、ホテル(主にファーミントン市のエクステンド・ステイ・アメリカ)で自炊生活をしていた。そのホテルから近い場所に半分ヒスパニック半分中華の総菜屋があり、筆者はそこをよく利用していた。その店の隣には小さな中東系のグローサリー・ストアがあった。総菜の出来上がりを待つ間に冷やかしでそのストアをうろついているときに、エジプト・ベスト・ライスを見つけたのだ。


②エジプト・ベスト・ライスの購入
米国の中東系コミュニティは大きくないので、概して中東系スーパーは小さい。見栄を張って“冷やかし”と言ったものの、気弱な似非30代独身サラリーマンには“狭い店内に客一人”という状態では、何も買わずに店を出る黒田勇気がない。なので店内を物色していると、小ぶりな黄色いプラスチック袋に入る米を見つけた。装丁はピラミッドをバックに駱駝に乗る男の黒いシルエットが描かれた格好良いデザインで、さらに商品名が『エジプトで最高の米』である。筆者の知識ではエジプトには米よりも麦のイメージがあったので俄然興味が湧いた。透けて見える米粒を見れば、インドなどで見られる細長い粒でなく、姿かたちが日本米に近いのも筆者には不思議に思えたので、購入してみることにした。


③エジプト・ベスト・ライスの炊飯
ホテルに戻り、エジプト・ベスト・ライスの袋を開けて、米粒を手で掬い取ってみると、やはり粒状は日本米に近い。鼻に近づけてみれば、ほんのわずかに異国の香りがするものの、日本米と同じ匂いといってよい。さっそく払い下げ品の炊飯器に放り込み、よく研いでから炊いてみた。炊きあがったエジプト・ベスト・ライスの見た目は、高級米に見られるような粒の輝きは全くない。しゃもじでよそった感じでは、日本米のような粘性は少なく、一粒一粒がソリッドな形を残していてる。それでも箸を使えば塊でつまむことができるほどの粘りがあって、まるで水を少な目に炊いた日本米のようだ。口に放り込めば一粒一粒の存在感がしっかりとした舌触りに、なかなかの弾力、それと米の香りが合いまって意外に美味で驚いた。モチモチ米よりパサパサ米を好む人にとってはよい米に違いない。かくしてエジプト・ベスト・ライスは筆者のコネチカットでの食生活を支えることとなったのだ。


さて、カリフォルニアに帰って来てから、何の気なしに久しぶりにヒルズ・デイルにあるアラジン・スーパーマーケットに足を運んだ時に、またエジプト・ベスト・ライスに出くわしたので、買ってみることにした。中東系の帽子を被った店員に『これはエジプトの米だぞ!?これが好きなのか』と訝しがられたので、『うーん、日本米に似てるんだよ』と答えて長屋に戻り、気になってエジプト米について調べてみると、在エジプト日本大使館のページに以下のような記載があった。なんとエジプト米の原産は日本米だったのだ。サンフランシスコの街中にはコシャリが食べられるエジプト料理屋もありようだ。また面白そうなものが見つかった。



~エジプトのお米は日本米!? 在エジプト日本国大使館 ~
国民食と言われるコシャリをはじめとして,エジプトでは古くから 一般的にお米が食されています。そして,そのお米のほとんどが日本由来の短粒種ヤバニ米(ジャポニカ米)を元に品種改良が行われ,エジプ トに根付いたものです。 今から約 100 年前の 1917 年,エジプト政府は国内の人口増大を見越 して,米を生産奨励品目に指定し,生産拡大に向けて品種改良に着手し ました。その際,スペイン,イタリア,アメリカ,中国,インド等世界 各国から約 250 種の米を集め,比較検討した結果,最もエジプトの気 候に適し,生産性が高いとして選ばれたのが日本由来のヤバニ米です。 その後も品種改良が重ねられ,さらに 1980 年代から 1990 年代にか けて行われた JICA による稲作の機械化や精米処理に対する支援等もあ り,エジプトの米生産は大きく増大し,今では日本由来のお米がエジジプ ト人の間で広く親しまれています。