ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

天理市

2019-02-26 17:08:34 | 生活
天理市とは奈良県中央部にある地方自治体の名称だ。引き続き30代独身日本式駐在サラリーマンの暇な一時帰国休暇中の探訪記になる。朝から愚かなグーグルマップで、今日は何をして暇を潰そうかと計画を練っていたところ、この日本最大の宗教都市を目にし、“一度様子を見てみるのも面白い”と思ったのだった。それに天理ラーメンにも興味があった。筆者は学生時分を関西で過ごしており、丁度その頃によく天理ラーメンが話題となっていた。天理までドライブしてラーメンを食べるというデートをしたという男女を見聞きし、車などと縁がない苦学生の筆者は何だか遠い世界の話を聞いているような気分であった記憶がある。


この地方自治体の体験記は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①アクセス
午前中は平城京跡を練り歩いていたので、天理市探索の出発点はJR奈良駅になった。JR桜井線に乗り込むと天理駅まで、田畑風景と共に京終・帯解・櫟本という初見では到底読めない名前の駅が続き、飛鳥平城時代から残る歴史の妙を感じさせる。そして天理駅に到着する。車内の斜め向かいに剛力彩芽をより人造人間18号に近づけたようなツンとした美少女がおり、彼女もまた天理駅で降りたので一緒に天理総本部へ参拝かと思いきや、駅前で貧相な風体の男と待ち合わせイチャイチャし始めたのでやや興ざめしたが、気を取り直して探訪を開始したのだ。


②天理駅前コフフン
天理駅前はそれまでの京終・帯解・櫟本といった無人駅のようにも見える寂しい駅とは異なり賑わっている。気鋭の建築デザイナーによって設計されたのであろう古墳をモチーフにした現代的デザインのすり鉢状の遊具やテナント建屋が建てられており“コフフン”との愛称で多くの子連れ家族に利用されている。駅前をこのように思い切って公園にしてしまう手法もあるものかと感心しつつ、天理教総本部へつながる商店街、天理本通りへと入った。


③天理本通り
平日の天理本通りは人通りが多くはなかったものの、総本部まで五百メートルほどはあろうこの商店街に空きテナントは少なく活気のある商店街だ。やはり商店の客層の多くは天理教の信者さんらしく、地方から参拝に来た信者さんのお土産品、呉服屋には天理教関連の黒装束や足袋、書店も天理教関連の書籍がぎっしりと並んでいる。また、天理スタミナラーメン店もあったので、ここでチャーシュー麺大盛をいただいた。商店街の裏には“詰所”と呼ばれる巨大な温泉宿のような瓦葺き屋根の施設があったが、おそらく遠方からの参拝者さんの宿泊所でなないかと推察される。腹が膨れたところで総本部へと向かう。


④天理教総本部
総本部の建物は黒い純和風建築で、「うぉ」と思うほど巨大であった。しかしいわゆる新興宗教っぽい目新しさや派手さが全くなく、修学旅行の学童が訪れていれば「どこかの高名な寺かな」と思うほど違和感がないような歴史を感じさせる質素な風格がある。境内のすぐ外にはタコ焼き屋などの的屋風の露店も数件並び、ビールも売られている。黒装束の係員の方が沢山いらっしゃり、床を雑巾がけしたり絶えず訪れる参拝者に声掛け・靴ベラの手渡しを行っている。信者以外の入場を禁ずる表示はなく、身元の確認などもされないようだったので筆者も信者さんに混じって礼拝所へ入ってみることにした。


⑤礼拝
失礼にならぬよう信者さんの立ち居振る舞いを真似ながら広大な畳の広間の後ろの方で正座し、様子を眺める。照明は少なく中は暗めだ。正面に神様の像や神棚のようなものがあろうかと見てみると大きな鏡のようなものがポツンと置かれるばかりでほぼがらんどうだ。そしてその向こう側にこちらと同じような広間があって拝む人が見える。左右にも同様の広間があり拝む人がある。つまり四方から中央に向かって拝む形式になっているのだ。それぞれの方角にも鏡とは違う何かがポツンと置かれているようであった。信者さんはそれぞれに「悪しきを払い、助け給え、天理王のみこと」と何度も歌いながら両手のひらをひらひらと動かしながら拝む。四方八方から老若男女の声でこのメロディが礼拝所の中に響き渡り、不思議に心地く、不信心な筆者でさえも心が洗われるようであった。そして興味本位で長居するのもよくないと思い、四方をぐるりするのは諦めて神殿を後にした。



 どうやら天理の神様も神道の神様ということのようであったが、何せ天理の神様とは初対面であったし部外者であるため“すべての30代独身日本式サラリーマンに幸あれ、光あれ”と図々しく祈ることが躊躇われた。そこですぐ近くにある石上神宮へ立ち寄ることにした。天理教信者用の食堂らしき巨大な建物の脇を抜けて小さな丘を上ると神宮に着いたので、しっかりと諸氏らの幸せも願っておきました。こちらもなかなか味わい深いお宮様で、天理に立ち寄った際には是非足を運んでみてもらいたい。筆者は有意義な暇つぶしに満足し、部外者にも優しい天理教の皆さんに感謝しながら商店街で日本酒を買い求め、奈良健康ランドへと向かった。 

神童寺

2019-02-23 16:25:10 | 生活

神童寺は京都の南端、旧山城町にある寺のことだ。30代独身日本式駐在サラリーマンは、せっかくの一時帰国休暇中に旧友に会うために都心部に滞在するも、日中は暇ですることがない。そんなときには都会のマンガ喫茶等で無意味に時間をつぶすより、郊外へ出てみるのがよい。筆者の場合ひょんなことから京都府精華町付近で電動式自転車を借りることができたので、これを使って古刹を訪ねようと決意したのだった。そして愚かなグーグルで付近をウロウロしているときにこの神童寺というなかなか興味深い名前の寺を見つけ、早速サドルにまたがったのだ。


この寺の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①アクセス
精華町からは開橋を通って木津川を渡る。対岸の交差点に神童寺の方向を示す看板があり、そこで大通りから逸れて小川の堤防上の道を上っていく。その堤防上の道から静かな住宅地を眺めながらしばらく上っていくとJR奈良線の踏切が現れ、そこにも寺の方向を示す看板がある。踏切を越えれば山道になり、住居はなくなって時折鉄筋加工所や土砂置場のような山奥によくある施設が見られ、さらに進むと再び集落を目にする、この谷あいの集落は狭い用地を茶畑や水田として上手に活用しており、特に斜面で栽培された茶の畝がうねうねしており可愛らしい。しかしこの上り坂は電動自転車をもってしてもハードであり、押して歩くことになる。寺に近づくに連れて谷が狭くなり、まばらだった住居が山道沿いに密集してくる。そして“もう息が切れそう”と思ったころに山門が現れる。



②神童寺~境内~
山門に電動式自転車を止めて石段を上るとごく普通の質素なお寺がある。筆者の他に誰も居ない。だがこの静けさと質素さが心地よい。境内の右手に住職らの住居らしき建物があり、その玄関に“本堂の拝観料500円”と貼り紙があったが、とりあえず境内をぶらりと歩くことにする。本堂の左側に裏の宝物殿へ登る道がある。とことこと登ってみると宝物殿は小さな尾根の頂上付近にあり、そこから見る山門下の狭い谷に密集する集落の景色は興味深いものだった。だが宝物殿は施錠されていたのですぐに引き返した。


③神童寺~本堂見学~
たいていの寺社仏閣にはその由緒を記す看板などが建てられているものだが、この神童寺にはそのようなものは見られず、建物も質素で特長という特長がなかったので、“このままではブログに書く内容が足りない”と思い、思い切ってインターホンを押した。一人で本堂を拝観することにしたのだ。「はーい」と男性の声がしたので、拝観希望の旨を伝えると今度は女性の声で「隣の受付でお支払い願います」と言われた。受付に現れた40~50代風の女性に拝観料を支払うと、彼女が本堂を開けるので表で待つようにと言われる。そして本堂の扉を開けてくれた彼女は筆者が仏像を拝観している間、ただただ無言でじっと待っている。筆者は長居しづらい雰囲気に気押され、本堂の拝観を“終わりました”と言って伝えると彼女は、今度は宝物殿を開けると言い、スタスタと境内の道を上っていく。その女性は見た目の年齢に合わずルーズなシルエットのコーデュロイパンツとバンズのスリッポンを妙に上手く着こなしていた。



④神童寺~宝物殿拝観~
コーデュロイパンツを穿きこなす中年女性は宝物殿を解錠し、筆者を入れてくれた。そして彼女は筆者が仏像を拝観している間、ただただ無言でじっと待っている。筆者は長居しづらい雰囲気に気押され、てきとうに“可愛らしい仏像が多いですね”と話しかけると、“はぁ、まぁ”と言われた。そして宝物殿の拝観を“終わりました”と言って伝えると筆者と並んで歩くのを避けるかのように境内の道を駆け下りていった。



 果たして仏像は筆者がこれまで見た仏像の中でも特別に可愛らしかった(特に白不動明王)ので、筆者は650円払って写真集を購入した。それには寺の由緒などもしっかりと記載されており、楽しく読むことができた。また、お寺の山門の近くに“うを亀”という気になる仕出し屋があり、そこの前で店主らしき中年男性に挨拶をされた。昼を済ませていなければ少し話をしてここで何か食べてみるのも面白そうだったが、あいにくかしわ網焼食堂なるところでお腹いっぱい鶏肉をビールと一緒に食べてしまったので挨拶を返すに留めた。帰り道は下り坂なので少年時代を思い出したかのように風を切ってビュンビュンと電動式自転車を走らせた。神童ではなかったし、十人が同時にしゃべることを聞き分けることはできなかった。そして今は立派な30代独身日本式サラリーマンだ。

理容かおる

2019-02-13 22:31:52 | 生活
 『理容かおる』とは、とある地方都市にある理容室である。地方都市の商店街の多くは郊外型大型商業施設の発達によってシャッター街と化しており、そこに住む市民にとって少なからず問題になっている。だが一時帰国休暇中にそんなシャッター街をふらふらと探検してみると、“理容室”だけは案外つぶれずに残っていることに気が付く。SMARTやメンズノンノなどの悪書の所為で、思春期の頃から理容室に対して“ださい、おっさん臭い”との偏見を植え付けられてきた30代独身日本式サラリーマンは長らく理容室に足を踏み入れていない。しかしシャッター街の路地に点在するレトロな外観の、昔から変わらない店名の理容室を見ているうちに“ひとつ入ってみよう”という気持ちになったのだ。


①ベイエリア30代独身日本式サラリーマン駐在員の散髪事情
アメリカの散髪事情はいろいろなブログで紹介されているであろうから詳細は割愛するが、その粗悪なサービス内容に辟易し、西海岸の都市では高い金を払って日本人が経営する美容院へ通うヒトも多くいる。田舎都市ハートフォード市ではそれを望むべくもなく、筆者の散髪はおおよそ15分で終わる千円カットに三千円払っている状態が続いている。散髪しかしないので、帰宅してすぐに自分でシャンプーをしなくてはいけない。


②ヤング理容
一件目に大通りに面した“ヤング理容”という何ともレトロなお店に入ってみた。この地方都市の酒場で、「実は今日、ヤング理容で切ったんです」と言えば盛り上がると思ったのだ。だが初老の男性店員は筆者を見るなり狼狽し、「な、何の用ですか」と尋ねてきた。「実は、髪を切って欲しいのですが」と思いを伝えるも、初老の店員は筆者と目も合わせずに、予約が入っているだのなんだのとモゴモゴとしゃべり、あきらかに筆者の髪を切ることに消極的な態度を示し始めたので、「出直します」と言って店を後にした。地方都市の理容室はほぼ馴染み客相手のみで経営しているようで、見知らぬ大男が突然入ってくると驚くようだ。



③理容かおる 入店
少し歩くとまた理容室が現れた。ヤング理容ほどの年季を感じなかったし、路地裏にひっそりと佇んでいるので、酒場での盛り上がりは期待できないと思ったが入ってみることにした。お店のヒトを驚かさぬように心持ち腰を低くして入店すると、やはり「何の用ですか」という表情で店員老夫婦と、ちょうど散髪を終えたような客の中年男性がこちらを見た。「あの、空いていますか」と尋ねると、中年男性客が大きな声で「“空いてますか”だってよ!」と老夫婦に言う。ついに筆者を客だと認識した男性店員がにこりとして席を準備し始める。

④理容かおる 説明
女性店員の方が何やら話しかけてくるものの一向に聞き取れずに困惑していると、中年客がそのコミュニケーションの手助けをしてくれた。女性店員は筆者の声は聴きとらず、中年客の言葉は理解する。男性店員は全くしゃべらない。どうやら夫婦共に聴覚に障害をお持ちのようだ。筆者が一見さんであることを見抜いた中年客は筆者の不安を和らげようと、このお店が40年以上続いており、腕は確かなので安心してよいなどと優しい口調で教えてくれたが、その男性客は昭和の床屋に貼られたポスターそのままのような髪型をしていた。



⑤理容かおる サービス
筆者はその伝統工芸とも呼ぶべきサービスに驚嘆し、店を出るときには思わず手を合わせ2人を拝んでしまった。ハサミで丁寧に「カチカチカチ」と小気味よい音を立てながら揃えられる側部後部は“これは散髪ではなくマッサージではないのか”と思うほどに気持ちよく、ときどきでテキパキと交換されるシーツやタオルがいちいち完璧で申し分ない。顔剃りのクリーム、生え際をカミソリで「グイ」と剃られるあの感じ、温タオル、耳毛・鼻毛カット、極楽のシャンプー、そして肩もみたたき・・・鏡に映る真剣な男性店員の表情。一見さんにも決して手抜きがない。これが“理容室”なのか。また、耳が不自由な店員さんなので無理にコミュニケーションする必要をお互いに感じなくて済むので、本当にリラックスできる。夢心地であった。



 機会があれば理容かおるには再度行きたいと思う。30代独身日本式サラリーマンは自分がまだ若いと思い込み勝ちで、美容院で恥ずかしげもなく雑誌を広げ、「こんな髪型にしてください」などと言ってみたりしている。理容かおるのドライヤーで自民党の議員さんのようなスタイルに仕上げてもらった筆者は、ショーウィンドウに映る自分に違和感を感じつつも、老夫婦に「あんたもそろそろこんな感じにせんといけんのよ」と言われているようで何か嬉しかった。

たばこと塩の博物館

2019-02-10 18:28:35 | 生活
 たばこと塩の博物館とは東京都墨田区にある博物館だ。30代独身日本式サラリーマン駐在員がまとまった一時帰国休暇をもらっても、何かと都心に用事があって、すぐには地元に帰れない。だが用といっても本社を訪ねて昔の上司にちょいと顔を出すだとか、夜に懐かしい友人と会うだとか半端なものが多く、その他の時間に東京砂漠、またはコンクリートジャングルで暇をする。そんなときにちょいと訪ねるスポットとしてお勧めしたいのがこの博物館である。


①アクセス
都営浅草線本所吾妻橋駅A2出口の細い階段を上がって地上へ出れば、目の前に「ずどん」と東京スカイツリーが起立している。だがそれ以外は東京の下町の空気そのままだ。通りには町工場や運送屋、貸倉庫屋などの建物が並んで作業着姿の労働者が動き回っている。標識に従って博物館へ進む道には親水公園の水場で黙々とヘラブナ釣りを楽しむ爺様たちや、ネギの入った買い物袋を載せて自転車を走らせる女、保育園で遊ぶ小児たちなどの生活感のある風景があり、久々に帰国した30代独身日本式サラリーマンの心を癒やす。


②たばこと塩の博物館
人類が(たぶん)唯一そのまま口にする無機物である塩と、かつての世界最強の嗜好品で今や毒物としての認識が広まりつつあるたばこの不思議なコンビを取り扱う博物館は、かつてその二つを専売していた日本専売公社(今のJT)さんによって1970年代に設立されたものとのことだ。2015年に今の場所にリニューアルオープンしたそうで、建物は新しく思ったよりも大きい。受付にはしっかりと制服を着たお姉さんが2名いらっしゃり、“大人ひとりですが・・”と伝えると、とても丁寧な声色で“それでは入館料100円でございます”と言われる。


③展示内容
世界と日本における塩・たばこの製法、歴史、文化についての展示内容は大人も子供も楽しめて勉強になるよう工夫されており、平日にも関わらず筆者と同様に大人ひとりで来館する人がちらほら見られた。塩のフロアとたばこのフロアに分かれており、最初は塩のフロアになる。小一時間あれば両方見終わるだろうとたかをくくっていたものの、予想外に内容が充実しており塩だけで1時間ほど使ってしまい、たばこに行きついた時には空腹に襲われてしまったため、今回は主に塩に関する知識が深まった。トイレがとてもきれいだし、入場料100円は非常にお得で素晴らしい施設だった。


④お土産コーナー
小さなお土産コーナーではレトロな煙草ケースのデザインをモチーフにした小物などオリジナルグッズが売られているし、世界中の岩塩や湖塩が小さな袋に入れられて売られているのが特に楽しい。筆者は奮発して四川省の岩塩、マリのタウデニ村の岩塩、死海の湖塩、バリ島の天日塩を購入した。これを少しづつ摘んでは冷酒を飲むとどうなるのか楽しみなのだ。

 
 駐在員の一時帰国休暇は、普段見ることができない“平日の人々の暮らし”をのぞき見できるよい機会であることに気づいた。博物館を出たあとはスカイツリーに背を向けて錦糸町方面へ歩いてみる。下町の鉄工所や機械屋で働く人たちを覗きながら江戸っ子の真似をしてスタスタと楽しく歩く。お昼時には工場でカップ麺を啜る人や、財布だけ小脇に抱えて事務所から出てくるお姉さんの姿を見ながら江戸の元気を感じることができ、まさに塩を撒かれたような新鮮な空気が体に入ってくる。これが土曜や日曜なら通りは閑散としたシャッターだらけで生気のない景色になっていたに違いない。ただし逆に平日は博物館が閉まっている可能性があるのでよく調べておいた方がよいだろう。