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アートネタなど日々のあれこれ

Lifetime

2019-07-06 11:23:00 | 美術
国立新美術館で「クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime」を見てきました。

開催を知ったときから、ずっと楽しみにしていた展覧会です。なにげにファンなものですから。過去最大規模の回顧展、かつご本人が「展覧会を一つの作品のように見せる」と語っていたとか・・・。

たしかにこれまでの集大成のような展覧会でした。個々の作品を見る、というよりは、気配を感じる展覧会だったような気がします。まずは“DEPART”と書かれた電光文字がお出迎え。会場はうす暗く、心臓音が響きます。それだけでもう何だかどきどきしてしまいます。ボルタンスキーといえば、なモニュメントの数々も・・・。「死んだスイス人の資料」も、自分自身もいつかはあちら側の人になるのだな、ということを想起させられます。そして、今回はなんと新作が。その名も「幽霊の廊下」。ちょっと高校の文化祭を思い出してしまいましたが(笑)。その先の大きな展示室には、どーんと大きな「ぼた山」が待ち構えています。黒い服は炭鉱夫のイメージらしい。その上には「スピリット」がゆらゆらと揺れています。数年前に東京都庭園美術館で見た「アニミタス」の新しい作品もありました。このシリーズ好きなんですよ・・・じっと見ていると不思議と心が落ち着きます。「ミステリオス」はクジラの言葉を聴こうという作品。波の映像はいつまでも見入っていたい感じです。「黄金の海」からは草いきれのような匂いも。これも含めて作品なのでしょうか。「黄昏」は消えゆく生命を思わせます。かと思うと「来世」と漢字で書かれた電光文字が。一瞬、昭和な風情が漂います・・・いやでも、今度生まれ変わっても、ボルタンスキーの作品にまたどこかで出会いたいものです。最後は“ARRIVAL”の電光文字に見送られて、旅の終わりです。

ところで、この展覧会に関連して、美術館の地下1階で「クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生」が上映されています。50分ほどの映像ですが、これからの人がいらっしゃったら、ぜひ見て行ってほしいです。かなり作品理解の助けになると思います。のっけから「芸術家は嘘をつく」的なことを言っていたりして、いかにも一筋縄ではいかない感じなのですが(笑)。「D家のアルバム」とか、会場では何となくぼーっと見てしまいましたが、その背景にあるものを知ると胸を衝かれるような思いがします。ボルタンスキーにとって、アートは死に抗う試みらしいです・・・。
コメント
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