aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

2018年ベスト

2018-12-30 18:58:25 | ベスト
そんなわけで、2018年もあと少し。ということで、今年も例によって、私が見た/聞いたものの中からベストを選んでみたいと思います。基準はあくまで、私個人に与えたインパクトの強さ、ということで・・・。

〇美術
 ・縄文展 1万年も前の日本人に、こんなにパワフルかつ美しいものを創る力があった、ということで、元気をもらった展覧会。火焔式土器が一堂に会した空間のインパクトは忘れがたいです。
 ・ルーベンス展 よくこんな展覧会が実現したな~と、という展覧会。一度見ただけでは消化しきれない、コテコテの展覧会でした。「法悦のマグダラのマリア」のインパクトが強烈。
 ・吉村芳生 現代の写経、のような作品の数々。百花繚乱の間の鮮やかさもまた、この世ならぬ光景のようでしたね・・・。

〇映画
 ・async やっぱりこのライヴ、生で聴いてみたかっただよ・・・の一言に尽きます。
 ・世紀の光 ようやくアピ映画デビュー。終わらない夢を見ているような映画でした。ラストのニール&イライザにはびっくり。
 ・12小節の人生 アーティスト本人が赤裸々に語っているドキュメンタリーというのは、実は案外、少ないのかも。それにしても、クラプトン様、よく生き残ったな・・・。

〇音楽
 選ぶというほど聴いていない(爆)ですが、あえて選ぶなら、「プリ・スロン・プリ」かな・・・ブーレーズはやはり、偉大でした。

〇舞台
 「酒と泪とジキルとハイド」一本しか見ていない(爆)。でも、ひさびさに三谷さんの舞台が見られて嬉しかったです。「日本の歴史」も見たかったんだけどなあ・・・(涙)

今年は、仕事が自分史上、最高に忙しい一年でしたが、それなりに見たり聴いたりできたかな、という感じです。それにしても、この年になってくると、こうして見たいものを見て、年の終わりにベスト(?)を選んだりできるというのは、実にありがたいことだと思うようになりました。来年もまた、いいアートが皆を幸せにしてくれますように!

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超絶技巧を超えて

2018-12-29 23:56:24 | 美術
東京ステーションギャラリーで「吉村芳生 超絶技巧を超えて」を見てきました。

この美術館で横山崋山の展覧会を見た時にこの展覧会の開催を知り、以来、ずっと心待ちにしておりました。2018年も間もなく終わりという時になって、ようやく見に行くことができました。

最初の作品が「365日の自画像」。365日分の自画像を9年かけて描いたとか。その時点で既に絶句してしまいます。そして、「金網」でさらに絶句。延々17m続く、金網のドローイング。茫然としてしまって、金網の結び目のよじれ具合が絶妙だな~、とか、ぼんやり思うほかありませんでした。かと思うと、新聞の模写が。「ジーンズ」は、ジーンズの写真を小さなマス目に移し、マスごとに濃さを数字で書き込んで、その通り鉛筆で塗る、という手順を踏んでいます。PCだったら、あっという間の作業なのでしょうが、それをひたすら手作業で、と思うと、また気が遠くなってしまいました。

「百花繚乱」のシリーズは、極楽浄土の光景のようでした。鮮やかに咲き乱れる花・花・花・・・。これらの作品は生活のために描かれたという面もあったようですが、あまりの美しさに言葉を失ってしまいます。しかも、全て色鉛筆で描かれています。赤色が鮮烈な「ケシ」。藤の花を描いた「無数の輝く生命に捧ぐ」は、東日本大震災で亡くなった方のために描かれたのだそうです。「未知なる世界からの視点」は彼岸の光景のよう。絶筆となった「コスモス」は右側の一部が真白なまま・・・つまり、下絵を描かず、ひたすらコマを塗りつぶすようにして作品が制作されていたということが明らかになります。ここでまた絶句・・・。

最後は「自画像の森」。描いた自画像の数は世界最多なのだとか。インドでの自画像はどこか開放されたような趣。一方、パリでの自画像はどこか鬱々としています。「新聞と自画像」のシリーズでは、3.11の衝撃の表情が、強烈でした。

この展覧会の感想を言葉で表現するのは、本当に難しいです・・・今まで見たことないものを見てしまったとしか、言いようがないというか。描くこと、というよりか、写すこと、が存在証明だったのでしょうか。そういう意味では、現代の写経、のようなものかもしれません。年の終わりにに凄いものを見てしまいました。
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永遠のリベルタンゴ

2018-12-28 01:28:45 | 映画
ル・シネマで「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」を見てきました。

ピアソラの音楽は昔から好きなのですが、ようやくドキュメンタリーになったか~、と思うと、なかなかに感慨深いです。ピアソラの子どもたちも登場していて、もっぱら、家族からみたピアソラの姿を描いたドキュメンタリーになっていました(以下、ネタバレ気味です)。

この映画を見た感想はというと・・・「芸術家のおとうちゃんをもつと家族は大変なんだな~」という一言に尽きてしまうのですが(爆)。いや、それだけではなく、あのアグレッシブかつアナーキーな音楽の生まれた経緯をうかがい知ることができました。あのヤバさは、いわゆるブルジョアのアナーキーさとは一線を画すると思ってましたが、やはりそれだけのことはあったのですね。生い立ちはかなり厳しい環境だったようです。ピアソラにバンドネオンを買い与えたのは父親でしたが、市場で中古品を買ってきたそうな。父親がピアソラを天才だと信じていたということが、後のピアソラに大きな影響を与えています。あの名曲「アディオス・ノニーノ」は父の死に際して、30分で書き上げたそうです。

ピアソラは相当、破天荒な人だったようです。音楽に全てを賭けていたともいえますが、やり方が極端というかなんというか。「過去は生ゴミ♪」みたいなこという人、たまにいますが、この方は楽譜をバーベキューで燃やしてしまいました。いや、楽譜燃やしちゃだめでしょ・・・野菜じゃないんだし。「芸のためなら~、女房も泣かす~」という歌も昔、流行りましたが、この方は泣かすどころか、捨ててしまいました。他の女に走ったとかいうことではなさそうなのがまだ救いですが、それでも、家族はたまったものではありません。でも、そこまで突き詰められる人だからこそ、あの音楽が生まれたのかもしれない、と思うと、何やら複雑な心持ちです。

そんなピアソラですが、一方で、釣り好きだったという一面も。しかし、釣っていたのは何とサメ。サメって釣るものだったとは、初めて知りました。もっぱら逃げるものかと思ってました・・・。いや、やることなすことワイルドなお方です。ピアソラの音楽って時々、大きな夕陽が海を赤く染めていくような情景を思い起こさせますが、サメ釣りの一シーンだったりするのでしょうか。そういえば、この映画の原題は“Piazzolla Years of Shark”。こちらの方がこの映画にはふさわしかったかもしれませんね・・・(リベルタンゴが出てきたのはちょっとの間でした)。
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12小節の人生

2018-12-03 00:17:49 | 映画
シネクイントで「エリック・クラプトン 12小節の人生」を見てきました。

言わずと知れたギターの神様、エリック・クラプトン。その人生を、それこそ赤ん坊の時から丹念に追ったドキュメンタリーです。そして、ナレーションはなんと、クラプトン様ご本人!淡々と、しかし赤裸々に、その人生を語ります。

まだ、公開されて間もない作品なので、ネタバレにならないようにしようと思いつつ、つい書いてしまうかも。映画はどちらかというと、人間・クラプトンの方に寄ったつくりとなっています。クラプトンの撃沈時代のエピソードも。よく、死なずにすんだな・・・という感じです。ドラッグとアルコールが重なった時の恐ろしさは「AMY」でも描かれていましたが、この映画、「AMY」のスタッフが編集を担当していたのですね。また、クラプトンの女出入りも詳細に語られています。ジョージ・ハリスンの元妻、パティ・ボイドとの話は有名ですが、ほかにもこんなにたくさん・・・(爆)。いや、イケメンだし、ギターめちゃうまだし、しょうがないよね、とは思いつつも、よく、撃たれずにすんだな・・・という感じです。根底には、実母のあんまりな仕打ちがあったのかもしれませんが。とりわけ、ジョージ・ハリスンとパティ・ボイドをめぐる、あるエピソードが怖かったです。そして、クラプトンを襲った最大の悲劇・・・“Tears in heaven”では、泣きました・・・。

音楽面では白人がブルースをやること、についての葛藤が語られていました。黒人以外が黒人音楽をやる時には、必ず、そしてたぶん、永遠についてまわる問題だと思いますが、ブルースでは特に顕著なのでしょうね。おまけにマディ・ウォーターズは「白人が俺みたいに歌おうったって無理だから。苦労してねーし。」みたいなことを言って、追い打ちをかける・・・(爆)。まあ、彼は王様ですから。結局、自分なりのブルースをやるしかない、という結論に至るようですが、穿った見方をするなら、ブルースをやるために、無意識に自分を痛めつけていたのでは、という気がしないでもありません。ミュージシャンの業・・・。しかし、この映画を見て思ったのは、究極のブルースは、12小節のフォーマットにあるのでも、黒人のように歌ったり演じたりすることにあるのではないのかも、ということでした。

今のクラプトンは幸せそうで、思わず胸をなでおろします。ある大御所ミュージシャンの「彼は強かったんだ・・・生き残ったんだから」という言葉が刺さります。天才・ジミヘンは命を落としました。神様が生き残り、天才が早世、って何だか不思議ですが。二人を分けたものは、なんだったんでしょうね・・・。
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太陽/星月夜

2018-12-02 00:01:41 | 美術
東京都美術館で「ムンク展」を見てきました。

ムンクといえば、仕事で約10年前にノルウェーに行った時、合間にムンク美術館へ、と意気込んだものの、こういう時に限って改修中・・・(爆)。国立美術館の方で、「叫び」や「マドンナ」は見たのですが、ムンク美術館のコレクションを見ることができなかったのが心残りとなっておりました。もう、ノルウェーに行くこともないだろうな、と思っていたのですが、実に10年の歳月を経て、向こうの方からやって来てくれました。

展覧会は自画像から始まります。「地獄の自画像」は焔に焼かれるかのような自画像。家族の章の「病める子」のはかなげな姿は、眼に焼きつくようです。ムンクは5歳で母を、14歳で姉を亡くしています。「夏の夜」の章では、打って変わって色鮮やかな作品が続きます。「夏の夜、人魚」の海の青と人魚の白い肌。そして、「叫び」。幻聴が聴こえないように、耳を塞いでいるのでしょうか。「絶望」「不安」が続きます。「接吻」は溶け合うようかの二人。ムンクにとって、女性は吸血鬼でもありマドンナでもあったのでしょうか。マドンナと吸血鬼が表裏になった石板も。「生命のダンス」はホドラーの作品を思い出します。「太陽」は強烈な作品。すべてを包み込むかのようなまばゆい光が輝いています。ミュシャの「スラヴ叙事詩」のラストの作品を思い起こしました。星月夜は同タイトルのゴッホの作品を思い出します。青~緑青~紫と続く空のグラデーションの美しさに、しばし、立ち尽くしてしまいました。最後の「自画像、時計とベッドの間」には自作と思わしき作品も描かれています。最初の頃の自画像とも違う、何か放心したかのような姿です。

「読書する男や編み物をする女のいる室内画を、もう描いてはならない。呼吸し、感じ、苦悩し、愛する、生き生きとした人間を描くのだ」という言葉を、ムンクは残しました。生きるということを、本当にストレートに描いた作品の数々。一見、明るそうに見えて、実はそうではなかったのがボナールだとしたら、その逆がムンクかも、とも思いました。「太陽」や「星月夜」の光は忘れられなさそうです・・・。
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図案対象

2018-12-01 19:53:36 | 美術
芸大美術館で「藝大コレクション展2018」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。

お目当てはあの作品・・・そう、久保克彦「図案対象」です。「日曜美術館」でこの作品のこと知ってから、ぜひ、生で見てみたいと思っていました。やはり、見に行ってよかったです・・・。渾身の作品から放たれるオーラ、そして、今見ても、スタイリッシュな作品です。特に、飛行機が墜落していく場面を描いた「第3面」の赤い空は、一度見たら、忘れられない感じです。展覧会では、クラウドファンディングで修復されたという、柴田是真の「千種之間天井綴織下図」も展示されていました。旧皇居の「千種の間」の天井を飾っていた綴錦の下図だそうです。壁一面に貼られた種々の花の絵。すべて円形の中に綺麗に収められています。是真というと、とかくだまし絵のイメージが強いのですが、こういう仕事もしていたのですね。意外なところでは、曽我蕭白の「群仙図屏風」も。青木繁の「黄泉比良坂」に再会できたのも嬉しかったです。この展覧会はコレクション展ですが、藝大美術館の特殊性がわかるようなラインナップでした。やはり、ここは、創作者のための美術館なのですね・・・。

その後、藝大美術館の3階で開催されていた、「深井隆展 7つの物語」も見てきました。退任記念展だそうです。独特の幻想的な世界観。馬、翼、月・・・飛翔するイメージ。ライティングも絶妙でした。今はなきギャラリー日鉱の空気感を思い出しました。

私が行った日には、上野公園の噴水のところで、藝大のお祭りのようなものをやっていました。作品を売るお店、食物を売るお店、似顔絵を描く人・・・コーヒーのワゴンもあったので、お茶してきました。美味しかったです。コーヒーを淹れていたのは芸大生さんでしょうか・・・芸大は憧れの大学でしたが、その気分の一端を味あわせていただきました。
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