aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

ヨーロッパ絵画の旅

2020-07-26 01:39:44 | 美術
国立西洋美術館で「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を見てきました。

もう見られないかと思っていた展覧会ですが、ありがたいことに会期延長してスタートしました。一寸先は闇、というか何が起こるかわからない今日この頃、早めに行ってきました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの国外での所蔵作品展は何と世界初だそうです。そして、今回展示される作品はすべて日本初公開。これは行っておかないと後々まで後悔してしまいそう・・・。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーのコレクションはその質の高さ、幅の広さから「西洋絵画の教科書」とも言われるそうです。この展覧会では、そのコレクションを「イギリスとヨーロッパの交流」という視点から紹介しています。展覧会はイタリア・ルネサンス絵画から始まります。クリヴェッリの「聖エミディウスを伴う受胎告知」に目を奪われます。レーザー光線が飛ぶ受胎告知図という斬新さもさることながら、ディティールが凄い。ところで、聖エミディウスって誰かというと・・・この街の守護聖人だそうです。街の模型図を持って立っているのがそのお方。次はオランダ絵画です。ここはやはりフェルメールとレンブラント・・・「ヴァージナルの前に座る若い女性」の謎めいた表情。レンブラントの「34歳の自画像」は彼が名声を高めていた時期の作品らしく、自信に満ち溢れています。その次はイギリス肖像画、そして、グランド・ツアーにまつわる作品。カナレットの「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」のどこまでも続く空と運河。続いてスペイン絵画。ここはやはりムリーリョの「窓枠に身を乗り出した農民の少年」と「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」。ムリーリョって少年を描かせたら世界一かも・・・。続く風景画とピクチャレスクの章にはターナーの「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」が。ザ・ターナーみたいな作品です。輝くような朝焼けの光、この世を超えた光景。フランス絵画の章にはモネやルノワール、そしてラストにはゴッホの「ひまわり」。SOMPO美術館のひまわりはこのひまわりの模写だそうですが、こちらはより花が重々しい感じ。ゴーギャン曰く「完璧な一枚」だそうです・・・。

そんなわけで、ヨーロッパ絵画の旅を楽しんでまいりました。イタリア、オランダ、スペイン、イギリス、フランス・・・ヨーロッパも一衣帯水なのでしょうか・・・。

この日は「内藤コレクションⅡ 中世からルネサンスの写本 祈りと絵」も見てきました。昨年秋にもコレクションの展示がありましたが、今回は15~16世紀の西ヨーロッパで制作された作品が中心となっています。「時禱書」に由来するものが多くを占めていますが、これがまた素晴らしい・・・月並みな表現ですが、心を洗われるようでした。鮮やかな青、華やかな朱、煌めく金・・・祈りの小宇宙・・・。
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画家の中の画家

2020-07-07 01:04:32 | 美術
東京国立近代美術館で「ピーター・ドイグ展」を見てきました。

開幕後、わずか三日で中断・・・このまま幻の展覧会として伝説になるのかと思いきや、ありがたいことに会期延長して再スタートしました。今度こそ後悔しないように早めに行ってきました。イギリスが誇る現代の「画家の中の画家」。生で見るといったいどういうことになるのでしょうか・・・。

この展覧会ではドイグの作品がほぼ年代順で紹介されています。インスタレーション全盛だった90年代、既に時代遅れとみなされていた絵画の分野で、いまだ見たことのない光景をつくりあげたドイグが注目を浴びることになりました。実際、作品を生で見てみると、一見して、普通(?)の絵画と違う感じです。まず、大きい。そして、画面が浮き出てくるような不思議な感覚。1章は「森の奥へ」。「天の川」は神秘的な夜の湖と空を描いた作品。カヌーのモチーフはドイグの作品に繰り返し出てきますが、これは「13日の金曜日」のラストシーンが元ネタらしいです。「のまれる」は夜の湖面を映した作品ですが、灼けつくような赤が印象的。この絵はなんと30億円!で落札されたのだとか。「ブロッタ―」は紫の湖が不思議な印象。やはり映画のワンシーンのよう。「カヌー=湖」は黄緑の湖面とエメラルドグリーンのカヌーという取り合わせが美しくも不気味。そして、とてもとても楽しみにしていた作品、「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュベレ」。夢幻的・・・カラフルな塀、光る星、湖面の深い青、オーロラのような空。夢のワンシーンのようでありながら、一度見たら虜になりそうな魅力というか魔力があります。個人的には今年のベスト作になりそうな予感・・・。「コンクリート・キャビンⅡ」はコルビュジェが建てたアパートを描いていますが、写真のようにも見えるスタイリッシュな作品。2章は「海辺へ」。「レッドボード」のどこか不穏な森の色、「ラベイルーズの壁」のどこか不安な空の色。この作品は小津安二郎の「東京物語」にインスパイアされたらしいです。「ポート・オブ・スペインの雨」もかなり不思議な作品。キリコを思い出しました。3章は「スタジオのなかで」。ドイグが主催していたスタジオフィルムクラブという映画の上映会のポスターの数々。東京物語やHANA-BIに、なんと座頭市のポスターも。けっこうマニアではないですか・・・。

というわけで、ドイグの不穏かつFacinatingな世界観を堪能してまいりました。このまま見られなかったら一生後悔しそうだったので、無事、鑑賞できて感無量でした。本当に二度と見られないような展覧会ですしね・・・。ところで、この展覧会も「ニコニコ美術館」で解説動画を見られます。国立近代美術館の学芸員お二人(桝田倫広さん、蔵屋美香さん)とアーティストの五乙女哲平さんの三人で解説しているのですが、これがとても充実していました。学芸員さんとアーティストさんの作品を見る視点の違いも面白かったです。

ひさびさの近代美術館だったので、ひさびさに常設の方も覘いてきました。4室に小原古邨の作品が集められていました。何年か前に、茅ケ崎市美術館での展覧会を見に行けなくて残念な思いをしていたので嬉しかったです。精緻かつ瀟洒な作品の数々。ギャラリー4ではコレクションによる小企画「北脇昇 一粒の種に宇宙を視る」が開催されていました。1930年代から40年代にかけて京都で活躍した前衛画家ですが、今見てもモダンというかスタイリッシュな作品です。シュルレアリスムでだけでなく数学や自然科学、易なども駆使して制作していたそうです。「空港」はとある新聞でも紹介されていましたね。一つの画面にどれだけ深い意味を込めたのでしょうか・・・。
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