東京都現代美術館で展覧会のはしごをしてきました。
例によって、鑑賞前に腹ごしらえ…ということで、この日は清澄白河の駅近くの「深川 釜匠」に寄ってきました。深川めしを頂きましたが、丼いっぱいのご飯の中にあさりがゴロゴロ…ふっくら炊かれたあさりが美味しゅうございました。けっこうボリューミーなのですが、前もって持ち帰り用にラップを下さるという気の利きよう…さすが下町のお店です。あさりが大好きな子供たちのために一部を持って帰りました。その後、少し足を伸ばして清澄庭園をお散歩…天気のいい日だったので、とても気持ちよかったです。この庭園、さながら別天地の趣がありますね…。
さて、腹ごなしもすんだところで美術館へ。最初に見たのが「ユージ―ン・スタジオ 新しい海」です。不肖わたくし、ユージ―ン・スタジオのことは今回、初めて知りました。何でも平成生まれの作家の個展は東京都現代美術館で初めてだそうです。「White Painting series」はただの白いキャンバスかと思いきや、人々の接吻の跡が重なっているのだとか。続く「海庭」で度肝を抜かれます。さすがにこの発想はなかった…これ、うちにも欲しい…とつい思ってしまいました…絶対、無理だけど。「善悪の荒野」は「2001年宇宙の旅」にインスパイアされた作品ですが、何と映画の終盤のシーンに現れる部屋を原寸大で再現、破壊、消失したオブジェによるインスタレーション。やることが凄いです…。「ゴールドレイン」は金銀の粒子が雨のように降り注ぐという作品。いつまでも見入っていたい美しさ。「夢」はドビュッシーの「夢」をピアノで空弾きする映像を繋いだ作品ですが、これを見たら無性に「夢」を弾きたくなり…家でひさびさに楽譜を引っ張り出して弾いてしまいましたよ…。それにしても、本当に世界観が好きなタイプの作家さんで、出会えて嬉しかったです…新しい海を見つけたような…。
「Viva Video! 久保田成子」は約30年ぶりという大規模な個展です。彼女の生い立ちにまで遡り、初期から晩年までの活動を多数の資料とともに紹介しています。彼女は元々、彫刻家を志していましたが、大学卒業後に東京の前衛美術コミュニティに参加した後、1964年に渡米、フルクサスの活動に参加します。当時、際どい作品も発表したりしていますが、彼女はとにかく腹が据わっているのです…。その後、ヴィデオと出会い、代名詞となるヴィデオ彫刻の作品を生み出します。ヴィデオ+彫刻ってまさに彼女じゃないとできないことですよね…。「三つの山」は今見てもスタイリッシュ。80年代になるとヴィデオ彫刻がさらに進化し、動きが加わります。「ナイアガラの滝」は、複数のモニターの前にシャワーが置かれ、滝のように水が滴り落ちるという作品。これが一台家にあると癒されそう…いや、置く場所ないけど…。「スケート選手」は伊藤みどりさんをモデルにした作品ですが、面白くもなつかしい。「韓国の墓」は夫のナム・ジュン・パイクの故郷である韓国の墓をモチーフとしてますが、光り輝くように美しく…。ナム・ジュン・パイクといえば、「セクシュアル・ヒーリング」という作品も。パイクが脳梗塞で倒れ、リハビリをすることになるのですが、セラピストはなぜかグラマーな美女2人組。妻としてはなかなか複雑な心境かと思われますが、しっかり作品のネタにしています。マーヴィン・ゲイの同名曲をBGMに、美女に挟まれニコニコ顔の旦那さんが映像作品となりました…。作品も資料も半端ない数の展覧会で見る方も大変でしたが、エネルギーをもらったようです。彼女はこんな言葉も残していましたね…「時は流れ、過ぎ去るものは常に美しい」。
「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」アートと音楽の交差点から革新的な作品を発表しているクリスチャン・マークレーの国内初の大規模な個展です。音楽、アート、マンガ、映画、グラフィティ…さまざまなメディアを越境するユニークな作品の数々。「リサイクル工場のためのプロジェクト」は東京のリサイクル工場で制作されました。ゴミがリサイクルされ、視聴覚を刺激する作品へと生まれ変わる過程が作品になっています。代表作の一つである「ビデオ・カルテット」は古今東西の映画から音にまつわるシーンを集めて作ったコラージュ作品ですが、聴いたことのないような音楽が出現…。「サラウンド・サウンズ」は漫画のオノマトペを引用した無音の映像インスタレーション。オノマトペの文字がアニメ―ションで降り注ぎます…。視覚と聴覚の交差というテーマの現在進行形をこれまでにない規模で見られた展覧会でした。
最後に「Journals 日々、記す vol.2」も見てきました(現在は閉室しています)。今回は久保田成子展にちなんでか、フルクサスの展示もありました。かと思うと、三島喜美代さんの陶作品が。やはり生で見ると迫力がありますね…。衝撃的だったのが康夏奈(吉田夏奈)さんの作品。「花寿波島の秘密」を見上げていると龍宮城にいるような不思議な心持ちに…彼女の言うところのbeautiful limitという概念も興味深いです。そして、昨年に亡くなったボルタンスキーの作品が切ない…。
そんなわけで、現代アートでお腹いっぱいになりましたが、帰りに「ARiSE COFFEE ROASTERS」に寄ってきました。こぢんまりしたアットホームな雰囲気のお店です。店主おすすめのドミニカを頂きましたが、これがめちゃめちゃ美味しかった…これまで飲んだコーヒーで一番だったかも…一日の疲れがぶっとびました…。