aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

藝大年代記

2020-10-31 23:56:31 | 美術
藝大美術館で「藝大コレクション2020-藝大年代記―」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。

東京藝芸術大学の130年の歴史を概観できる展覧会でした。無料のパンフレットも充実していて読みごたえがあります。展覧会は2部構成で、第1部で学校と先生の歴史、第2部で学生たちの歴史を振り返ります。1部ではデッサン、模写を基本とする芸大の教育がコレクションとともに紹介されています。会場入ってすぐの「靴屋の親爺」に眼を奪われました。レンブラントを彷彿とさせる力強さ。隣には高橋由一の「鮭」が。珍しいところでは国宝の「絵因果経」も。これは藝大の最初のコレクションの一つだそうです。谷文晁のコレクションも出ていました。1部のラストは上村松園「序の舞」と狩野芳崖「悲母観音」という華麗な並びです。2部は卒業制作、主に自画像ですが、100点以上並ぶと壮観です。この顔ぶれを眺めていると、藝大が日本美術に果たした役割の大きさが窺いしれます。とりわけ、青木繁、藤田嗣治の作品に特に眼を惹かれますが、宮島達男の自画像(?)が面白いことになっていました。最後にヨーゼフ・ボイスが藝大を訪れた際に学生との対話で使われたという黒板が展示されていました。ボイスは学生に「拡張された芸術概念」や「社会彫刻」について説明したのですが、最後まで議論はかみ合わなかったそうです。ボイスはその日の夕方、草月ホールでのパフォーマンスの後で「芸術大学とか画廊みたいな所で営まれているものだけが芸術だと思ってはならない」という言葉を残していたとか・・・。

鑑賞後は藝大アートプラザにも寄ってきました。ここでは「藝大の猫展2020」が開催されています。藝大の学生さんによる愛猫たちの作品の数々。個性豊かで愛らしい猫たち。思わず欲しくなってしまいます・・・。小腹も空いたので、アートプラザの前のキッチンカーでハンドドリップのコーヒーとケーキサンドを頂いてきました。ケーキサンドは2枚のチョコクッキーの間にチーズケーキがサンドされているお菓子ですが、独特の食感で美味しゅうございました・・・。
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MANGA都市TOKYO

2020-10-25 00:09:31 | 美術
国立新美術館で「MANGA都市TOKYO」を見てきました。

2018年にパリで開催された「MANGA⇔TOKYO」展の凱旋展示です。パリでの展示は来場者が3万人を超えたそうですが、日本のアニメはやはり海外でも人気なのですね・・・。

会場に入ると、まずは東京の巨大模型に目を奪われます。しかも、背景のスクリーンでアニメや特撮作品が上映されていて、作品の舞台となっているエリアが模型上でライトアップされています。この事件はここで起きていたのだな、ということが一目で分かる仕掛けです。展覧会では作品と東京の関係を3つのセクションに分けて紹介しています。セクション1は「破壊と復興の反復」。東京の破壊といえば、なゴジラはもちろん、AKIRAやエヴァンゲリオン、シン・ゴジラも登場。作品とはいえ、こんなに何度も破壊された都市もなかなかないのでは。比較的狭いエリアに建物が密集しているという点でも破壊しがいがあるのかもしれません。でも、考えてみれば、現実世界でも東京は関東大震災や第二次世界大戦といった壊滅的な破壊を乗り越えてきたのですよね。東京という都市を考えるうえでは破壊と創造は外せないキーワードになるのでしょう・・・。セクション2は「東京の日常」。江戸から現在に至る人々の日常を描いた作品を紹介しています。ここには懐かしい漫画もたくさん・・・あしたのジョー、ルパン3世、魔法使いサリーなどなど。個人的には「はいからさんが通る」の原画を見られたのが嬉しかったですね・・・子供の頃、思い切りハマっていたので。江戸を描いた漫画にも魅力的な作品が。女性が主人公の「百日紅」や「さくらん」・・・今まで知らなかったけれど、気になったのが「火要鎮」。アニメが見事なのですが、大友克洋さんの作品だったのですね。いつか見てみたいです。最近の作品では新海誠監督や細田守監督の作品も。最近のアニメは本当に絵が綺麗ですよね。最後のセクション3は「キャラクターvs.都市」。初音ミクとコラボしたコンビニの再現展示には驚きました・・・ここまでやっていたのか。

というわけで、MANGA都市TOKYOを堪能・・・会場にはパリでの展覧会の際に、フランス人が描いた絵馬も紹介されていました。フランスの方々がキャラを真似して描いたり、日本語でメッセージを書いていたりして、日本のアニメって愛されているのだなぁ、としみじみ思いました。月並みですが、やはり日本のアニメって素晴らしい・・・。

ところで、アニメといえば、例によってわが家の子どもたち、そして私自身も「鬼滅の刃」にハマっております。この作品もどこまで世界に広がっていくか、楽しみです・・・。
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ベイシー

2020-10-13 00:00:46 | 映画
アップリンク渋谷で「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」を見ました。

岩手県一関市にあるジャズ喫茶、ベイシーのドキュメンタリーです。ジャズファンの間では有名なお店ですが、今年で何と50年だそうです。その間、マスターの菅原正二氏が不在の状態で営業したことは一日もないのだとか。ところで、今さらですが、菅原氏は早稲田のハイソのOBだったんですね・・・。

映画は菅原氏とベイシーの佇まいを淡々と映し出します。この映画は音も素晴らしく、菅原氏の並々ならぬ音へのこだわりが見ている者にも伝わります。オーディオマニアというとアンプにこだわる人が多そうですが、菅原氏はスピーカーにこだわるようで、だんだんスピーカーが楽器のように見えてくるから不思議です。映画にはベイシーを愛する人々が続々登場・・・ミュージシャンでは村上ポンタ、坂田明、渡辺貞夫、エルヴィン・ジョーンズ・・・珍しいところでは阿部薫の記録映像も。阿部薫の映像って初めて見たのですが、何というか、顔が全然違いますよね・・・死地に赴く武士みたいな顔。同業では「エルヴィン」や「DUG」のマスターも登場。三者三様のこだわりが全開でした。お店では私語禁止、みたいな方もいらっしゃいましたが、菅原氏は比較的オープンな方のようです。ジャズ喫茶って傍から見ていても、経営が成り立つのだろうか、とつい心配になってしまうのですが、菅原氏曰く、ジャズ喫茶ってしぶとい、というかジャズっていう音楽がしぶとい、のだそうです。東日本大震災で壊滅的な被害を被った経験を乗り越えた方の言葉だけに重みがあります・・・。その他にも氏の名言の数々が記録されていますが、最も印象深かったのが映画の台詞のようなこの言葉、「ジャズというジャンルはない ジャズな人がいるだけだ」。そしてこの映画、終わり方も洒落ています。ジャズ、とりわけビッグバンド好きの方なら思わずニヤリとしてしまうラストでした。

さて、ジャズ喫茶の映画の後はジャズ喫茶へ・・・ということで、近くの「渋谷Swing」に行ってきました。昔、宇多川町にあった頃はよく通っていたのですが、およそ四半世紀ぶりの訪問です。今のオーナーさんになってから6年目なのだとか。前のお店はLDを上映していましたが、こちらのお店はオーディオ専門のようで、アナログのあたたかい音をしばし堪能。お料理のメニューも増えてましたね・・・黒カレーを頼んだのですが、お肉がホロホロで美味しゅうございました。

ところでアップリンクといえば、例の件はその後いったいどうなったのでしょうね・・・無事解決されることを願っております・・・。


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太陽のテノール

2020-10-11 16:03:39 | 映画
Bunkamuraル・シネマで「パヴァロッティ・太陽のテノール」を見てきました。

神の声を持つと言われた名テノール、ルチアーノ・パヴァロッティの生涯を追ったドキュメンタリーです。イタリアの国宝というくらい偉大な存在ですが、私はリアルタイムでは三大テノール以降のことしか知らなかったので、この映画で初めて知ることが多々ありました(以下ネタバレ気味です)。

アマチュアのテノール歌手の息子として生まれたパヴァロッティ、父の助言に従い小学校教師になりますが、後に母の勧めにより歌手の道を目指すことになります。母によると、夫の歌には何も感じないけど、息子の歌には感じるものがあったのだとか。彼が成功への階段を駆け上がるきっかけは“代役”でした。ハイCで拍手喝采を浴び、その後もハイCを武器にオペラ界で揺るぎない地位を築きます。映画ではローマのカラカラ浴場での三大テノールのコンサートもばっちり見ることができます。歌うパートを3人で譲り合いつつ、各々がみごとな歌声を披露するさまは今見ても感動的・・・。そして、ダイアナ妃との出会いによってチャリティーに目覚め、ポピュラー音楽の世界にも進出。なかでもU2のボノとは深い交流があった模様・・・チャリティーコンサートに向けてボノに曲を作らせるためにダブリンにまで押しかけていくシーンでは思わず笑ってしまいました。後年、長い間遠ざかっていたオペラの世界に復帰しますが、最後となったコンサートの映像も。往年のような高い声が出ず、酷評する者もいましたが、ボノは「挫折を知らないと出せない声だ」と語っていました。「歌手が唯一差し出せるのは自分の人生だ」と・・・。

映画ではパヴァロッティのプライベートにもかなり踏み込んでいます。前妻、3人の娘、後妻、仕事のパートナーで恋愛関係にあった女性がパヴァロッティについて語ります。女性と縁が深い人生だったのですね。娘の一人が難病を患った時は、一時期、音楽活動をストップして家庭に専念するくらい家族思いだったパヴァロッティですが、後妻さんと出会うと自分の気持ちに抗えず彼女の元へ。再婚し、67歳で子供も生まれ、再度、幸せをつかんだかと思った矢先、癌が発覚、71歳でこの世を去ります。亡くなる時、末の娘は4歳でしたが、彼女に言葉を遺してほしい、と言われた時、パヴァロッティはこう言って断りました。彼女に言葉を遺すとそれに縛られて生きることになる、彼女には自由に生きてほしい・・・。

光り輝くような声と笑顔、時おり射す深い影・・・まさにイタリアの太陽のような人でした・・・。
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メイキング・オブ・モータウン

2020-10-04 13:56:51 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「メイキング・オブ・モータウン」を見てきました。

これも公開を知った時から楽しみ~に待っていた映画です。期待に違わぬ・・・というか、期待以上の面白さでした(以下、ネタバレ気味です)。

映画はモータウンの創設者、ベリー・ゴーディJrと盟友スモーキー・ロビンソンが昔話をする形で進行しますが、これがほとんど掛け合い漫才のような面白さ。そもそもベリー・ゴーディJrが何だか大阪のおっちゃんみたいなんですよね・・・なんとなくマフィアのボスっぽい人(?)を想像していたのですが、違ってました。幼い頃から目端の利く子どもだったベリー・ゴーディ、「白人も黒人も転べば痛いし、楽しきゃ笑う。違いがないってことは分かっていた」という名言も。若い頃は試行錯誤し、フォードの自動車工場の組み立てラインで働いていたこともありますが、この経験が後のビジネスの重要なヒントになります。やはり才覚のある人って、どんな環境からも学ぶのですね。音楽に並々ならぬ関心があったゴーディは、1959年にタムラ・レコードを設立。自ら作曲もする社長というのが特徴でした。そして、デトロイトの一軒家のモータウンには、奇跡のような才能が、奇跡のように引き寄せられます。まさにミラクル・・・。綺羅星のようなタレントのなかでも、とりわけ凄かったのがスティーヴィー・ワンダーとマイケル・ジャクソン。11歳のスティーヴィーは目が見えないにもかかわらずあらゆる楽器を難なくこなしますが、「ダイアナ・ロスの声に恋をした」と歌手に転向。マイケル5歳の時の踊りまくるオーディション映像を見たときは、椅子ごとひっくり返りそうになりました。偶然、私には11歳と5歳の子どもがいますが、天才というのは生まれた瞬間から違うのだな、としみじみ思いましたよ・・・。彼らタレントを統括するゴーディの手腕はみごとなものでした。フォードの車の製造工程を音楽制作に応用し、プロデュース~編曲~ダンスといった一連の工程の管理、はてはマナー教育まで、その品質管理は徹底していました。一方、経営は比較的民主的で、人種・性別にとらわれず、品質管理会議で方針を決めていたようです。卓越した管理能力とセンス、経営者としては最強ですよね。スモーキー曰く、「才能のある人間はいる。ただ、彼のようなリーダーはいない」。スティーヴィー曰く、「ベリーは何がポップかということがわかっていた」。ただ、このポップはポップ音楽という意味ではなく、何をどうすれば面白くなるかということのようです。隆盛を極めるモータウンですが、その背後で時代は変化していました。政治的なことは作品に投影させない、ということがモータウンの大方針でしたが、その方針を覆さなくてはならない時がやってきます。そうして生まれたのがあの大名曲、マーヴィン・ゲイの“What’s going on”です。ベリーが人と車は違う、ということに気づいた瞬間、モータウンのビジネスモデルは終焉したのかもしれません。その翌年、モータウンはオフィスをLAに移転、一つの時代が終わりを告げます・・・。

そんなわけで、音楽史に残るミラクルをミラクルの当事者がしゃべりまくるという、ミラクルのような映画でした。音楽ドキュメンタリーというと、見ている途中でドーンと落ち込んでしまう展開になるものが少なくないのですが、この映画は終始ハッピーに見ていられましたね。信じられないような黒人差別の実態を明らかにする場面もありますが、それでも音楽の世界では幸せな夢を描く、モータウンそのものなのかもしれません・・・。

さて、鑑賞後は例によって甘いもの・・・ということで、映画館近くの「茶亭 羽當」に寄ってきました。ブレンドとメープルシフォンケーキを頼みましたが、コーヒーはもちろん、シフォンケーキもふわっふわ、きめ細かい舌ざわりで、美味しゅうございました。
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