aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

すばらしき映画音楽たち

2017-10-31 23:55:22 | 映画
シアターイメージフォーラムで「すばらしき映画音楽たち」を見てきました。

映画音楽の歴史を一望できるような映画でした。もっぱらハリウッド映画中心ではありますが。言わずと知れた超有名作の作曲家が軒並み(約40人!)出演していて、あまりのゴージャスさ加減に思わず頭がくらくらしてしまいました(以下、ネタバレ気味です)。

「映画に音楽が加わると物語になる」との言葉どおり、音楽が映画にとってどれほど大切なものかを思い知らされます。音楽がなかったら、映画がどんなに味気ないものになってしまうか・・・ヒッチコックの「めまい」の冒頭の殺人シーンも、音楽がなかったらあんまり怖くない・・・スターウォーズのダースベーダー登場のシーンも、音楽がなかったら「何だか変なかっこしたおっさんが歩いてくるわ」になってしまうし、E.T.が月に帰っちゃうとこで音楽がなかったら、あんなに泣けんかっただろう・・・。

元々はオーケストラによるクラシカルな曲が中心だった映画音楽にジャズやバンドサウンド、電子音楽、はたまた現代音楽が取り入れられるようになったり、という映画音楽の流れもよくわかります。それにしても、今となっては、オケが日常的に使われる音楽って、もはや映画音楽くらいになっていたのですね。制約が多い一方で、映画にハマっていさえすれば何でもあり、という自由度の高い音楽でもあることを知りました。映画的必要に迫られた数々の工夫が音楽的革新を生むのです。

この映画に出演している作曲家たちの中でも特に、ジョン・ウィリアムズの偉大さが心に残ります。ジョーズ、スターウォーズ、スーパーマン、インディ・ジョーンズ・・・とりわけ「E.T.」誕生の秘話なんてもう、鳥肌もんです。彼以外の作曲家たちも、名曲誕生のエピソードを惜しげもなく語ってくれます。強烈なプレッシャーに苦しみながら、極上の音世界を紡ぎ上げて行く、それが映画にハマった時の素晴しさはもう、言葉にもならないくらいです。

ところでこの映画、エンドロールに至るまで気が利いています。本当に、いろんな意味でよくできた映画でした・・・この映画、原題は“Score”だったのですね・・・。
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ミスター・ガガ

2017-10-30 23:36:48 | 映画
シアターイメージフォーラムで「ミスター・ガガ」を見てきました。

バットシェバ舞踊団には前々から興味はあったのですが、なかなか実演を見に行く機会がなく・・・この映画は舞踊団の芸術監督&振付家、オハッド・ナハリンに長期密着したドキュメンタリーということで、これ幸いと行ってまいりました(以下、ネタバレ気味です)。

オハッド・ナハリンは20代から舞踊を始め、バットシェバ舞踊団から、マーサ・グラハム舞踊団、ジュリアード音楽院で学んだというキャリアの持ち主。ダンサーとしては遅いスタートなのですが、それゆえ野性的な動きが可能になったようです。モーリス・ベジャール・バレエ団にも一時在籍していたようなのですが、彼がバレエ団に潜り込んだ時、そして退団した時のエピソードがけっこう面白いです。その後、振付家として活動を始め、90年にバットシェバ舞踊団の芸術監督に就任します。

オハッド・ナハリンは踊りの凄さもさることながら、そのキャラクターがとにかく強烈・・・独特の人を食ったような話っぷりは時として真偽のほどが分からなくなるくらいで、そのあたり少々バンクシーの映画を思い起こさせます。ダンスを始めたきっかけが自閉症の双子の弟の心を開くためだったとか(笑)。彼はその圧倒的な実力とカリスマ性でカンパニーに君臨していて、リハーサルのシーンなんかもう、見てるだけで怖いです・・・が、その力によって、当初は客も疎らだったカンパニーを世界中で活躍する存在へと押し上げます。その一方で、ダンサーだった妻の梶原まりさんとの悲しい別れ、自身も脊髄損傷で足が動かなくなるといった悲劇にも見舞われます。そして独自の動きのメソッド「GAGA」を考案。これは自発的に己の体の声に耳を傾けさせるというものです。オハッド・ナハリンの踊りからも言葉からも「自分自身を解放すること」「己に率直に生きること」という強烈なメッセージが伝わってくるようです。

ところで、この映画ではバットシェバ舞踊団のダンスのシーンもふんだんに見られますが、これがもう、とにかくかっこいい。力強くもスタイリッシュ。そして映画自体もスタイリッシュ。この映画を見ると、無性にそのダンスを生で見たくなってしまいます。折しもバットシェバ舞踊団が来日公演中なのですが、時既に遅し。埼玉の公演は全て売り切れておりました。残念・・・。いつかぜひ、リベンジしたいものです。
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運慶

2017-10-11 00:44:02 | 美術
東京国立博物館で「運慶」展を見てきました。

今年の目玉的な展覧会・・・ということで、会期が始まってから間もない平日の夕方に行きましたが、それでもそこそこ混んでましたね。そして、入ってからまだ出揃っていなかった作品がいくつかあったことに気づいてしまい・・・一瞬、「慌てる乞食はもらいが少ない」という諺が頭をかすめましたが、まぁ、テレビとかで放送されちゃったら、ますます混むだろうし、と強いて自分に言い聞かせたのでした。

さて、この展覧会、運慶作の仏像31体のうち22体が、集結するというもの。そういうことを言われると残りの9体はどこでどうしているのだろう、と気になってしまいますが(笑)、ともあれ史上最高の運慶展、ということらしいです。

会場に入ると間もなく、運慶が20代の時のデビュー作、「大日如来坐像」が。デビュー作にしてこの風格。「仏頭」は威厳のある面持ち。「不動明王立像」は背後の火炎が燃えるよう、「毘沙門天立像」は独特なポーズ、眼力に圧倒されます。一方で、「地蔵菩薩像」は静謐な作品。「八大童子立像」はまさに生きているかのよう。とりわけ制多伽童子の眼差しが印象的です。そして、今回は「無著菩薩立像・世親菩薩立像」と「四天王立像」が一つ部屋に。圧倒的な空間、深遠な世界です・・・。寺外初公開という「聖観音菩薩像」も。彩色は後から施されたものだったのですね。打って変わって、艶やかで美しい像です。

今回の展覧会では、運慶の息子たち、そして周辺の仏師の作品も展示されています。ここはもう何といっても「神鹿」と「子犬」。もう、ひたすら可愛い・・・。運慶の長男湛慶と三男康弁の作風がある意味対照的なのも面白く・・・真面目で繊細な長男と、奔放で思い切りのいい三男といったところでしょうか。そして、展覧会の締めは「十二神将」、全員集合するのは実に42年ぶりなのだそうです。

そんなわけで、ひたすら圧倒された展覧会でした・・・生きているような、なんて言葉にすると何ともありがちですが・・・800年の時を経て、生きている人間以上の眼力に圧倒されるなんて、そうそう得られる経験ではありません。

その後、テレビで運慶の特集番組を見ていると、日頃、美術番組にはまるで興味を示さない8歳の息子がなぜか隣で見入っています。「この眼、生きてる人間みたい!」「これつくった人、まじで腕が確かじゃね?」とな。そりゃ、腕は確かでしょうよ・・・なんてったって天下の運慶様ですから・・・(爆)。
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日本の家

2017-10-03 21:27:29 | 美術
東京国立近代美術館で「日本の家」を見てきました。

戦後日本の住宅建築を検証するという展覧会です。56組・75件の建築を400点を超す模型や図面、写真や映像などで紹介するというもので、予想はしていたものの、時間が足りなくなり、最後の方はついつい急ぎ足に・・・。

この展覧会は時系列でなく、13のテーマ別で構成されています。たしかにこれだけブツが多いと、テーマでくくってもらったほうがいいのかもしれません。展示はほとんどが個人住宅ですが、もっぱら施主との関係で造られるがゆえにラディカルなものとなりやすい、ということを目の当たりにしました。日本の住宅の特徴ともいえる、「狭いこと」から生まれる面白さもあったように思います。どの住宅もついつい見入ってしまうようなものばかりで、見流すということができない展覧会でした。その中でもとりわけツボにハマったものをいくつか・・・。

◯「上原通りの家」家の中に何と斜めの柱が突き出しています。でも、住人はあんまり気にしていなかったらしく・・・。
◯「顔の家」文字通り、顔の家。しかも、京都に。京都人の反応はいかばかりだったか・・・。
◯「ポニー・ガーデン」退職後はポニーと暮らすのが夢だったという施主のための家。模型のお庭にはポニーちゃんも・・・。
◯「ニラハウス」赤瀬川原平氏の自宅。工務店に施行を渋られたため、設計した藤森照信の友人が手伝ったとか。レバニラ、餃子、もつ鍋・・・。
◯「開拓者の家」自分の家は自分で造る。たしかに大昔はそれが当たり前だったのかもしれません。その頃に生まれてなくてよかった・・・(爆)。
◯「住吉の長屋」言わずと知れた超有名作。あらためて模型を見ると、何だかしみじみしてしまいます。
◯「斉藤助教授の家」家の一部が宙に浮いてます(傾斜地に建てたため)。会場には原寸大の模型が!

その他にも面白い家がたくさんで、とても書ききれません・・・。解説にはいろいろと難しいことも書いてありますが、模型や写真を眺めていると、とにかく楽しい。こんな家に住んだら楽しそうだな、とか、こんな家に住んだら大変そうだな(笑)とか、妄想をたくましくしておりました。家ってある意味、夢が形になったものかもしれませんね・・・。でも、毎日住むならやっぱり普通のおうちがラクチンなのかしら・・・(←オチはそこかいっ!)。
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春の川

2017-10-02 21:42:52 | 美術
日本橋三越で「第64回日本伝統工芸展」を見てきました。(この展示は既に終了しています。)

日本伝統工芸展もひさびさの鑑賞です。今年もどうしようかな、と思っていたのですが、日曜美術館の日本伝統工芸展の回を見ていたら、無性に作品を生で見たくなってしまい・・・いそいそと行ってまいりました。

さて、伝統工芸展・・・いつもながらボリューミーな展示ですが、頑張って見てきました。とはいえ、何分、出展数が多いので、受賞作品を中心に見るようになってしまいますが・・・。まずは陶芸のコーナーから。白器「ダイ/台」は、一瞬、ほんとに陶器なの?と思ってしまうような作品。スタイリッシュな造形です。「彩泥線紋大鉢」は器の内部の色彩が素晴しく・・・初夏の暁の空のようです。お次は染色。ここには今回の最大のお目当ての作品が。「春の川」です。日曜美術館にこの作品の作者さんが登場していて、そのお話や仕事の様子がとても魅力的だったんですよね。日々、藍のご機嫌をうかがいながら仕事をされているとか。作品も素晴しく、春の川のきらめきを目の当たりにするようです・・・。「トランプ」もトランプ柄をモチーフにした面白い作品でした。

そして「漆芸」のコーナーへ。「流れる」はタイトルどおり、流れるようなフォルムについつい見入ってしまいます。そして、日曜美術館にも出ていた「川霧」も。作者さんはまだ若手の女性の方でしたね。川霧が煙るような空気が伝わってきて、じっと眺めていると源氏物語の世界に入り込んだような気に。「金工」には「芦辺姥口釜」が。さりげなく描かれた文様が渋いです・・・。「木竹工」の「欅造鉢」の木目の生かし方が見事。「清閑」の軽やかなフォルム、これも丹念な手仕事の集積なのですね・・・。

「諸工芸」のコーナーにはガラス器の「一雫」が。こちらも今回のお目当ての作品です。月の光が揺れる水面を覗き込むような不思議な心地。そして、「人形」のコーナーには「家路」が。冬の道を行く女性の手のひびわれまで再現されていました・・・。


そんなわけで、ひさびさに伝統工芸の世界を堪能して参りました。日頃、都心近くで暮らしていると、自然とは縁遠くなってしまうのですが、伝統工芸展を見ると、日本の自然の有り難さを思い出します。この結びつきはDNAに刻み込まれたものなのでしょうか・・・。
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