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アートネタなど日々のあれこれ

ローレル・キャニオン

2022-05-30 20:51:30 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷でローレル・キャニオン絡みの映画を見てきました(以下、ネタバレ気味です)。

「ローレル・キャニオン 夢のウエストコースト・ロック」はウェストコースト・ロックの聖地、ローレル・キャニオンの歴史を映像とインタビューで振り返ります(この映画館での上映は終了しています)。登場するミュージシャンはザ・バーズ、ママス&パパス、CSN&Y、ドアーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェル…。個人的にはジョニ・ミッチェルの若い頃の姿が見られて嬉しかったです。透明感が半端なく、才能がキラキラしています…。ジム・モリソンのカリスマぶりも凄いし、ママキャスの存在の大きさも。CSN&Yもけっこう詳しく取り上げられていましたね。綺羅星のような才能が奇跡的に集まり、半ば共同体のようにして音楽を生み出していく…まさに魔法のような場所でした。しかし、この映画ではその闇の面も映し出しています。ドラッグ、カルト、いくつかの死…。いつしか魔法は消え失せ、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の誕生とともに、幸せな時は終焉を迎えます…。

「エコー・イン・ザ・キャニオン」はジェイコブ・ディランの(ボブ・ディランの息子)がエグゼクティブ・プロデューサーを務めています。こちらも錚々たるミュージシャンが登場…トム・ペティ、ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、ミシェル・フィリップス、ジャクソン・ブラウン、…ジェイコブ・ディランは聞き手も務めています。レジェンド達が当時のミュージシャンが相互に影響を与え合っていた様子を語ります。とりわけラバーソウル→ペット・サウンズ→サージェント・ペパーズの話が面白かったです。一方で当時のサウンドをアレンジしたトリビュートライブの映像も。ライブにはベックやノラ・ジョーンズ、フィオナ・アップルなどが出演しています。世代の異なるミュージシャンたちを結びつける往年のカリフォルニア・サウンドはいまだ輝きを失っていません…ローレル・キャニオンから生まれた音楽は特別なものだった、ということを思い知らされます。クラプトンが天国とまで言った夢のような場所から生まれた夢のようなサウンドは今の時代にも通じています。

鑑賞後は例によって甘いもの…ということで、近くの「リンツ・ショコラ・カフェ」でソフトクリームショコラをいただいてきました。少々お高めではありますが、濃厚かつなめらかで美味しゅうございました。そろそろ冷たいものが美味しい季節になりましたね…。
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リンダ・ロンシュタット

2022-05-29 01:13:58 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス」を見てきました(この映画館での上映は既に終了しています)。

不肖わたくし、リンダ・ロンシュタットのことは知りませんでした…が、映画館に置いてあったフライヤーでその存在を知り…世の中、素晴らしい歌い手さんはいるけれど、ここまで何でも歌える人というのはあまりいないかもしれません。フォーク、カントリー、ロック、ジャズ、オペラ、マリアッチ…。しかもただ歌うだけではなく、とにかく上手い。ことさら声量や技巧をアピールするタイプではないのですが、歌の表現力、説得力が圧倒的…。彼女の歌を聴いてふと思い出したのが、カレン・カーペンターです。声質はリンダが高め、カレンが低め、と違うのですが、独特の美声と安定感、どんな歌でも自分のものにしてしまう感覚が似ているような気が…(以下、ネタバレします)。

リンダ・ロンシュタットは音楽好きの家庭に生まれ、合唱団に入っていた兄から歌の基本を教わったりもしたようです。彼女にとって歌を歌うことは、鳥が鳴くように自然なことでした。それを可能にする天与の美声…。彼女は最初、バンドでデビューしますが、あまりぱっとせず、ソロで活動することになりました。当初はカントリーやフォークを歌っていましたが、次第にロック色を強め、イーグルスのDesperadoのカバーなどもしています…イーグルスのメンバーって元はリンダのバックバンドだったのですね。そして、「悪いあなた」が全米一位となり、一躍有名になりました。その後、ニューウェイヴにも手を出したりするのですが、80年代にはジャズのスタンダードにも挑みます。映画では彼女が歌うWhat’s newがほんの少し流れるのですが、鳥肌ものでしたよ…。かと思うと、オペラに挑戦したり、自らのルーツであるメキシコの伝統音楽に立ち返ったりもしています。どんなジャンルの曲も見事に歌いこなしていますが、彼女は単に器用なだけではなく、研究熱心でもありました。一方で、自分にも他人にもかなり厳しいタイプで、自分に自信が持てなかったようです…グラミー賞獲得数10、トータルの売上枚数1億超えの歌姫としては信じがたいことではありますが…。

リンダ・ロンシュタットは2011年に病気のため引退しました。家族病ともいえるパーキンソン病でした。家の中で従弟や甥と歌うリンダ…以前のような声は出せず、自分に駄目出しする姿が切なかったです。それでも最後まで彼女が鳥であることには変わりないのでしょう…。
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ふくよかな魔法

2022-05-16 00:50:41 | 美術
Bunkamuraザ・ミュージアムで「ボテロ展 ふくよかな魔法」を見てきました。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。なんなんですかね、チラシを見た瞬間に眼が釘付けになってしまうこのふくよかさ…。それにしてもふくよか、って日本人らしい丸みを帯びた素敵な言葉ですよね…このキャッチを考えた方、素晴らしい…。

2022年はボテロの生誕90年、ということで、展覧会はボテロ本人の監修により構成されています。作品数は70点ほどですが、描かれているものがあれなので、かなりボリューム感がありました。展覧会は初期作品から始まります。「泣く女」はタイトルからしてピカソの作品を彷彿とさせます。静物を描いた作品では花を描いた3点組が実にボリューミーかつ緻密。色鮮やかな「オレンジ」にも目を奪われます。これまでに見たオレンジの絵のなかで一番美味しそう…。信仰の世界を描いた作品はユーモアとアイロニーを同時に感じさせます。聖母も天使も実にふくよか。ラテンアメリカの世界を描いた作品は一見、陽気なようですが、「バルコニーから落ちる女」のように怖ろしい背景があるものも。サーカスを描いた作品はどこかシュールな趣が。巨大かつ愛らしい「象」もいましたね。ボテロは美術史上の主要芸術家へのオマージュ作品も数多く制作しています。マリー・アントワネットもモナ=リザもみーんな、ふくよかさんに。ボテロ曰く「ボリュームを表現することで、芸術的な美を表現することを目指しているのです」、そして「芸術とは同じことであっても、異なる方法で表わす可能性である」のだとか…。

そして、この日はル・シネマで「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」も見てきました。ボテロ本人と家族がその人生を振り返るドキュメンタリーです(以下、ネタバレ気味です)。幸せな絵を描く人が幸せなだけの人生を送ってきたわけではない、ということを思い知らされます…父の死と貧しかった少年時代、抽象画全盛の時期に受けた批判、愛息の死、利き手の一部の喪失、自身の彫刻に爆弾が仕掛けられたテロ…それでも人生を肯定する姿勢が変わることはありませんでした。「芸術は楽しくなきゃ」「偉大な芸術は人生を肯定している」という言葉も残していますが、かといって幸せな絵画ばかり描いていたわけではありません。コロンビアの最悪の時代やアグレイブ刑務所での虐待に関する作品なども制作しています。映画ではスタイルを確立すること、それを貫くことの大切さも語っていました。「成功してもしなくても何も変わらない、私の人生は絵を描くこと」。先月90歳になられたとのことですが、まだまだふくよかな絵を描き続けていただきたいものです…。

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メトロポリタン美術館展/桜

2022-05-06 01:03:18 | 美術
国立新美術館で「メトロポリタン美術館展」を見てきました。

不肖わたくし、むかしむかしメトロポリタン美術館を訪れたことはあるのですが、長い歳月を経てすっかり記憶の彼方に…今となっては自分が何を見たのかすらよく思い出せません(涙)。旅行もままならない今日この頃ですが、何と向こうからやってきてくれるというので、いそいそと行ってまいりました。なんでも、本家本元はただ今、改修中なのだそうです…。

この展覧会ではメトロポリタン美術館の主要作品65点(日本初公開46点)を展示しています。作品数としてはそう多くはないのですが、まさに珠玉のラインナップで、点数以上のボリューム感がありました。名品揃いでどこをピックアップしたらよいのやら、という感じなので、あくまで個人的にツボだったものについて書きます…。展覧会はヨーロッパ絵画部門の作品を時代順に3章構成で紹介しています。1章は「信仰とルネサンス」、フラ・アンジェリコの「キリストの磔刑」から始まります。悲しみに暮れる人々とキリストを取り巻く天使の飛翔感…。ヘラルト・ダーフィットの「エジプト逃避途上の休息」は清楚な小品。聖母の衣装の青が美しい。エル・グレコの「羊飼いの礼拝」も。エル・グレコの作品は相変わらず遠目にもそれと分かるくらいのオーラを放っています…。2章は「絶対主義と啓蒙主義の時代」。カラヴァッジョの「音楽家たち」はやはり強烈。二コラ・プッサンの「足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ」は色鮮やか。端正な画風なのに浮遊感があります。フェルメールの「信仰の寓意」も初公開です。フェルメールらしさとらしからぬ面とが入り混じった不思議な作品。マリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)」(←長っ!)は逆光の中に浮かびあがる女性の姿が何とも印象的な作品。ある意味、今回一番の収穫だったかも…。3章は「革命と人々のための芸術」。ドガの「踊り子たち、ピンクと緑」は油彩の作品。ドガの踊り子というと青い衣装のイメージなのですが、この絵は緑の衣装です。柔らかい緑が綺麗。セザンヌの「ガルダンヌ」は明るい光に包まれて瑞々しい。そしてラストのモネの「睡蓮」。モネが白内障を患ってからの作品です。暗めの色彩で描かれた睡蓮がもはや幽玄…。そんなこんなでとても贅沢な展覧会でした。この展覧会、チラシもかなり凝っていて、なんと見開きに65点全点がプリントされています。こんなん初めて見ましたよ…。

この日は、「ダミアン・ハースト 桜」も見てきました。ダミアン・ハーストの展覧会といってもホルマリン漬けはなく、桜一本勝負でした。どちらを向いても桜・桜・桜…。もはや言葉もない感じですが、ひたすら続く桜を観ていると何だか泣けそうに…私が行ったのは桜が咲く前だったのですが、無性に本物の桜を見たくなりました。会場で流されていたインタビュー映像も秀逸でした(美術館のHPでも見られます)。ダミアン・ハーストの創作の核心に迫るような言葉の数々…。「ベーコンの技法を用いてポロックをやった」「身体を使って絵を描くと説得力が生まれる」などなど。かと思えば「絵画は死んだ、何もかも終わりだ」とも。そして、こんなことも言っていましたね…「美術の歴史に新しいものを加えてその一部になる」「独創性は必要ないと気づいて俺は自由になれた。そもそも独創的になるのは不可能だ」
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