aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

END

2022-06-25 23:59:07 | その他
二子玉川ライズで「END展 死から問うあなたの人生の物語」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。

不肖わたくし、諸事情あって死生学にも関心を持っております。この展覧会は今までにない形で死生についてアプローチしていました。展覧会では、死や人生に関するさまざまな問いと、関連する名作漫画の一コマをセットにして展示していました。取り上げられていた漫画も「天才バカボン」「ランド」「海獣の子供」「コジコジ」「ゴールデンカムイ」「「攻殻機動隊」「ダリアの帯」「釣りキチ三平」「トーマの心臓」「リバーズ・エッジ」などなど多数に及びます。展示は4つのセクションに分かれていましたが、まずは「1魂のゆくえ」から。「生まれ変わりたいですか?」「死後の世界であなたが信じているものは何ですか?」と言った問いが並びます。私はといえば、できれば生まれ変わってみたい気もする…そして、根拠はないけれど輪廻転生ってあるような気がする…。「2終わりの選び方」には「生まれ変わったらまた自分になりたいですか?」という問いが。「ようこそ!わたしの葬儀へ!」(うめ)も面白かったです。世界的IT企業CEOが自身の生前葬をVR空間にプロデュースするというお話ですが…。「3死者とわたし」では韓国MBCが放送したドキュメンタリー番組「Meeting You」の紹介も。幼くして亡くなった娘をCGで再現し、母親がVR上で再会するというものです。「死者とVRで再会できるとしたら会いたいですか」という問いもありましたが、これは相手によりますかね…。「自分の愛する存在の遺体を食べられますか? どのような状態に変換したら食べられると思いますか?」という衝撃的な問いも…これはさすがに考えてしまいます…。「4老いること、生きること」には「「老い」を違う言葉で言い換えるなら?」という問いが。「10分遺言」は15個のスマートフォンで一般の方が自分の死を想定して書いた遺言を再生しています。私だったら子供に何と書き遺すかな…と、ついつい見入ってしまいました。「生きるとは」という問いも…。会場の一角には「あなたの人生のなかで、死に関する印象的なエピソード」「死ぬまでにやりたいこと」を参加者が記入してボードに貼っていくコーナーもありました。想いが溢れていましたね…。

この展覧会は死生の問題について漫画を参照しながら考えるという視点が新鮮でした。会場にも若い方が多かったです。テクノロジーの発展も影響して人々の死に対する考え方もこれから変わっていくのかもしれません。いつか必ず訪れる死がよりニュートラルなものになっていくのかも…。

帰りにちょっと一息…ということで、東急の地下の「サザコーヒー」に寄ってきました。名前は知ってましたが、行くのは初めて。カフェラテを頼みましたが、ラテアートも綺麗で美味しゅうございました…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アネット

2022-06-18 23:42:05 | 映画
ユーロスペースで「アネット」を見てきました。

不肖わたくし、カラックス監督の映画はアレックス3部作とポーラXを見ているのですが、その後、長らくご無沙汰しておりました。今回はなんとスパークスが原案のミュージカルが映画になるという…カラックスとスパークスって意外な取り合わせのような気もしますが、なんでもカラックスは10代の頃から、スパークスのファンだったのだそうです…。

この映画についてはなるべくネタバレにならないように書きたいと思いますが…この映画はオープニングのシーンからしてユニークです。「それではどうぞ息すらもとめてごらんください」という言葉に続き物語が始まりますが、さすがに息を止めて見るのは無理だったものの、息をするのを忘れそうな瞬間が何度となくありました。悲劇的な死を歌う国際的なソプラノ歌手アンと挑発的な人気スタンダップ・コメディアンのヘンリー、意外なビッグカップルに娘アネットが誕生し、幸せな結婚生活が続くかと思ったものの…次第にダークファンタジーの世界へと飲み込まれていきます。この映画はほぼ全ての台詞が歌われるミュージカルになっていますが、驚いたことに歌は撮影現場で歌っていたそうです…。アンを演じたマリオン・コティヤールの美しさ、繊細な歌声も素晴らしい。ヘンリーを演じるのはアダム・ドライバーですが、堕ちていく男の狂気を怪演。ベイビーアネットは何とパペット。歌はLYCに所属する少女ということですが、透明で儚げな響きの声。常に猿のぬいぐるみを手放さないベイビーアネットがある瞬間に生身の少女に入れ替わるのですが、この瞬間が怖かった…そういえばこの映画、カラックスの娘さんに捧げられた映画なんですね…。

カラックス監督の映像はさすがに美しく、まさにマジックを見るようでした。特に夜のシーンの美しさは唯一無二…街の光、森の闇。そして、サスペンスのようなファンタジーのような寓話のようなダークな世界観に音楽がハマっていました。“So may we start”は耳について離れない、“We Love Each Other So Much”のタイトルとは裏腹の孤独な響き…。「スパークス・ブラザーズ」と「アネット」、両方を観ることで見えてきたものはたしかにあったような…この二作は結局、合わせ鏡のようなものだったのかもしれません…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スパークス・ブラザーズ

2022-06-11 10:02:40 | 映画
シネクイントで「スパークス・ブラザーズ」を見てきました(この映画館での上映は終了しています)。

不肖わたくし、以前、スパークスのアルバムを聴いた記憶があるにはあるのですが、その後、すっかりご無沙汰しておりました…が、なんと今になってドキュメンタリーが公開…やはりアネット絡みなのかしらん、とか思いつつもいそいそと行ってまいりました。約140分という比較的長尺の映画ですが、ウィットに富んでいて、かつテンポもよく、最後のオチまで楽しめました。それもそのはず、監督のエドガー・ライトはスパークスの熱狂的ファンなのだそうです…(以下、ネタバレ気味です)。

スパークスは1970年にロンとラッセルのメイル兄弟によって結成され…ということは、50年を超えるキャリアということになるわけです。こんな生き馬の目を抜くような業界で半世紀生き残るって、いったいどんな音楽を…と思いますが、彼らは誰にも真似できないような変な(?)音楽をやり続けていたのでした。キャリアの始まりは兄弟が1968年にハーフネルソンというバンドを結成、トッド・ラングレンの目に留まったことでした。映画にはトッド・ラングレン本人も出ていて、当時のことを詳しく話しています。その後、バンド名をスパークスに改名しましたが、アルバムがイギリスで注目され、拠点をイギリスに移して活動することになりました。曲も歌詞も変ですが、ラッセルのボーカルスタイルもかなり変わっています。声だけ出演していたビョークが「あれはロックじゃない、憑依よ」と言っていたのには思わず笑ってしまいました。派手なルックスでイケメンのラッセルと、無表情でキーボードを奏でるチョビ髭のロンの組み合わせはビジュアル的にもインパクトがあり…ほんまに兄弟なんかい、と思わず突っ込みたくなりますが、ずっと兄弟仲はよかったようです。彼らの父親が早くに亡くなった影響もあるのかもしれません…。彼らは映画製作にも関わったりしますが、ジャック・タチやティム・バートンとのコラボ企画が立ち消えになるなど、実現には至りませんでした。音楽的には長らく浮き沈みを繰り返していましたが、不遇の時期もけっこう長く、その間は貯金で食いつないでいたようです…やっぱり貯金、大事です…。長きにわたって「異常だが、すばらしい」音楽を淡々とつくり、常に前進を続けてきた彼らが出したアルバムは25枚。医療技術が進化したらあと200~300枚は出したいとおっしゃっています…。

さて、こうなると俄然「アネット」の方も気になってきますが、そのうちにと思っている間になんだか終映が近づきつつあるような…はて、どうしよう…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Take on me

2022-06-08 01:36:22 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「a-ha the movie」を見てきました。

80年代ポップスというと、ついついTake on meを思い出してしまうというのは、きっと私だけではありますまい…あの印象的なイントロとサビの突き抜けるようなファルセットは今でも鮮やかに耳によみがえってきます。この映画ではa-haの3人の出会いからバンド結成と解散、再結成に至る軌跡を追っていきます(以下、ネタバレします)。

1982年、ポール(g)、マグネ(key)、モートン(vo)の3人がノルウェーのオスロでa-haを結成しました。ポールとマグネは幼なじみですが、バンドの主導権はもっぱらポールが握っていたようで、マグネは元々ギターを希望していたのをポールに譲り、キーボードに転向しました。モートンはピアノから音楽に入りましたが、ある日、自分が歌えるということに気づき、ボーカルに転向、後から二人に合流しました。ポールがロック志向だったこともあって、3人は83年にイギリスにわたり、84年にTake on meでデビューしたもののぱっとせず、翌年にアレンジし直して再リリースすると今度は大ヒットになりました。実はこの曲の元々のサビは違うメロディーだったのですが、クイーンに関係していた人からファルセットを使えば売れるから、と言われてメロディーを差し替えたりもしていたようです。彼らのルックスが魅力的だったこともあってA-haはアイドル的な扱いを受けるようになり、次第に当初の志向とは違う方向へ向かいはじめ…いつしか3人の間に軋轢も生じるようになりました。音楽的なこだわりと野心の強いポールに他の2人がついていけなくなったという感じですが…。また、曲のクレジットを誰にするか、という問題もありました。曲の骨組みを創った人だけが作曲者になるのか、曲のイメージを決定づけるようなイントロやリフを作っても作曲者とはみなされないのか、なかなか根の深い問題ではあります…。一時期、バンド活動を休止し、3人がそれぞれのソロ活動に専念したこともありますが、2010年には解散します…が、2015年には再結成し、現在に至っています…。

結成から40年、性格も志向も違う3人を結びつけてきたものは何だったのか…友情ではない、音楽を通じた絆、と言い切っています。そんな3人の絆の象徴がtake on meなのでしょう…この映画では、Take on meがバージョンを変えて何度も流れます。歳を重ねた彼らがアコースティックで演奏するTake on meの美しかったこと…やはり運命の曲に運命の声だったのでしょう…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スージーQ

2022-06-03 23:51:24 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「スージーQ」を見ました(この映画館での上映は終了しています)。

不肖わたくし、スージー・クアトロのことは初めて知りました。女性のためのロックが存在しなかった70年代に道を切り拓いたサディスティック・ロックの女王。この映画は彼女の波乱万丈の半生を追っていきます(以下、ネタバレ気味です)。

スージー・クアトロはデトロイトの音楽一家に生まれ育ちました。姉たちとガールズバンドを結成しましたが、妹の彼女に割り当てられた楽器はベース。ですが、猛練習して着実に腕を上げていきました。バンドは主に国内で活動していましたが、たまたまジェフ・ベックのレコーディングのためにデトロイトに来ていた音楽プロデューサーのミッキー・モストの目に留まり、スージーは単身、渡英します。しかし、このことが抜け駆けとみなされ、家族との確執が生まれます。ソロに転向した後のデビューシングルはぱっとしなかったのですが、ハードロック路線にイメージチェンジすると人気に火がつきはじめます。73年の「キャン・ザ・キャン」はヨーロッパとオーストラリアで1位を獲得、その後もイギリスを中心にヒットが続きます。小柄で可愛らしい彼女が、レザースーツでバシッと決めて、ベースをブンブン鳴らしながら歌う姿が本当にかっこいいんですよ…女性が弾くベースってしなやかな感じになることが多いかと思いますが、彼女の場合はマジでブイブイいわせてます…骨太のグルーヴ。女が惚れるタイプやもしれません。スージーのことを崇拝しているジョーン・ジェットも登場していますが、「彼女は不可欠な存在」とまで言っていましたね…。スージーのことを一言で言うなら、まさに「いさぎよい」。歌いたいことを歌い、叫びたいことを叫び…男にもドラッグにもハマらず、女だからとかそんなの関係ないと言って、毅然と生きる…。

才能、努力、野心、そして行動力…成功するための条件を兼ね備えていた彼女ですが、家族との確執には長年、苦しんでいたようです。音楽一家というのは怖い面もありますよね…。後年になって和解していますが、彼女の中には傷として残っているようです。もし、少女だった頃の自分に言うことがあるとしたら、生き急がないで、と言う姿が切ない…。そんな彼女も今となっては、少々大きくなって息子さんとロックしていますが、その姿がまたまたかっこいい。永遠に女が憧れるロッカーでい続けてほしいものです…そして、今日はスージーの72回目の誕生日でしたね!
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(un) real utopia

2022-06-02 01:08:05 | 美術
東京都写真美術館で「(un) real utopia 本城直季」を見てきました(この展覧会は既に終了しています)。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。ずっと気になっていた写真家さんだったのですが、まとめて作品を見る機会がなかなかなく…今回が初の大規模個展ということで、未公開作を含む約200点が展示されていました。Introductionに続き、木村伊兵衛写真賞を受賞したsmall planetのシリーズが。東京の風景が精巧なミニチュアのように見えます…本当に写真?という感じで、これはどうやって撮っているのだろうと不思議に思いますが、大判カメラでアオリという手法を使って撮っているそうです。Kenyaのシリーズは一番好きだったかも…サバンナを撮った作品ですが、草原の鮮やかな緑にキリンやフラミンゴといった動物たちが愛らしい。LIGHT HOUSEのシリーズは長時間露光で路地裏を撮っていますが、異色、かつ不思議なリアリティがありました。tohoku311は東日本大震災の3か月後の東北を撮ったシリーズですが、やはり見るのが辛い…。Industryは工場地帯を撮ったシリーズですが、どこか異界の光景のよう。plastic natureのシリーズは森林や山などの自然を撮っていますが、もはや絵画にすら見えてきます。play roomはビーチやスキー場を撮ったシリーズですが、風光明媚な地で遊ぶ人々を見ているとこちらも幸せな気分に…。

本城さんは東京で生まれ育ちましたが、東京という都市に不思議な違和感を持ち続けていたそうです。そして、自分の住んでいる場所を知りたい、俯瞰したいという想いが写真を撮り続ける動機であり、原動力であると。高層から下界を見下ろした時の言いようのない心の動きは誰しも感じたことはあると思います…そして、本城さんの眼は、神の眼とも鳥の眼とも違う独特の眼なのでしょう…その眼を通して世界を見ると、本当にこの星に生まれてよかったな、と不思議と思えてきます。(un) real utopiaに…。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする