aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

原点を、永遠に。

2018-05-28 18:20:09 | 美術
東京都写真美術館で展覧会のはしごをしてきました(これらの展示は既に終了しています)。

最初に見たのは「『光画』と新興写真」。不肖わたくし、『光画』のことも新興写真のことも何も知らなかったのですが、知り合いの方から招待券をいただき、行ってまいりました。新興写真というのは、ドイツの「新即物主義」やシュルレアリスムの影響を受けて、カメラやレンズによる機械性を生かし、写真でしかできない表現を目指した写真、なのだそうです。最初の章では同時代の海外の写真家の作品が展示されていたのですが、のっけからヴァルダー・ペーターハンスの「死んだウサギ」に少々驚き・・・。その後も、シュールな作品が続きます。続く日本人の作品の章ではやはり木村伊兵衛の作品についつい目がいってしまいます。なぜだろう・・・。野島康三の女の写真もインパクトがありました。メインビジュアルになっていた木村専一の手の写真もかっこいい・・・鑑賞券をくれた方は写真に詳しい方だったのですが、この写真の半分がコダックで半分がニコン(だったかな?)みたいなことを言っていました。新興写真は、当時全盛だったピクトリアリズム(絵画写真主義)に対抗する動きだったようですが、今見ても不思議なくらい、古さを感じさせないというか・・・こういうクールな構成美って意外に古びないのかもしれませんね。写真にしかできないこと、を目指したこのムーブメントはわずかな期間で終焉を迎えてしまいましたが、その後の写真にも影響を与え続けているそうです。

続いて観たのが「写真発祥の地の原風景/長崎」です。こちらも招待券をいただいて、見てきました。江戸、明治、大正期の日本の写真をまとめて見たのなんて初めてです。この展覧会では当時の長崎のパノラマ写真や、風俗を撮った写真など、数多く展示されていました。出島を撮った写真とかもありましたね。リアル武士が映っている写真も何だか不思議な感じ・・・。セピアの世界を堪能いたしました。そういえばこの展覧会、作品リストも長崎全図が透かしで印刷されているという、凝ったつくりになっていて、ちょっとびっくり・・・。

最後に見たのが「原点を、永遠に。-2018-」です。こちらの展覧会は、清里フォトアートミュージアムの所蔵する作品の中から、海外の著名な写真家35人、戦後の日本を代表する写真家31人、世界から公募したうち29人の、35歳以下の時の写真409点で構成されていて、質量ともに大変充実した展覧会でした。これらを入場料無料で見られるとは、なんて太っ腹なんでしょう・・・ありがたいことです。この展覧会は、前期は年代順、後期は写真家名のアルファベット順(!)で展示されていました。私は後期に行き、前期が年代順ならば、普通、後期はエリア別とかじゃないのかなぁ?と心のなかで突っ込みを入れておりましたが、この大家と新進気鋭の方が入り乱れるランダム感が狙いだったのかもしれませんね。展示作品には超有名作もあれば、この人がこんな写真撮ってたんだ、というのもあり・・・でも、おおかた、U35でスタイルは確立されていたんだな、ということがわかりました。今まで、そんなに興味を持っていなかったけれど、この展覧会でその魅力に目覚めたという写真家さんも幾人か。たくさんの写真をみるうちに、頭の中で勝手に作品を①戦地系②日常系③芸術系に、分類していましたが、あらためて写真という媒体の豊かさ、可能性を実感いたしました。この展覧会ではパンフレットを2種いただたいたのですが、片方には全員の作品が、それなりのサイズ掲載されていて、これけっこう保存版かも、という感じでした。本当に至れり尽くせりの太っ腹ぶりです・・・。

そんなわけで、三つの展覧会で写真の世界をお腹いっぱい堪能してまいりました。半日で一年ぶんくらいの写真を見たような心持です。しかも無料だったし。招待券をくださった方、東京都写真美術館さん、清里フォトアートミュージアムさん、ありがとう・・・。
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生々流転

2018-05-27 01:31:14 | 美術
東京国立近代美術館で「横山大観展」を見てきました。

大観の作品はこれまで何度となく目にしてきたので、どうしようかな・・・と思いましたが、
「生々流転」のフルバージョンが見られるというのに惹かれて行ってまいりました。諸事情により会期終盤に行ったのですが、平日の開館直後に着いたにもかかわらず、中に入ると既に芋の子洗い状態。おかげで人垣の後ろからひょいひょい覗き込むという鑑賞スタイルに・・・。ただ、展示替えの関係で、思っていたほどには作品の数は多くなく、また、サイズが大きめの作品が多いので、意外にさくさく見られたという感じです。展示は明治~大正~昭和、と年代順になっていました。明治の章では「ぶらぶら美術館」で紹介されていた「迷児」も。この作品は由来を知ってみると面白味が増しますね。「白衣観音」も綺麗。「美の巨人たち」に出ていた「流灯」も色鮮やか。「山路」は素人目にもタッチが面白い。大正の章では「荒川絵巻」が出ていましたが、行列の隙間からの垣間見になってしまいました。「山茶花と栗鼠」の栗鼠がなんともかわいらしく、「秋色」は鹿のお尻がなんともキュート(笑)。昭和の章ではやはり「夜桜」「紅葉」の並びが圧巻でした。「夕顔」も一見、地味だけれど妖艶な美しさ。近くにいたお客さんの感嘆の声が聞こえました。個人的に一番惹かれたのが「南溟の夜」。はるかに響く潮の音が聴こえてきそう・・・。

さて、肝心の「生々流転」ですが・・・ここまで来るとさすがに人混みもばらけていて、待たずに見ることができました。一本の筆が生み出す、白と黒とが川となり、山となり、海となり、人となり、龍となり・・・もはや、言葉がありません。全部通して見られて本当によかった・・・。

会場では、「大観」の言葉もいくつか紹介されていました。一番、ツボに入ったのが、「自分はまずい絵ばかり描いてきたが、世界一の絵を描きたいと思っている」。前段で下げといて、後段であくまで志高く、という按配が絶妙です。また、大観の人となりを紹介した映像も流されていたのですが、これも短いながら、けっこう面白かったです。大観が「自分は火のような男だ」と言っていたとか、けっこうな呑兵衛だったとか、さもありなん、という感じです(笑)。「大観」の名の由来も初めて知りました。そんなんでええんかい・・・(爆)。

この日はひさびさに工芸館の方にも寄ってきました。「名工の明治」という展覧会ですが、ここでは鈴木長吉の「十二の鷹」フルバージョンが見られるらしく・・・「ぶらぶら美術館」で見て、ぜひ実物を見たいと思ったのです。これはやっぱり、一見の価値があります・・・眼光鋭くガン飛ばす十二の鷹たち。えらい迫力です。その他の作品も粒ぞろいです。徳田八十吉氏の鉢も宇宙のような色彩、志村ふくみさんの「七夕」の淡々とした美しさ、江里佐代子さんの飾箱も精緻。横山大観の展覧会のチケットを持っていると無料で見られるので、これからの方がいらっしゃいましたら、ぜひ・・・(あと一日しかないけど)。ちなみに工芸館は、2年後をめどに、金沢に移転するようです。

帰りは千鳥ヶ淵緑道をぶらぶら。緑が噎せかえるようです・・・。そうこうしているうちに例によって甘いものが欲しくなり、東西線にちょっと乗って、飯田橋の「紀の善」に寄ってきました。ここの抹茶ババロアを一度食べてみたかったんですよね。イートインで、最初にお茶うけのお煎餅が出てきたのですが、これもけっこうおいしかった。そして抹茶ババロアは・・・サイドに生クリームとあんこを従えるという、ボリューミーな構成です。抹茶がかなり濃厚なので、生クリームと一緒に食べ、さらにチェイサーであんこを食べるくらいでちょうどいいんですよね。というわけで、一度食べたら忘れらない抹茶ババロアでした。すっかり満腹・・・。
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~ing

2018-05-26 00:00:56 | 美術
資生堂ギャラリーで「蓮沼執太 ~ing」を見てきました。

蓮沼執太さんもこのところ興味を持っているアーティストさんです。今回の展覧会は展示作品を構成(作曲)してひとつの調和をつくり出し、そして、空間に存在するすべての音をまとめたひとつの音楽にする試みだとか・・・。蓮沼さんにとって、展覧会は、「空間の中で聴覚と視覚の接点を見つけていく行為」なのだそうです。

ギャラリーへと続く階段を下っていくと、途中にそっとマイクが置いてあります。このマイクを転がして展覧会場の周辺を歩いて音を採集したとか。上を見あげると街なかでのパフォーマンスの映像が流れています。ギャラリーに入ると、何やら金色に光る床が広がっています。“Thing~Being”は、楽器の製造過程できたという金属片がたくさん床に転がっていて、それを踏んで歩くときらきらした金属音がするという作品。これからいらっしゃる方は、なるべくヒールのない靴でいらっしゃることをおすすめします・・・。片隅で流されていた映像作品、“Change”は環境音とその位置情報からグーグルでイメージ検索して選んだ画像を組み合わせたという作品。音と映像に関係があるのかないのか、よく分からない感じが何とも言えません。お隣の部屋には段ボールを積み上げた作品が。中からパコパコという楽しげな音が聞こえてきます。これは蓮沼さんが段ボールを使って演奏した音楽なのだそうです。その隣には木とスピーカーが組み合わされた“Tree with background music”という作品が。スピーカーから流れる音の振動で木の葉が揺れるという現象を起こすことで、音楽を可視化するのだそうです。たしかにスピーカーに流れる音に反応して木の葉がさやさや揺れています。時折、低音がドンとなると、木の葉もけっこう揺れていて、あぁ、本当に音の振動ってモノを揺らすんだなぁ・・・と、実感しました。

この展覧会でさまざまな音を聞く体験をしたことで、普段、聞き流していた「身の周りの音」にあらためて耳を開かされる思いがさせられました。ギャラリーを後にして地上に出ると、銀座のサウンドスケープが、これまでとは違って聞こえてきたような気が。なかなかに不思議な体験でございました・・・。
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秘密の花園

2018-05-25 08:08:41 | 美術
三菱一号館美術館で「ルドン―秘密の花園」を見てきました(この展示は既に終了しています)。

こちらも開催を知った時から楽しみにしていた展覧会です。ルドンって、もしかしたら、一番好きな画家かも、というくらいなので。今回は食堂の装飾画がまとまってやってくるらしい・・・。

展示はまず、ルドンの師匠、ブレスダンやコローの影響を受けた作品から。ここにブレスダン自身の「善きサマリア人」が展示されていたのですが、思わず見入ってしまいました。ルドンの「スペインにて」とか、どことなく面影がありそうです。「人間と樹木」の章では「キャリバンの眠り」と「エジプトの逃避」の並びがとりわけ異彩を放っておりました。その次は「植物学者 アルマン・クラヴォー」の章。自殺したクラヴォ―に捧げた版画集「夢想」ですが、ルドンにとって本当に大切な友人だった、ということがひしひしと伝わってきます。そして「ドムシー男爵の食堂装飾」。黄色い花々がまばゆい。その中で「グラン・ブーケ」の青が文字通り、異色。「神秘的な対話」は天上の光景のようです。そして、「黒」の作品のシリーズに引き続き、「蝶の夢、草花の無意識、水の眠り」の章。色彩の爆発です。このあたりの作品が本当に好きなんですよ・・・。「眼をとじて」にもひさびさに再会できて、嬉しさのあまり、しばし立ち尽くしてしまいました。あの吸い込まれそうなスカイブルー。「蝶」も異界の光景のよう。その後に花のシリーズが続きます。ここには「日本風の花瓶」が。日本の影響も受けていたんですかね・・・。最後は「装飾プロジェクト」。ルドン作の屏風やタペストリーなどが展示されていました。こういう仕事もしていたのですね・・・。

そんなわけでひさびさにルドンの世界に浸ってまいりました。そして、ずいぶん昔に国立西洋美術館で見たルドンの展覧会のことを懐かしく思い出しました。あれから何年もたち、その間、いくつもの展覧会を見たけれど、ルドンのことは相変わらず好きだなぁ・・・と。何度見ても、不思議な魅力が消え去ることのない作品たちです・・・。
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酒と涙とジキルとハイド

2018-05-23 22:37:01 | 舞台
東京芸術劇場で「酒と涙とジキルとハイド」を見てきました。

例によって鑑賞前に腹ごしらえ・・・ということで、今回は東武の中にある「キッチン・グリップ」へ。ペスカトーレを注文しましたが、まあ、海の幸がゴロゴロで美味しゅうございました。サラダのドレッシングもおいしかったな・・・。

さて、お腹もいっぱいになったところで劇場へ。三谷さんの舞台を見るのもひさしぶり。ネタバレするとあれなので、詳しいことは書きませんが、まぁ、しょーもない笑いを満喫しました。役者さんも演奏者も素晴らしかったです。とりわけ優香さんが魅力的だったな~。悪女(?)っぷりが、おみごと!愛之助さんの情けない男、藤井隆さんのワイルド(?)な男、迫田さんの曲者・・・もまた、いかにもな感じで。音楽もとても効果的でした。劇中、「自分の殻を破る」ことがいかに困難か、が何度となく繰り返されるのですが、普段、自己抑制することが多いまじめな人ほど、この話を見て身につまされることがあるのかな~、とかふと思ったりも・・・。

そんなわけで、105分間、浮世の憂さを忘れて笑いこけてました。このところいろいろ大変だったことが吹っ飛びましたよ・・・。三谷さん、ありがとう・・・。

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至上の印象派

2018-05-22 23:58:08 | 美術
国立新美術館で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を見てきました(この展示は既に終了しています)。

「絵画史上、最強の美少女(センター)」というキャッチコピーは、何だかなぁ・・・と思ったものの(笑)、やっぱりあの娘を拝みたい、という一心で行ってまいりました。至上の印象派、という看板に名前負けしない、珠玉のコレクションでございました。単に「綺麗」なだけでは済まされない、印象派の奥深さを見たように思います・・・。

私もおそらく多くのアート好きの方と同じく、印象派の作品から美術鑑賞を始めましたが、そのころ憧れた作品の数々を目の当たりにしました。モネの「陽を浴びるウォータルー橋」、ルノワールの「泉」、セザンヌの「赤いチョッキの少年」・・・。中でもとりわけ、ゴッホ部屋が印象深かったです。「花咲くマロニエの枝」の喜び、「古い塔」の不気味、「日没を背に種まく人」の光・・・。そして、「最強の美少女」、ルノワールの描いたイレーヌ嬢はやはり美しかった。まさに透けるような白い肌、あの肌の質感はやはり生で見ないと味わえないものですね。フェルメールの青いターバンの少女と並んで、絵画史上の二大美少女だわ・・・と、ひたすら見とれておりました。最後の部屋のモネの「睡蓮の池、緑の反映」も圧巻でした。噎せかえるような緑の匂いが漂ってくるようでした・・・。

会場では関連映像の上映もしていたので、そちらも見てきました。何でもビュールレ氏は、もともと美術史を学んでいたのだが、その後、銀行家の娘と結婚し、武器の輸出で巨利を得て、その富を元にコレクションを築いたのだとか。やはり元となる美術のベースがあったのですね。同じ人間が一方で武器を売り、一方で類いまれな美のコレクションを築くという・・・。そういえば「日曜美術館」の「イレーヌ」の回では、イレーヌ嬢の子どもと孫がナチスの手によって命を落としたという話がありました。そのナチスに武器を売っていたのがビュールレ氏で、ビュールレ氏はイレーヌ嬢から直接この絵を買ったというのは恐ろしいまでの運命の皮肉です。そして、イレーヌ嬢自身はこの肖像画を気に入っていなかったというから、ますます複雑です。こんなに素晴らしい絵なのに・・・。でも、この絵の少女は恵まれた境遇にいるにもかかわらず、どこか物憂げで、これから先の自分の運命を半ば予感しているような気がしないでもなく・・・絵画の神秘です・・・。
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新しい世界へ

2018-05-21 23:34:35 | 音楽
今年もまたラ・フォル・ジュルネTokyoに行ってきました。

諸事情により、レポートとしては完全に遅きに失しているのですが、自分の心覚えのために・・・。今回選んだ演目は二つ。一つはドミトリー・リス指揮&エカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団のグレチャニノフ「ミサ・エキュメニカ」。もう一つはシエナ・ウィンド・オーケストラ&狭間美帆の「大航海時代」&「処女航海」です。今年のLFJのテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」だそうですが、果たしてどんなサウンドが聞けるのやら・・・。

今回からLFJが有楽町と池袋の二会場で行われるようになりましたが、この二演目は池袋会場の公演でした。不肖わたくし、グレチャニノフのこともミサ・エキュメニカのことも何も知らなかったのですが、パイプオルガンがガンガン鳴っちゃうミサ曲という惹句につられて行ってまいりました。芸劇のパイプオルガンの音を聞きたかったし、曲もネットで試聴してみたら好きな感じだったし、LFJは合唱系に外れがないし・・・。冒頭、地鳴りのような合唱とオルガンの響きが強烈でした・・・後の展開は思ったよりはオーソドックスな感じでしたが。ロシアならではの底深い合唱を堪能いたしました。ソリストのソプラノの方もとても綺麗な声をしていたな・・・。最後のアニュス・デイは透明な響きがまるで天上の歌のようでした。

その後、東京芸術劇場の中にある「カフェ・ベル・オーブ」でランチを。牛すじカレーとフルーツビールを頼みました。カレーは牛すじがトロトロ、フルーツビールもフルーティーで、おいしゅうございました。音楽を聴く合間に昼間っからビール、なんて贅沢ができるのは、実にありがたいことではあります。

次は、狭間美帆&シエナ・ウィンド・オーケストラの公演です。狭間さんも、このところ興味を持っている作編曲家さんです。「大航海時代」はタイトル通りの雄大な曲。ハンコック/狭間編の「処女航海」は、あらためてハンコックの曲の偉大さを伝えてくれるようなアレンジ。曲の原型をちゃんと残しつつも、ところどころ斬新な響きを聴かせてくれました。狭間さんの編曲ってすごく魅力的ですよね・・・次はどうなるの?次はどうなるの?とわくわくしながら聞いてしまいます。シエナの演奏も素晴らしかったし。それにしても、ハンコックの「処女航海」をまたちゃんと聴きなおそう・・・としみじみ思いました。

そんなわけで、ほろ酔い加減で楽しんで参りました。いい音楽にいいお酒、とても幸せなことでございます・・・。
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上野の晩春

2018-05-13 13:05:39 | 美術
晩春の上野で展覧会のはしごをしてきました(今となってはもう初夏ですが・・・)。

まず向かったのは国立西洋美術館のプラド美術館展。「ベラスケス7点が一挙来日、これは事件です」という例の展覧会です。たしかにこれまでベラスケスをまとめて見た記憶ってないかも・・・。あのフェリペ4世の肖像もありましたよ。みごとに受け口なその姿。でも、その率直な描きっぷりがどうやら気に入られたらしい。「バリェーカスの少年」の表情の描き方も生々しい。「東方三博士の礼拝」のキリスト像は息子じゃなくて娘がモデルだったとか、初めて知る小ネタも。そして、メインビジュアルにもなっている「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」。王子6歳の時の姿だそうですが、凛々しくも賢げなその姿。うちの子の6歳の時とはえらい違いだわ・・・と思いつつ解説を読んでいたら、16歳で亡くなってしまったとか。うちの子は長生きにするに違いない・・・。ベラスケス以外にも印象的な作品がいくつも。心惹かれたのがスルバランの「磔刑のキリスト画家」。静謐なのにドラマティック。クロード・ロランの「聖セラビアの埋葬のある風景」は世界の果てのような。ムリーリョの「小鳥のいる聖家族」もチャーミング。それにしてもこの時代のスペイン絵画って濃い光と死の気配をどこかに感じます・・・。

続いて向かったのが、東京国立博物館表慶館の「アラビアの道」。この展覧会はノーマークだったのですが、ネット上の評判がなかなかによろしかったので、行ってみることにしました。サウジアラビアの文物をまとめて見る機会なんてなかなかないですし。会期延長してくれたのもありがたかったです。時折、地味といえば地味なんだけど、でも何だかいいオーラが流れているような気がする・・・という展覧会に出くわすことがありますが、これもそういう展覧会の一つだったような気がします。何だか、現地の博物館を訪れているような心持ちになりました。高校時代に世界史の授業で出くわしてから、長いことお目にかかっていなかった言葉の数々にもひさびさに再会。神殿の扉とか、カーテンとかゴージャスでした。初代国王のコーランや剣も華麗。文字の書かれた石碑の数々もまた美しく・・・アラビア文字ってこんなに美しかったのですね。サウジアラビアなんて普段縁遠い土地ですが、その歴史の長さ深さを垣間見ることができました。占いの先生によると私の前世はノマド(男)だったらしいのですが、記憶がよみがえるようなよみがえらないような・・・。

最後が東博の「名作誕生―つながる日本美術」。「国華」の創刊130周年を記念した展覧会です。作品や作家同士、共通するモチーフなどの「つながり」に着目したという展示ですが、作品のラインアップは実に贅沢で、国宝・重文がぞろぞろ・・・。再見の作品も多かったのですが、あらためて作品を見直す視点を与えてくれました。私は前期に伺ったのですが、国宝の「普賢菩薩像」、雪舟と呂紀と狩野元信の「四季花鳥図」の揃い踏みなど、みどころも沢山。近代のものでは、北斎の「くだんうしがふち」と劉生の「道路と土手と塀」、伝顔輝「寒山拾得像」と劉生の「野童女」の比較なども面白かったです。そして、今回の展覧会のハイライトとでもいうべきだったのが、中国絵画の文正「鳴鶴図」・陳伯冲「松上双鶴図」と探幽「波濤飛鶴図」・若冲の「白鶴図」との比較。この作品がこうなってああなったのね・・・(←何のこっちゃ)ということを目の当たりにさせられました。この展覧会の裏テーマは「模倣と創造」でもあるのかもしれませんが、まさに「模倣は創造にもなり得る」ということを実証してくれました。そういえば、この展覧会を特集した号外である教授の「天才の創造という考え方は魅力的ですが、やはり近代の神話だと思います」という言葉が紹介されていました。ただ、若冲の「白鶴図」にしても元ネタはあれだったとしても、若冲以外の人が「模倣」してもああはならなかったはずなので・・・それを思うと、天才って何なんだろ、と、しみじみ考えてしまいました。私めのような盆栽じゃなくて凡才は、天才と呼ばれる人々の才能と努力の成果をひたすら堪能するのみなのですが・・・。

そんなわけで、上野の展覧会のはしごを楽しんで参りました。今年の上野は秋もけっこう大変なことになりそうです。ますます楽しみ・・・。
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