AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

ハエハエカカカ、バッハッハ

2018年07月18日 | しねしねシネマ
このうだる暑さの三連休はこれといったイベントはなかったが、一本の映画を観るために今まで一度も行ったことのない十三くんだりまで赴いた。

作品は『LIBERATION DAY ~北朝鮮をロックした日~』。

数ヶ月前にこの映画の上映の知らせを聞いた瞬間「絶対観たい!」と思ったので、トートバック付きの前売り券はすでにネットで入手していた。


タイトルからしてカルト的な雰囲気を醸すこの作品の内容とは、やはりカルト的な人気を誇るスロヴェニア(旧ユーゴスラビア)出身のインダストリアルバンド、ライバッハが北朝鮮から招致され、日本の植民地支配から解放されたことを祝う「祖国解放記念日」に、大観衆の前でライブを敢行するというその様子に迫ったドキュメンタリー映画。

監督はノルウェー出身のライバッハのファンでもあるモルテン・トローヴィック。
PV制作でライバッハとも仕事をしており、以前より北朝鮮との文化交流を積極的に行っていてコネがあったらしく、まぁ北朝鮮側がライバッハを招致したというより、この監督が面白いものが撮れるかもと北朝鮮側に話を持ちかけたのではないだろうかと見ている。
いずれにせよ、かなりクレイジーな監督である。

ライバッハに関しては、まぁ私正直かなりにわか。
以前にも言及したが、ライバッハの存在を知ったのは映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のサントラに収録されてた「GOD IS GOD」という曲がメチャメチャ気にいったのがキッカケ。
それからモービッド・エンジェルの『DOMINATION』のボートラで、ライバッハがミックスを手掛けた楽曲が2曲あったりする。
ただ、彼らのフルレンスを1枚買ったんだが、これがチンプンカンプンで(しかもどっかいった)それから彼らの作品には一切手を出していない。




電車を3回乗り換え、初めて十三の地に降り立った。


若者の姿はほとんど見られず、近所のオッサンオバハン連中が通りを闊歩しており、昼間っから酒を飲んでいるという感じのいかにも大阪のダウンタウンといったところ。

関西では第七藝術劇場という映画館でのみ本作が上映されていた。
ミニシアター系の映画館はだいたいわかりにくい所にあってなかなか見つけられないものだが、ここはすぐにわかった。

このかわいらしいピンク色のピンが目印だった。
    


第七藝術劇場(通称ナナゲイ)は、内部もとてもとてもアンティークでおしゃれな映画館だった。



ミニシアター系の映画館は老朽化や経営難でどんどんなくなっていく近年、こういった映画館がこんな十三くんだりにいまだ残っているのは本当に貴重。
オーナーさんが本当に映画が好きでこだわりを持って経営しているのがよくわかる。

    


場内に入ると意外と客が多くてビックリした。
隣りに座ってたおっちゃんとか、後ろのメタボリックなおばちゃん2人組とか、どう見てもライバッハとか聴いてなさそうなんだが。
キーンコーンカーンコーンと、学校のようなチャイム音を合図に映画が始まった。

作品の概要は、まぁトレーラー映像を見てもらったら、だいたいこんな感じかというのはわかってもらえるかと。



冒頭は北朝鮮の壮絶な歴史映像と、西洋のロックバンドの華々しい歴史映像が対比させるかのように映し出され、あたかも今回その無縁であった両者を繋ぐ歴史的瞬間の担い手であるのが、スロヴェニアのカルトバンド、ライバッハなのであるということを強くアピールしてるかのようである。

まぁドキュメンタリー映画なんて、だいたい監督の意図してることがあってヤラセ感も見え隠れするのが当たり前で、ライバッハなどは過去に母国でのライブを行えなかったり、ロシアから入国拒否を受けたりとスキャンダラスなことが彼らのスタイルみたいなもので、今回北朝鮮でライブを敢行するのも、なんらかのハプニングを起こして物議を醸すってのが目的だったんじゃないかと。
だから常に監視員に見張られ、「この映像はダメ」、「この曲の歌詞は相応しくない」、などの北朝鮮側の執拗でウザったい干渉シーンなんてのは想定内。
それほどの緊張感もなかったし、しかもメンバーが割と抵抗せずにすんなりと聞き入れている。まぁそうじゃないとライブ演らしてもらえないからねぇ。
つーかバンドメンバーと北朝鮮人のカラミはあまりなく、ほとんどトローヴィック監督が交渉してメンバーにそれを伝えて支持している。まぁ正直この監督がカッコつけすぎだと思った。

おふざけも多少入れてある。


リハーサルシーンがけっこうよかった。特に北朝鮮の音楽学校の女学生らとコラボするシーン。
ヴォーカルのミランが頭巾を脱ぐと、意外とやさしそうなヤツって感じで好感がもてた。
北朝鮮のコーディネーター兼通訳のリさんも、監督に色々口やかましく指示してくるが、割と面倒見のよさそうな感じが見てとれた。

劇中歌であるライバッハの楽曲もやはりカッコいい!かかる度にドーパミンが溢れてくる。
うん、やっぱCD買わなきゃって思う。

ただ、まともにライブ映像が流れたのはラストシーンの「RESISTANCE IS FUTURE」のみ。
まぁドキュメンタリーなんだし、映画の性質上これでいいのかもしれないが、私としてはライブシーンをもっと見たかった。
初めてライバッハの音楽に触れた北朝鮮の観客の各々の表情は見もの。


ライバッハによる「THE FINAL COUNTDOWN」なんかサイコーよ。



で、上映終了後、思いがけず下の階で「ライバッハ」に関するトークショーが催されるというので、せっかくなので拝聴させてもらった。
解説者は大阪のどっかのレコード屋の店長さん。意外と年配の方だった。

DVD映像付きで、なかなか面白い話が聞けたが、正直にわかの私にはちょっとマニアックすぎる内容だった。

店長自慢のライバッハコレクションもズラリ。



日本では人気のないライバッハも初期作品は日本盤が出てたみたい。




今日の1曲:『Opus Dei』/ Laibah
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テクノスラッシュ

2018年07月01日 | やっぱりメタル!!
届かない。
またしても、届かない。

CORONERが届かない。

メタル途上国スイスのメタルバンドといえば、KROKUSやCELTIC FROSTがよく名を知られてると思われるが、そのスイスメタル界の秘密兵器とされたのが、彼らの少し後に出現したCORONERだ。
つか彼らは元々CELTIC FROSTのローディーだったんだけど、まぁここらへんの関係は当時の狭いスイスメタル界ならではの実情が窺い知れる。

そのCORONERの初期3作、及びインターバルを置いて後期の2作品も続々と初リマスタで再発されるという奇跡がこの度実現した。
CORONERの諸作品は長年入手困難となっており、まぁ全国のスラッシュ好きは歓喜したかと思われる。
そらアンタ、一も二もなくオンラインで即予約ですよ!

ただ、初期3作は最初最安値のTレコードで予約してたんだが、発売予定日2週間を過ぎても届けられる気配がなく、「こらアカン」と思い急遽Tレコードの予約はキャンセルし、ディスクユニオンのオンライン発注に切り替えた。
いやだって、この手の再発盤はプレス数も少なく、このまま40日間くらい入荷のメドが立たず、即品切れ廃盤になる可能が大いにありうるからだ。
そうなったらアンタ、悔やんでも悔やみきれまへんで。


まぁCORONERの初期3作は一応日本盤で所持してはいた。
MEGADETHが“インテレクチュアルスラッシュ”というメタル形態を打ち出す中、当時CORONERは同じような方向性で“テクノスラッシュ”なんて呼称されてたらしいけど、スラッシュブームだったとはいえ、そんな呼び名日本では全く浸透していなかった程にCORONERの存在は知られてなかったと思う。

CORONERに出会ったのは中学生の頃、京都市内のじっちゃんが住んでた家の近くのレンタルレコード屋の処分品の棚で1st『R.I.P』を見っけて購入したのが最初だった。
セルティックの弟分ということでけっこう期待してたんだが、中坊の頃の私には、このいわゆる“テクノスラッシュ”なCORONERの音楽は少々難解だった。



一発目の「Reborn Through Hate」のイントロこそゾクゾクするほどカッコいい名リフで始まるが、とにかく曲構成がムダに複雑で確実にセルティックよりは演奏テクニックは長けているのだが、表現力や曲の完成度は低かったように思う。
そしてこのバンドのウィークポイントとしては、ヴォーカルの弱さ。
まぁベースのロン・ロイスが兼任しているという形だが、なんだかハッキリしないダミ声を発してる感じで、演奏にかき消されそうなほどに弱いのだ。
そして、ギターのトミー・T・バロンの露骨なネオクラ趣味。
とにかく弾きまくりギタリストで、インスト曲「Nosferatu」などはイングベイの1stに入ってそうなナンバーでなんだかなーという感じ。
1stは何回か聴いたんだが、1曲目をのぞきあまりピンとこないままレコードプレイヤーが壊れてそれっきり聴けてなかった。


その後しばらくCORONERには全く関知してなかったが、高校卒業後くらいに「仮面のジャッカル」のPVを目撃し、「そういえばCORONERってバンドのアルバム持ってたなぁ」みたいな感じで思いだし、ビクターから発売された2ndと3rdのカップリングCDをどっかの中古屋で発見しもう一度チャレンジしてみる気になった。

1988年作2nd『PUNISHMENT FOR DECADENCE』は、まぁ相変わらずというか、1stの延長線上的な仕上がりで、まだまだトミーのネオクラ趣味が濃厚。
ただ、楽曲は相変わらず無理にこねくり回したようなものが多く、音質も悪いし疲労感がハンパないが、スラッシャーのツボをつくリフ展開も増えてきた。
最後の蛇足的なジミヘンのカヴァーはこの時代ならではのご愛敬。




そして1989年、満を持して発表された『NO MORE COLOR』であるが、まぁハッキリ言ってCORONERの最高傑作にして、スラッシュメタル史上に残る大名盤と言ってもいいだろう。

もう1曲目のドロドロドロドロドロ・・・・とフェイドインしてくるイントロドラムからしてたまらない!
ヨーロピアンスラッシュ特有の寒冷地帯そのままの独特の冷たさ、そして曲構成の複雑さはそのままに、絶妙すぎるほどにクオリティの高い曲展開、ザックザクで粘着質な名リフの応酬、そしてスラッシュメタルバンドたる獰猛な疾走感・・・・・
本作には全編に渡ってそういった極上の要素が詰めに詰め込まれている。

トミーはようやく己のネオクラ趣味のクサさに気づいたのか、弾きまくるギターソロにも知性が備わり、名実ともに“インテレクチュアルスラッシュ”の極意を極めた感がある。
そこにロンのベースが絡むユニゾンはもう絶品である。

ヴォーカルは相変わらず弱い。が、もうそんなことは気にならないほどに各楽曲のクオリティが高い。
まぁメタラーの中にもいまだ歌はメロディやサビがないとダメとか、ガテラル、ダミ声に拒絶反応を示す不寛容な方がけっこういて、そういうヴォーカルの要素もひとつの“音”としてとらえ、本質的な意味で音楽を楽しめる素質がないと、DOOM、VOIVOD、そしてCORONERのような異質でアヴァンギャルドなメタルバンドの良さはなかなか理解してもらえない(まぁ結局は嗜好の問題かもしれないが)。

近年では機材スペックも上がり、演奏テクニックも著しく優れたプログレッシヴデスメタルみたいなバンドがゴロゴロ存在する時代になったけど、彼らはそういった先進的すぎることを機材もレコーディング環境も悪かった90年代以前からやっていたのだから時代が彼らに追いついてなかったというか、早すぎた先鋭部隊と言わざるを得ない。




で、CORONER第二弾リマスタシリーズ、『MENTAL VORTEX』と『GRIN』の2枚を最安値だったHMVで予約していたのだが、発売予定日を過ぎて、やはり届かないという憂き目にあっている。
ディスクユニオンHPでは、この2作の発売予定すら掲載されてない。
どういう状況で出荷遅延が発生しているのか?世界中から注文が殺到し、日本では商品が確保できない状況なのか?
いずれにせよ、ほんまにもどかしいったらありゃしない。
なぜにCORONERの音源を入手するのに、これほどの困難がつきまとうのか?

思えばリリース当時、この2作はビクターより日本盤が出てるんだから、CORONERにはなかなか寛容だったんよなぁ、日本。

あと、残るラストアルバム『CORONER』の再発の見込みはいかほどか?
そしてスラッシュファン待望の初来日の可能性は?


今日の1曲:『Mistress Of Deception』/ CORONER
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする