AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

人間国宝

2017年03月27日 | コンサート
さて、今回の東京遠征におけるメインイベント、Y&Tの『Midnight In Tokyo Tour 2017』を観戦すべく、時間がなかったのでジュクでの盤漁りはあきらめ15時頃川崎クラブチッタに赴いた。
グッズの先行販売はすでに開始されていると、先に現地入りしてたじょにい氏からメールで連絡があったので少しあせった。
チッタに着いてすぐに物販の行列に並ぶも、2種のTシャツの内、Mean Streakデザインの方のTシャツはすぐに完売。でもどうしても欲しかったので後日再プレス発送ということで、注文しておいた。

チッタモア会員であるじょにい氏の後輩さんにとってもらったので、整理番号は10番という良番。最前列に余裕で行けたが、にわかなので私は一歩下がっておいた。
それにしても、Y&Tなどという、80年初期のオールドスクールタイプの正統派ヘヴィメタルバンドのワンマンライブなんて、今まで行ったことがあっただろうか?う~ん、今振り返ってみても思い当たらないな。

今回のY&Tのジャパンツアー、前日は1st『EARTHSHAKER』の完全再現を踏まえてのベストヒット的セトリに対し、私の観た2日目は、オールタイムベスト的な演目となっていて、ベストくらいしか聴いてなかったにわかな私にとってまさにうってつけのプログラム。
しかもその日のライブは、会場にカメラが入っており、日本での初のビデオシューティングライブ。そう、この日の記録はDVD化されるのである!
そんなものに、にわかの私が映ってもいいのかと、少し恐縮の思いで初のY&Tライブに臨んだ。




オープニングは『EARTHSHAKER』からの1曲目「Hungry For Rock」で、まったりとライブがスタート。
初めてみるY&Tのライブは、なるほど、齢60歳を過ぎてるのに、このデイヴ・メニケッティの歌唱力と熱いメタル魂は真に迫るものを感じた。
まさに「人間国宝」!じょにい氏が熱中するわけだ。
ただ、キラーチューン「Hurricane」の時、デイヴの歌が若干苦しそうに見えたことは否めなかった。前日のライブも目撃してたじょにい氏もライブ前、3年前は余裕綽々で歌えてたのに今回は若干の衰えがあったと語っていた。
まぁ初めて観る私からしたら、やたら声を張り上げる80年初期のメタルチューンをあの歳でこれだけ歌えるのは凄いとしか言いようがないのだが。

今日のデイブヤバいんじゃないかと思ったのは、今ジャパンツアーのメイン曲であったろう「Midnight In Tokyo」が演奏された時。
いや、私自身演奏中はもの凄く熱くなっていて、サビの部分を合唱できて悦に浸っていたのだが、演奏が終わったあと、デイヴがかなり咳込んでいて苦しそうにしており、客席になにか不調を詫びるようなMCが入り、また「Midnight~」の冒頭の独唱から歌い出した時、何事?と首をかしげてしまった。
そう、なんとまさかの「Midnight In Tokyo」丸々演りなおしである!
そうかー、今日の映像DVD化されるからなー、デイヴとしてはこのままでは気が済まなかったんだろう。
男の意地というやつか、真面目な人なんだろうな。
ただ、2回目もそれほどデキは良くならず、後半息切れぎみというか、まぁ私のテンションもすっかり冷めてしまっていたのは仕方がない。それでもファンはそれなりに盛り上げていたと思う。だって盛り上げるしかないもんな。

その後もデイヴは熱いパフォーマンスを繰り広げてくれたが、演奏が終わる度に咳込んでかなり苦しそうだった。シールドが刺さってないのに気づかずギターを弾いていたりもしてた。
途中でスタッフがマグカップを持ってきてた。のど薬か強壮剤かなんかが入っていたのだろう。

ただ、そんなベストコンディションとは言い難い今回のライブでも、にわかの私のメタル魂を熱くさせてくれる場面は随所に見受けられた。
今回特にテンションがマックスになったのが、アンコールで「Rescue Me」、「Forever」が演奏された後であった。
客電が点きBGMも流れ出し、本来ならこれで全プログラム終了で、私の前にいた最前列の客も含め、大半が会場を去っていった。
しかし、残ったファンはしつこくアンコールをし続けている。私ももう多分ないだろうと思いつつも、ひょっとしたらということで拍手を続けていた。
すると、しばらくして手ブラでデイヴがステージに登場!
感慨深げに謝辞の言葉なんかを述べていたのだが、客席のあちこちから「オープン・ファイヤー!!」とのコールが沸き、他のメンバーも登場してスタッフが楽器を持ってきた。

そう、ここに予定外のマジのアンコールが実現したのである!

曲はもちろん「Open Fire」。この曲は前日も演奏されなかったそうだ。
いや、まさにプレミアムな場に立ち会えたわけである。
私はもちろん最前列で、日頃やり慣れていないフィストバンギンで大いに盛り上がったことは言うまでもない。
その後も、デイヴはせっかくだからという感じでメンバーと話し合い、さらに2曲演奏してくれて会場を後にした。
ライブは17時に始まったが、会場出たら20時を回っていた。


その後、サイン会に当たったじょにい氏の知り合いの話によると、その日デイヴはサイン会に現れなかったそうだ。
ライブ後デイヴはもう歩けないくらい疲労困憊状態だったという。
ラストアンコール3曲は、本当にギリギリの力を振り絞って演ってくれていたのだ。

私は見事にハズれた。



デイヴええヤツ過ぎるやろ!
Y&Tファンはなんて幸せ者なんだ。

いやー、デイヴの熱いメタル魂と、長年のファンの思いに応えようとする実直さ、真摯さを間近で感じれた、本当にいいライブだった。

ただ、現在私は風邪をこじらせている。
東京から帰った翌日から症状が出始めた。
これはデイヴに風邪うつされたんだと考えるほかない。



今日の1曲:『Midnight in Tokyo』/ Y&T
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高田のばか その2

2017年03月26日 | 名所ガイド、巡礼記
さて、夢のような高田馬場高架下の壁画を心行くまで撮影した後、早稲田通りをテクテクと歩いていったわけでありますが、街灯にはベタな手塚キャラ(アトム、サファイア、ブラックジャック、写楽)のパネルが施されてるのは別段おもしろくもなかったが、いちおうカメラには収めといた。




それ以外は、まぁこれといった手塚撮影ポイントもなく、手塚治虫ファンの巡礼地としてはかなりもの足りない町であった。
もっとさかいみなとみたいに、マンガキャラクターのブロンズ像を町のあらゆるところに散りばめておくとか、ヒョウタンツギの信楽焼の像を各民家の表に置いておくとか、もうちょっと町おこしに関心をもってもらいたいもんだと思った。
まぁ私のいつもの手塚マンガにおける世間の無関心ぶりの愚痴はこれくらいにしておいて。

その手塚治虫ゆかりの地として、唯一の熱心な信奉者といういうべき人物が、今回目的地である和菓子屋『青柳』の店主さんなのかもしれない。
この店には、生前この近くに事務所を構えてた手塚治虫先生も週に一度のペースで3時のおやつの時間になるとやってきて、この店のそばまんじゅう“更科”を指さして注文し、その場で2個ほど食って帰っていったそうな。

鉄腕アトムは漫画の中で「高田馬場で生まれた」と描かれてるそうで、それを誇りに思った店主の飯田さんが、実は地域活性化のためあの高田馬場駅高架下の壁画を企画したんだそうな。
そしてなんといっても、この店で売られているというアトムとウランの顔を模したアトムまんじゅうは、手塚ファンなら店頭まで行って購入しないわけにはいかないではないか!




場所をよくわかってなくてどうやら行きすぎていたことに気がついて、すぐに元来た道を引き返した。
しかし、和菓子屋らしい店があったなんて全然気づかなかったなぁ・・・・・


て、店閉まっとるやんけ!


またこのパターンかい!
高田のばかーーーーーーーっ!!


ま、さっき述べたことは、この記事にだいたい書いてあります。


しかし、俺の行きたい東京の店って、たいがい日曜日閉まってるんよなぁ・・・


落胆の思いに打ちひしがれながら帰路をトボトボ歩いていると、同じシャッターの閉まってある店で「おっ」と目をひく店ロゴに思わず歩を止めた。

店主は確実にスラッシュメタルファンかと思われる。


ただ、その実態はどうやら虎党バーらしく、阪神タイガースの旗が店内のあちこちに飾られてあった。
店の名前は「正虎」。あまり関わりたくない店名だ。
まぁミュージックバー兼スポーツバーみたいな感じで営まれているのであろう。
店でかかるのはスラッシュナンバーか、タイガース・オブ・パンタンのみ!みたいな。

Y&Tライブ終了後、このTシャツ着て店訪れたら、大歓迎を受けたかもしれないな。
今度高田馬場に行った際には、是非寄ってみようかと思う。




今日の1曲:『Blackjack』/ Tygers of Pan Tang
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高田のばか その1

2017年03月25日 | 名所ガイド、巡礼記
Y&T川崎クラブチッタ公演の為、高速夜行バスに飛び乗り、早朝に東京の地に降り立ったわけであるが。

ライブまで結構な時間があるとはいえ、私が寄りたい店と言うのはだいたい11時くらいからしかオープンしないので、観光とかせんかったらかなりの時間をもてあまし、いざいろいろ店を巡ろうと思ったら移動する時間も考慮して、かなり時間が限られてくる。

とりあえずガストでモーニングを食って向かった先は渋谷。
まんだらけが渋谷にあるということで、そこで手塚漫画の絶版ものでも漁ろうかと。
なんせ物が溢れてる東京だからな、かなりのレアものが期待できそうだ。

で、店の前にやって来て愕然となった。
12時オープンやって。その時まだ10時過ぎ。
仕方なく渋谷街をブラブラしたのち、11時になったので渋谷ディスクユニオンに赴く。1時間ほど盤を漁ってこれといった掘り出し物もなく店を出る。
そして漫を持してまんだらけに向かう。

さすがは東京のまんだらけ。入口からしてこれ。これはお宝もの大収穫の予感!


地下F2に店が縦横無尽に広がっていて、だだっ広すぎてどこに手塚本があるのかわからない。
近くのいかにもオタクっぽい店員に手塚本コーナーがあるかと尋ねた時、さすが東京のまんだらけだと思った。
「手塚治虫先生の商品は・・・・」と、わざわざ「先生」と付けて応答するのであった。
マンガの神様とはいえ、そこまで手塚マニア客に気ぃつかわんでもええとは思うが。


結局渋谷では盤も手塚本もこれといった収穫はなく、次に向かった先は高田馬場。
まぁこの地に手塚プロダクションの本社があるのだが、目的は先月『マクガイヤーゼミ 特別編「マイナー手塚漫画大バトル」』というニコ動番組で紹介されていた和菓子屋『青柳』で売られているアトム饅頭というものがあるというのを知って、どうしても欲しくなったのだ。
家族への土産物もこれでいいだろうと。




まず、高田馬場駅に着いて愕然となった。
ホームのメロディが鉄腕アトムのテーマソングなのだ。
思ってたより手塚支配の濃厚な町のようであった。

で、その時私の着ていたTシャツがこれ。


もうそれ目的丸出しやないか!!
これは通りすがりの地元民にジロジロみられたらこっ恥ずかしいことこの上ない!
私は思わずダウンジャケットを入れていた巾着を前にかけてアトムTシャツの柄を隠した。


そして改札を出るとまたしても愕然とした。

ウワーーーッ!!なんだここはパラダイスか!!


高田馬場の駅高架下には、手塚治虫から生まれた数々のキャラクター達が一同に大集結していたのであった。
これはもうしんぼうたまらん!!
私は恥も外聞もかなぐり捨て、撮影に没頭したのであった。




様々な作品からのキャラクター達のコラボ。これはもうコスモゾーンというほかない。



『どついたれ』のチンピラコンビ、『百物語』のスダマ、『火の鳥 乱世編』に出てきた薬売り屋、ブラックジャックに整形されたニセ母親と・・・なかなか細かい。



丸首ブーン、小田原丁珍、ヒゲダルマ・・・どんな脇役キャラでも一応名前があるのが手塚キャラ。しかもいろんな役をこなす。



『陽だまりの樹』から、手塚良庵(治虫の曽祖父)にコンスル。一応実在した人物たち。



こういったコラボもオツだね。
琵琶丸の方がわからないが、怪盗インコとコラボってるのは江戸川乱歩先生やね。



といった感じで、初っ端から興奮状態で高田馬場高架下を抜け、目的地である和菓子屋を目指し早稲田通りをテクテクと歩いて行ったのであった。
でもふと我に返って、やっぱりアトムTを着て商店街を歩くのは恥ずかしく、途中スーパーの便所でY&TのTシャツ(前ログのトップ写真参照)に着替えたことを申し添えておく。
どっちにしろ恥ずかしいだろ!って意見は受け付けない。予備がこれしかなかったのだ。


今日の1曲:『Don't Push』/ Sublime
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スプリング・メタル・カーニバル

2017年03月18日 | やっぱりメタル!!
どういうわけか、明日川崎くんだりまでY&Tを見に行くことになっている。
まぁせっかく小春日和の三連休なので、東京遠征してユニオンで盤漁りがてらというところだ。
スラドミも全然開催してくんないしね。
そう、ついにこのTシャツを着ていく時がきたのだ!!

ちなみに上のTシャツは、Y&Tフリークのじょにい氏が3年前にY&Tを観に川崎に遠征した際に、私が頼んで買ってきてもらったもので、私自身Y&Tのライブは一度も観たことがなければ、『In Rock We Trust』も実は所持していない。
ただ、私はこのB級感あふれる稚拙な初期Y&Tのジャケに妙に魅かれるところがあって、メタルを聴きはじめてワクワクしていた思春期の頃のメタル魂を呼び覚ましてくれるメタリックなこの絵柄に、とてつもないノスタルジックな感情を抱いてしまうのである。
大阪のメタルバーのねえちゃんに面と向かって「そのTシャツダサいですね」って指摘受けたこともあるし、Y&Tフリークのじょにい氏ですらダサ過ぎてよー購入できなかった程の見下され様である。
しかし、私はそれでも未だこのTシャツにただならぬ魅力を感じないではいられないのだ。


私がY&Tを真剣に聴いていたのは中一くらいまで。
姉が大好きだったので、メタルの入門アイテムとして洗脳に近い形で聴かせられてたと言う方が正しい。

よく聴かせられたのがこのライブアルバム。



なので、今月に入ってからベスト盤などを車中で爆音でかけておさらいに勤しんでいたわけであるが、今回Y&Tをじっくり聴き込んで気づいたことがひとつある。

それは、デイヴ・メニケッティの歌唱法は、大友康平の歌唱法と同じだということ。


『In Rock We Trust』って、実写化されてたのかー



今日の1曲:『Don't Stop Runnin'』/ Y&T
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「和嶋さん、何してるんですか?!」

2017年03月06日 | 本わか図書室
サンマルクカフェで読み始めた、人間椅子のギタリスト和嶋慎治氏の初の自伝本『屈折くん』をドトールコーヒーにて読了。
最新DVD映像付ライブアルバムはいまだ購入してない。いや、もう近年のライブ映像は、『疾風怒濤』以来、アルバム特典含めてけっこういっぱい出てるし、今回は購買意欲が全くそそられなかった。
それよりも!同時発売の和嶋慎治氏の初の著書の方がはるかに興味深かった。

メジャーデビューした時から人間椅子には深く関わってきたつもりだったが、なんせ当時などメディアでの露出も皆無に近く、ネットも普及してなかったし周りに人間椅子ファンもいない。ライブはここ最近までだいたいひとりで観にいっていて、会場くらいでしか人間椅子の近況は本人らの口からでしか得られなかったのだ。

一時期、人間椅子の公式ファンクラブにも入会してたけど、一年も経たぬ内に会費を振り込まなくなっていつの間にか退会処分になったし、家にある人間椅子にまつわる資料と言えば、『遺言状放送』VHS版に付属していたメンバーたちが完全にふざけて作った『大世紀末予言』(妄想と科学出版)という冊子くらいだった。



まぁ作品は購入していたものの、8年間くらい彼らのライブに足を運ばなかった時期もあったし。
だから以前からこういう本をずっと待ち望んでいたのだ。


内容はざっと帯の通り。上の方に写ってる写真は、もちろん高校時代の鈴木研一氏。


巻末には、みうらじゅん、そして2013年にキング・オブ・コントで優勝した青森県出身の漫才師シソンヌじろうらとの対談も掲載されている。
西條秀樹との食事に同席したエピソードは必読。


一応文筆家を目指していたサブカル系ミュージシャンが出す自伝本だから、楽しい内容だろうと思っていたが、わりと真面目な話が多くて、大槻ケンヂの著書のようなあることないことおもしろおかしく脚色してるタイプとはまた違う。
ま、そこは和嶋氏の人柄がそのまま出たということなんだろう。

陰気で淡いムードの幼少期から、読書と音楽漬けの学生時代話にけっこうページが割かれていて、人間椅子でのバンド活動のことはわりとサラっと流されてたような気がした。
まぁ四半世紀のバンド活動のことを語りつくそうと思ったら膨大なページ数になってしまうからどうしようもないとは思うのだが、マンガ『無限の住人』のイメージアルバムを作者本人から直々依頼された時の話などをもっと詳しく語ってほしかった。

ところで人間椅子には、「胎内巡り」、「涅槃桜」、「阿呆陀羅経」など、仏教的な楽曲が多く見受けられるが、それはなにも和製バンドのイメージに合わせてただいたずらにそういった楽曲が作られたわけではないと言うことが、和嶋氏のこの自伝本を読むとよくわかる。
何を隠そう、和嶋氏は駒澤大学の仏教学部仏教学科出身、そこの「仏教青年会」というサークルにも所属していた。
まぁそのサークルの実態は、ユーロロック研究会の様相を呈していたという話だが、やっぱ仏教の持つスピリチュアルな部分と、ユーロロックの不可思議な音像が、そのサークルに集う者の精神的な嗜好とピタリと当てはまるものがあったのだろう。
しかも和嶋氏は在学中、参禅部の門を叩き禅を組むという精神修行にも打ち込み、かなりの境地にまで達したという。
人間椅子が他の和製ロックバンドとは一線を画しており、歌詞の内容が格調高いのは、まさにこういった和嶋氏の経歴にあるのだ。

そう、人間椅子はダテじゃない!

座禅を組む和嶋氏。本書巻頭に掲載。



私の大好きだった時期の人間椅子の、デビュー~マスヒロ氏在籍時あたりのことは『暗黒編』として語られているが、その時期は安アパートで極貧生活を強いられながら情熱だけでなんとかギリギリバンド活動を維持してたなんてことは、その当時の私は知る由もなく、気が向いたらライブ会場に足を運んでは「相変わらず客少ないなぁ~、まぁだから椅子のライブはアットホームでゆったり見れて楽しいんやけどね」なんてお気楽にライブを見てたのが申し訳ない。

初代ドラマーの上館氏との決別のくだりはなんだか寂しいものを感じた。私はてっきり上館氏自らが脱退することを表明したと思っていたが、まさかのクビ宣告だったとはねぇ。
まぁ同級同郷の2人と彼らより5歳上だった上館氏とは、かなり距離感があるなぁとは端から見てても感じてはいたが、人間椅子もけっこう非情なところがあるんだなぁと。彼はまだ続ける意思はあったんだと思う。
上館氏のドラミングは人間椅子のストーナーな音楽性にめちゃくちゃフィットしてて好きだったんだけどなぁ、『遺言状放送』のライブ映像見ててもほんといいドラマーだったって思う。

和嶋氏が家庭の事情で弘前市に帰郷していた時期のくだりはなかなか興味深かった。
地元のMAG-NETというライブハウスで、仕事を手伝ったり「人間椅子倶楽部」というユル~いテレビ番組をやったり、金は儲からぬが色んなバンドの名曲をカヴァー演奏したりしておもしろいことを気ままに?やってて楽しそうだ。

『人間椅子倶楽部』


後藤マスヒロ氏という凄腕のプログレドラマーを獲得し、そのライブハウスのスタジオで、プロデューサー不在の素人同然のスタッフたちだけで自主制作に近いアルバムを作ったという。
本書には何のアルバムか書かれてなかったが、この青森産アルバムこそ、中期の大傑作『退廃芸術展』であろう(販売元はテイチク)。



バンドブームが過ぎ去りメジャーからドロップされインディーズに落ちて以降も、『踊る一寸法師』、『無限の住人』、そして『退廃芸術展』と、この時期人間椅子は実に実験性に溢れた素晴らしい作品を立て続けに発表している。まさに豊作の時期だったといっていい。
これは少年誌で人気が急落し、虫プロが倒産してしまった暗黒時代と言われた時期(68~72年)に、『きりひと賛歌』、『奇子』、『鳥人体系』などの傑作を立て続けに発表してた手塚治虫の経緯と実に似通ったところがある。


後半はひたすらバンド活動を続けながら様々なアルバイトに勤しむここ最近までの極貧生活の苦労話がほとんどで、そういった生活の中で達観した人生観や、人との繋がり、いや、もっというと、この世の万物との不思議な繋がりみたいなスケールのデカい話にまで発達していき、事あるごとに「私は大声をあげて泣いてしまった」というフレーズでしめくくられるのには、なんかの宗教本、自己啓発本を読んでるかのような感覚に陥ってしまい、聖人様の説法を聞いているようでなかなかしんどいものがあった。

まぁでも、ブレイク寸前まで住んでた安アパートの大家さんとのハートウォーミングな話や、部屋に出没するねずみたちとの愛憎もつれる奮闘記など、和嶋氏の生き様は実にドラマティックに満ち溢れていておもしろい。

で、下の写真は本書の巻頭に掲載されている写真だが、これは単なるプロモ写真ではない。


和嶋氏は2013年のオズフェス出演が決まるまで、実はこの公園の木の下でギターの練習、作曲を行っていたのだという。
それは、なにも大自然に囲まれている方がインスピレーションが沸くとか、カッコつけていたわけではなく、アパートの壁が薄いため部屋でギターを弾くと隣の住民から必ず苦情の反応が返ってきたからなのだ。
ももくろの楽曲のギターを依頼されたときも、この公園でフレーズを考えたという。
あれだけの素晴らしいギターテクと楽曲を作るプロミュージシャンなのに、最近までこんなさすらいの音楽活動を続けていたのだワジーは!(泣)


あと、本書には「和嶋さん、何してるんですか?!」というフレーズが文中に3回出てくる。
そこに和嶋氏のその時の心境が見てとれるので、是非本書を購読して確認していただきたい。


しかし、意外と鈴木氏との絡みエピソードが少なかったなぁ。
やっぱプライベートでは昔からある程度距離を置いての付き合いなんだろうな。
だからずっと一緒にやってこれたんだと思う。
今度は鈴木氏の自伝本に期待(出さんやろうけど)。
『鈴木研一 デビュー前ドキュメンタリー』



今日の1曲:『羽根物人生』/ 人間椅子
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