冬枯れの木々
先月末、息子達が来た時、アップルパイのお土産を持ってきた。
日比谷ミッドタウンでいつも長い行列ができる店が、珍しく空いていたので買ったそうだ。
パイ皮がサックサクで、カスタードクリームの中身には林檎がタップリ。
最近はケーキより和菓子が好きなのに、これは文句なく美味しい。
また食べたいけど日比谷ミッドタウンは遠いな~と諦めていたが、
数日前立川駅のコンコースにこの店を見つけた。
いつも並んでいる人がいたのに気にも留めなかったが、こんな身近にお店があったとは
10人ほど並んでいたが、商品はアップルパイ一種類しかないので5分ほどでゲット
それがこのRINGOのアップルパイ。 ちなみに若い人しか並んでなかった。
まだおじさんおばさんには名が知られてないみたい。皆様このお店を見かけたら是非どうぞ。
若者の流行に追いつきます
ちなみに、期間限定でベルギーチョコのカスタードクリームのアップルパイが発売されている。
立川では30分から1時間で売り切れるそう。 こちらも魅力ありますね~。
最近の読書
「翔ぶ少女」 原田マハ著
花水木さんとビオラさんが原田マハの著作を紹介していた。
私も何冊かは読んでいるのだがまた読みたくなり、図書館で最初に目についたのがこの本。
題名からして、ふわりと軽いものを想像していたが、東日本大震災で両親を亡くした3兄妹の話だった。
目の前で母親が瓦礫に挟まり身動きできない状況で火災が迫る。
兄は必死に助け出そうと泣き叫びながら母を引きだそうとする。
妹(主人公は)助け出されたが、足に大けがをし横たわっている。
そのままでは3人とも焼け死ぬ所を「おじさん」に助け出される。
精神科の医者であるおじさんの養子となった3兄妹は、学校で、学童クラブで疎外感を感じながらも
ボランティアや近隣の人たちと関わりあいながら成長していく。
簡単に書けばこんな内容だが、忙しい「おじさん」の手助けをする子供たちの健気さ、いじらしさ、
普通とは程遠い状況の中で常に自分たちのできる事を探そうとする子供たちの生命力、
最近とみに涙腺の弱くなった私は、途中から最後までずっと涙していた。
重い話だけれど、温かで優しい空気が充満していてこの本を選んでよかったと思う。
原田マハの本は時々軽くてご都合主義な成り行きに物足りなく思う事もあるのだが、
この本は細かな設定も良く出来ていて破綻が無く面白かった。
今どき、泣ける小説は少なく、久しぶりに本で泣いた。
「昭和元禄落語心中」
昨年NHKで放送されたドラマのノベライズ本。
昨年のドラマで、私の中でダントツ1位だったのがこのドラマ。
幼かった菊比古と助六は落語家八雲の兄弟弟子として、切磋琢磨しながら一流の落語家を目指していたが、
ある事で助六は落語をやめる。
菊比古は一途に芸に精進するが、助六のことだけは諦めきれない。
ようやく探し出し、落語界に戻るよう説得するが、想わぬ事故で助六が死んでしまう。
後半は八雲の名跡を継いだ菊比古と、養女にした助六の娘との話。
菊比古が岡田将生、助六が山崎育三郎。二人とも落語が上手。
岡田将生の江戸弁がたどたどしく気になったが、途中から彼の演技に磨きがかかりぐいぐい引き込まれた。
岡田、山崎共にこんなに演技が上手かったかしら?
更にわき役たちも的を得た配役で、しっとりとした情感あふれる世界を描いていた。
偶然、このドラマに嵌っていた友人がこの本を貸して下さった。
ノベライズ本は初めて読んだが、ドラマ通りの小説なのでドラマの画面とセリフが浮かび
ドラマを見直している気になった。(もともとの原作は漫画だそうだ)
でも小説としての深みはあまり期待しない方がいいかも。
「流転の王妃の昭和史」 愛新覚羅浩著
満州国皇帝溥儀の弟、溥傑に嫁した侯爵嵯峨家の長女浩の自伝。
昭和45年8月、新京にいた浩たち皇帝一行はソ連軍の侵略で大栗子まで逃げる。
皇帝溥儀と溥傑は飛行機で一足先に日本に脱出を試みるが、途中ソ連軍に捕らえられてしまう。
そして後ろ盾を失くした浩たちと、溥儀の皇后たちとの逃避行がはじまる。
ずいぶん昔に常盤貴子主演でこのドラマを見たことがあり、原作を読みたいとずっと思っていた。
やはり現実に起こった事の方がドラマより何層倍もすさまじかった。
普通の人間だったらこの中の数ページの出来事でさえ一生のトラウマになりそうな事が延々と続く。
親族から裏切られ、国民党軍に何度も捕らえられ、移動させられ、食べ物にも事欠き、
窓の外からは銃殺される民間日本人たちが見え、皇后はアヘン中毒の果てに気が狂い粗末な扱いをされ死んでゆく。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉をまさに体現している話だった。
日本に帰ってからも不幸が続き、長女は心中、というよりこの本の中ではストーカー被害により、亡くなる。
人生後半、釈放された夫と中国で穏やかな生活が出来たのは救いだった。
こんな経験をした女性が日本にいたという事に驚きだ。
歴史に翻弄されるとはこういう事と思った。
前々回のブログの続きです。
この項、故郷自慢に満ち満ちているので、 適当に読み飛ばしてくださいね。
まずは、お笑い芸人・ピース 又吉の文庫本
この方は今年 「火花」 という小説で芥川賞の候補にもなっている実力派。 (本日芥川賞発表、どうなるでしょう?)
読書好きで、彼自身の若い頃からの体験を語りつつ、彼の心に残った本を紹介している。
目次を見ると60代の私にはおなじみの本もあり、全く知らない本も沢山。
今回内容は触れませんが、彼のキャラクターにより、独特な本となっている。
この本の中の 「昔日の客」 という項を読んだ娘が
「大森に、山王書房という古本屋があったらしいけど、どこだか知っている?」とlineしてきた。
「 三島由紀夫とか、有名な文学者が通っていた本屋らしい」 と。
そう言えば・・・・・・あの本屋ね。
大森の実家のごく近くに静かな佇まいの古本屋があった。
ここには良い本が沢山置いてあるという噂を中学時代に聞いた。
けれど、まだ子供の中学生はお呼びでない感じ。いつも素通りしていた。
高校生になって意を決して入ってみたが、古い本が並んでいるけど、良さが全く分からず、すぐに店を出てきた。
そうそう、その古本屋の名前は確か 「山王書房」 だった。
我が大森の、特に馬込地区には、大正時代から昭和の初めにかけて、数多くの文士たちが住んでいた。
川端康成、尾崎士郎、室生犀星、宇野千代、三島由紀夫、その他数多く。
文士が多く住んだ地域は馬込文士村と言われ、わが実家のそば。
文士村は有名なのだけれど、私にとっては、まぁ地域の歴史ぐらいの遠い存在と考えていた。
ところが古本屋の話がきっかけで、いろいろ思い出してみると、
母の実家の3軒隣には有名な文学者が住んでいたり、
中学の2年先輩には尾崎士郎の息子がいて、文集に立派で面白い文章を載せたりしてした。
村岡花子の家は、通った小学校の近所だったし、
川端康成も新婚時代、実家のすぐそばに住んでいたらしい。
文士村って、遠い存在のように感じていたけど、
実家のすぐそばの古本屋が、文学者達御用達であったとは!!
馬込文士村を身近に感じた瞬間だった。
私の家の近所に、三島由紀夫達が来たのね!! と思うとワクワクしてきた。
その古本屋・関口良雄が書いた本が 「昔日の客」
1977年に発行されたが、2010年に復刻された。
そんな昔の部数も少ない本を、夏葉社という社員ゼロの一人出版社が目にとめ、復刻していた。
買おうかと思ったけど、念のため図書館で調べたら在庫があった!!
初版の時は、手摺の木版画を口絵に入れていたそうだ。
さすがに復刻版は印刷だった。 (銀杏子とは作者の俳号)
古本屋の親父さんの書いた本というと、偏屈で、独りよがりで、屁理屈をこねたものを想像してしまう.
けれどこの随筆集は全く違う。
正宗白鳥、尾崎士郎、尾崎一雄、三島由紀夫達との交流も書いてあるけれど、自慢げではなく、へりくだりもせず、
あくまでも自然体で、人対人の交流を楽しんでいる感じ。
一言でいうと、日本語が綺麗。
本への愛情、家族への愛情、文士たちへの尊敬が無駄のないシンプルな美しい文章で語られ、情緒豊かな気分にさせる。
例えば最初の項目
正宗白鳥の著作が好きで、状態の良い初版本をたくさん集め、
作者に 「たくさん集めたね」 と褒めてもらいたいばかりに、自宅を訪問する。
でも、出てきたのは 「粗末な身なりの老婆」。
白鳥は留守で、粗末な身なりの老婆が奥さんと分かる。
その奥さんと夕暮れまで、鶏小屋の横であれこれ話し込む。
何のことはない描写だが、正宗白鳥が留守で残念な気持ちと、
尊敬する白鳥の事を 奥さんと一緒に話しあえる喜びが静かに感じられて、とても良い文章だった。
店には 月替わりで毛筆の色紙を書いて貼っていたそうだ。
ちなみにこんな詩を
年齢を重ねた今、行ってみたい本屋だった。
図書館から借りた本だが、手元に置いて、何回も読み直したい本だ。
この古い本の素晴しさに目をとめ、復刻した若い出版人に、敬意を表したい。
最後に 大森ツァーご一緒したnao♪さんのブログから拝借した写真です。
大森に住んだ文士達のレリーフと説明が駅前にある。
追伸・・・・ 又吉さん、芥川賞受賞おめでとう♪