ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「大学的新潟ガイド こだわりの歩き方」(新潟大学人文学部附置地域文化連携センター 編;昭和堂)を読む

2023-08-14 22:04:00 | 読む

書は、教授など新潟大の研究者たちが、新潟県に関する考察を寄せた本である。

実をいうと、この本に興味を持ったきっかけは、今月5日の「日報抄」に、アイドルとして20周年を迎えたNegiccoのことが書いてあったことから始まる。

多くのファンは、ねぎっこの3人が少女から成長していくのを見守り、結婚や出産といった節目を、わがことのように喜んでいる。疑似恋愛の対象というより、人生を一緒に歩く道連れのような存在と捉えているのかもしれない。

なるほど、そのとおりだよと思った。

さらに、こんな文章が続いていた。

「長く支え、答えを急がない」。このようなスタンスが、新潟のローカルアイドルを育んでいる-。情報メディア論が専門の中村隆志・新潟大教授は、新大の研究者が本県に関する考察を寄せた本「大学的新潟ガイド」の中で、こんな見方を披露している。

そんなことを書いてある本なら読んでみたいなと思い、図書館から借りてきた。

 

該当していたアイドル論は、期待していたほど詳しく書かれた文章ではなかったけれど、NegiccoとNGT48のことが書かれてあったので、最初に読んだのであった。(^^;)

ただ、その新潟のアイドル論のことよりも、新潟のほかのたくさんのことの方が、興味深かった。

 

地域づくりに関する章では、トキの野生復帰や大地の芸術祭など、内容的に新しく明るいものはいいなと思った。

新潟水俣病に関することも暗くなりすぎないように扱われていた。

もちろん、伝統的な新潟の日本酒文化についても書かれていたが、よく飲む「麒麟山」の酒造会社がSDGsに関係した活動を行っていることも初めて知った。。

興味深かったのは、原発誘致を争点とした住民投票運動のことである。

保守的とも言われる地域住民が、最終的に「NO」の結果を引き出した背景や理由などに、そうだったのか、と納得した。

 

新潟の歴史に関する章では、あの憧れの縄文式土器、火焔型土器のこともあった。

湊町としての新潟では、様々なモノが、日本海交流があったことを物語る。

特に、糸魚川のヒスイはその大きな証拠になっている。

また、全く知らなかったことだが、戦前には、津川町(現阿賀町)出身の薄益三・守次という人物が、大陸で活躍したということを知ることができた。

 

最後の章は、新潟といえば、雪と暮らしについて語る章。

春を呼ぶ祭りに関して扱ったところでは、昔の祭りを復活させたものもある。

旧栃尾市の「ほだれ様」にもふれていて、自分が知ったときはまだ復活間もない頃だったのかなど、新しい気づきもあった。

村上市の町屋の暮らしと祭り、越後瞽女の存在、佐渡の鬼太鼓、鬼の踊りなど、県内の独特の文化や生活などにふれていた。

今は観光の呼び物になっているこれらについて、知識を深めることができた。

最後の最後には、長岡空襲と長岡花火のことについて扱っているが、平和や、安寧を願う市民の祈りが感じられることが、本書のラストにふさわしい。

 

新潟大学の人文学部の教授等が書いているので、全体的にカタい文章が多くて読みづらく思うときもあった。

だが、こういう見方もあるのか、とか、こういうものを題材にして紹介するのか、とかの、発見も多かった。

研究者の皆さんらしい視点からの文章が、普通のガイドブックとはさすがに違っていた。

県外の人より、少し知っている県内在住者の方々にとっての方が、本書は面白く読めるかもしれないな。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする