斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(49) 【気球と悪夢】

2023年02月26日 | 言葉
 米中の非難合戦になっていた「謎の気球」騒動も、やっと一段落したかに見える。おかしな話だった。首をかしげたのは、もっぱら「民間の気球」や「アメリカ側が気球を飛ばした」「気象観測のため」といった中国側の言い分。回収した気球を調べればすぐ分かってしまうのに--。

 偵察気球と偵察衛星
 現代は宇宙戦争の時代。ウィキペディアで「偵察衛星」あるいは「スパイ衛星」を検索すると、詳細かつ明快な説明が出て来る。今や偵察衛星の存在は秘密でも何でもない。まして「気球」となると何時代か昔の話に感じる。
 宇宙から送信される衛星写真で地上の自転車が明瞭に見えると話題になったのは、ウン十年も昔のことだ。現在のテレビニュースには毎日のように北朝鮮のミサイル発射場の衛星写真が紹介される。機器も技術も日進月歩の現代、地球上で起きるすべてが宇宙からは丸見えだ。一説に中国の偵察衛星は250機を超えるとか。十分過ぎるスパイ衛星を保有するのに、さらに気球が必要なのだろうか。

 悪夢その1
 今回の気球は成層圏(高度1-5万メートル)に達するらしい。あるテレビ局のゲスト解説者が「対流圏に雲が出て地上が見えない時に、気球が雲の下まで降りて地上を撮影するためではないか」とコメントしていた。なるほどと思ったが、雲の出来る対流圏(高度1万1千メートル以下)でなければ、雲を避けて地上の撮影は出来ない。特に高度1万メートル付近は国内外便の旅客機が頻繁に利用する高さである。視界の悪い気象条件下(雷雲が出ている?)、そんな危険な高度を「バズ3台分」の大きな気球が上下動していたら、旅客機にとっても危険極まりない。

 悪夢その2
 最初にアメリカで発見された気球は、今月4日に五大湖の上空で撃墜された。もし、この気球が”気球爆弾”だとしたら、どうだったろう。気球に起爆装置が仕掛けられ、炭そ菌の類の毒物が爆発時に散布される仕組みになっていたとすれば--。太平洋戦争中に旧日本軍が米大陸に向けて飛ばした気球爆弾の例もある。今回の気球の真の目的が、気球型新兵器の実験データの入手だった、ということも、あり得ない話ではない。ゾッとさせられる。