斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(41) 【骨細(ほねぼそ)の・・】

2022年06月09日 | 言葉
 政府は7日、「新しい資本主義の実行計画」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。例によって抽象的なコトバのオンパレードで、財源不明の軍備強化方針を除けば、具体的に何をしたいのかが見えて来ない。ことに政権発足時から注目していた「分配」のトーンは、急に小さくなった。「骨太」とは、容易には変わらぬことの例えのコトバではなかったのか。

 「投資」頼み?
 「成長と分配の好循環」の項目には「資産所得倍増プラン」の文字が踊る。「資産」に「所得」が、くっついていた。所得を増やして資産を倍増させる、というより、資産運用で所得を倍増させる、という意味合いが強いようだ。要はNISA(少額投資非課税制度)や個人型確定拠出年金(イデコ)など、個人投資の活発化策。しかしこれでは、お金のある人はさらに豊かになっても、投資資金のない人は打つ手なしだろう。かくて貧富差は拡大する一方。貧富差の緩和・解消を目指す「分配」の趣旨から、遠ざかる結果にしかなるまい。

 高齢者の財布のヒモは、ますます固く
 ターゲットと想定される中高齢者の場合、消費が伸びない理由は、自衛のため、生活防衛のため、である。年金支給額が年ごとに減り、それでいて物価は高くなる。政府は頼りにならないから、たとえ金利はゼロ同然でも余ったお金は、いや無理にでも余らせて預貯金に回し、不時の事態や老後に備える--。財布のヒモが固くなる背景だ。リスクの高い投資に回すお金など、あるはずもない。

 記者会見で岸田首相は「眠っている預貯金を叩(たた)き起こす」と息まいていた。なんと乱暴な! 「タタキ」は警察の隠語では「強盗」の意味になる。