斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(58)【26億円の詐欺額、380万円の保釈金】

2024年05月11日 | 言葉
 元通訳、水原一平容疑者による賭博事件。大谷翔平選手名義の銀行口座からの不正送金額は1697万5千ドル(26億円)に上ると、米司法省が明らかにした(アメリカ時間8日)。水原容疑者は司法取引に同意する意向で、事件はようやく山場を越えた。大谷選手は以後、心置きなく野球にうち込めるだろう。
 
 日米司法制度の違いに驚き
 水原容疑者は先月12日、ロスアンゼルス連邦裁判所へ保釈金380万円を払って保釈されている。この時も詐取した額と保釈金額との差に驚かされたが、日米の司法制度の違いは当然で、今回のような事件でもなければ米国の司法制度を知る機会はないかもしれない。
 詐取額と保釈金額との差のほかに、大谷翔平選手がかけられそうになった嫌疑も、違いを知る良い例だろう。「相手が違法賭博の胴元と知った上で送金するのは、違法賭博の運営を助けることになる」という米流の法理論だ。日本人の感覚からすれば、胴元を助ける意図など最初からありえない。

 「金の出どころ」と「金の使われ方」
 「出どころ」の方は右腕とバットで大谷選手が稼ぎ出したもので、何の問題もない。アメリカで問題にされたのは「金の使われ方」である。
 もともと罰金や保釈金は、犯罪者が不正に稼ぎ出した金品から支払うもの(無罪の人が一時的に支払う保釈金もあるが)だから、正真正銘ブラックなお金である。「出どころ」はブラックでも可、しかし「使われ方」には厳しい目が向けられるというのは、日本人には納得しにくい。我が腑(ふ)にストンとは落ちかねる理屈だ。