斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(35) 【「前のめり」と「後ずさり」】

2022年01月02日 | 言葉
 「後手後手」と「先手先手」
 オミクロン株の国内初感染が確認されてから、12月30日で1か月が過ぎた。国民は第6波の兆しに身構えつつ新年を迎えたが、ここへ来て岸田首相の積極策に対して「前のめり」との政治批判が出ているというから驚く。
 確かに「後手後手」の菅内閣が退陣した10月初めから、国内の新規感染者数は目立って減った。そこで12月初めに厚労省幹部が帰国者への水際対策緩和を提案すると、岸田首相は「批判は、岸田がすべて責任を負う」と一蹴した。当然だろう。ここでテを緩めては、後手に回り続けた菅内閣と少しも変わらない。事実、世界に目を転ずれば、欧米を先頭に各国とも警戒態勢を一層強めている。

 「前のめり」と「後ずさり」
 就任時に岸田首相は「新型コロナ禍対策には、最悪の事態を想定して取り組む」と言明した。菅首相の「仮定の話には答えられない」とは対照的な「最悪の事態を想定」。世論調査での岸田首相への支持率の高さは、この姿勢への評価でもあった。
 「後手後手」と「先手先手」。「先手先手」と言ったのでは批判にならないから、「前のめり」と言い替える。コトバのトリックなのだ。「前のめり」の反対語は「後ずさり」や「腰を引く」だが、腰を引き過ぎて「尻もち」を搗(つ)いたのでは話にならない。
 今年も新型コロナと格闘する1年になりそうだ。「後ずさり」派の政治家たちも、ここでフンドシを締め直してもらいたい。