徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「雪 の 華」―歓びも悲しみもそこはかとない哀婉のときを超えて―

2019-02-11 12:00:01 | 映画

 
 2003年に中島美嘉の「エモーショナルな歌声」と、その歌詞の普遍的な世界観で大ヒットした名曲「雪の華」が、橋本光二郎監督によって映画化された。

 東京とフィンランドを結んで、余命一年を宣告された、夢見ることを忘れた運命の恋が描かれる。
 脚色岡田惠和だから言うことなし、しみじみと、ちょっと大人の恋をちょっぴりおとぎ話風ではあるが、抒情豊かなラブストーリーとして仕上げている。
 期待の若手女優中条あやみがヒロインを演じていて、スクリーン一杯に儚い美しさを漂わせている。
 この人は勝気な美少女の役が多かったらしいが、その中条の新しい一面が大いなる見どころでもある。



100万円で私の恋人になってください。1ヶ月だけ・・・。
余命を宣告された美雪(中条あやみ)の夢は、〈約束の地〉フィンランドで紅いオーロラを見ることだった。
そんなある日、ひったくりに会った美雪は、ガラス工芸家を志す青年・悠輔(登坂広臣)に助けられる。

半年後に、偶然再会した悠輔が、男手ひとつで姉弟を育てていること、そして彼らの働く店が経営の危機に陥っていることを知った美雪は、「私が出します、100万円。その代り1ヶ月私の恋人になって下さい」と、期間限定の恋を持ちかけるのだった。
美雪に押し切られて、何とか始まった二人の付き合いだったが、初めての待ち合わせ、一緒に食べるお弁当、別れ際の見送り、お休みのメールと・・・、そのすべてが幸せで、期限付きの恋と知りながら、美雪は自分の居所がある喜びを感じていた。
そして、はじめは乗り気でなかった悠輔も、真直ぐな彼女に強く惹かれていくのだが・・・。
かけがえのない出逢いが、美雪に一生分の勇気を与えて、悠輔の人生を鮮やかに彩っていく。

中島美嘉人気曲「雪の華」から着想を得た恋愛映画で、当時芸能事務所の小笠原明男氏(享年62歳)に男性の主演に口説かれたのが登坂広臣で、不器用だが真直ぐな性格の悠輔役を引き受けた。
適役ではないか。
だが彼は、これはアーティストしての彼の最後の映画で、本人は遺作だと言い張っている。
今後どういう活動をしていくのだろう。

病弱で引っ込み思案の美雪(中条あやみ)が、これがまたよい。
死期が迫る美雪には、フィンランドで紅いオーロラを見たいという夢があった。
ロケ地のフィンランドの風景も、中島のテーマソングもよく合っているようだ。
それに、この物語にぴったりの舞台装置だ。
「100万円で1ヶ月だけ恋人になる」という無謀な契約も、大人のおとぎ話のようで面白い設定だ。
岡田惠和の脚本がこの映画を盛り上げている。
中条あやみは大変な売れっ子のようだが、はかなげで美しい、まさに‘哀婉’の女をを演じて深みのある映像を作り上げている。
今後はどんな大物になっていくのであろうか、楽しみである。
限りある人間の生を裏から見れば死だ。その死の影を突き崩す魅力がこの作品にはある。
橋本光二郎監督「雪の華」は、「オレンジ」(2015年)、「羊と鋼の森」(2018年)に続き、3作目になる。
この作品では季節感が大切に描かれており、繊細な感情表現と、作り込まれた独特の世界観がうかがわれて、もう一度見たくなるような印象深い日本映画である。
楽曲をもとに作られた大人の恋の映画ともいえる。
        [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
現在全国各地のシネコンなどで上映中。
次回はフランス・ベルギー・イタリア合作映画「ともしび」を取り上げます。


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