徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「プール」―憂鬱で、退屈で―

2009-09-16 10:00:00 | 映画

赤レンガの舗道に、銀杏の実が落ちている。
振り仰いだ青空には、うろこ雲が・・・。
秋を実感する、この頃だ。

テレビドラマの脚本家で知られる、大森美香監督の初めての長編映画を観た。
映画「プールは、タイのチェンマイを舞台に設定している。
小さなプールのまわりに集まる、5人の男女の6日間の物語だ。
原作は、漫画家の桜沢エリカで、映画化を前提に書き下ろした新作だそうだが・・・。
全編、静かな落ち着きを漂わせた作品はいいのだが、どうも中身がよく見えてこない。
何故、チェンマイなのか。
何故、そこのゲストハウスで母親は働いているのか。

4年前、祖母と娘さよ(伽奈)のもとを離れ、チェンマイで、母京子(小林聡美)は働きはじめた。
さよは、その母を訪ねて、ひとりチェンマイを訪れる。
迎えに現われたのは母ではなく、母の仕事を手伝う市尾(加瀬亮)だった。
小さなプールのあるゲストハウスには、ビー(シッティチャイ・コンピラ)という名前のタイ人の子供と、オーナーの菊子(もたいまさこ)がいた。
さよは、ひさびさに会った母が、初めて会う人たちと楽しそうに暮らしているのを見て、どうしても、それを素直に受け入れることができない。

ビーには、行方不明の母親がいて、会いたいと思っていた。
市尾は、母親探しを手伝うが、なかなかうまくいかず、優しさがいつも裏目に出てしまうのだ。
菊子は余命宣告を受けていた。
ここでは、誰もが、相手を思いやりながら生活しているように見える。
彼らとの出会いで、さよは自分の心が開いていくのを感じている。

4日目の夜、さよと京子は、市尾の作った鍋をかこむ・・・。
どうして、自分を残してタイへ行ってしまったのか、さよは、これまでずっと聞きたかった自分の気持ちを、率直に母にぶつけるのだった。

・・・誰もが、自由に生きているように見える。
そうした人たちの素朴な交流の中で、さよはやがて日本へ帰る日を迎える。

この作品、どうもまだるっこい。
何が言いたいのだ。
京子は、どうやら娘や老母を置いて、何の理由かよくわからないが、日本を飛び出したらしい。
母親はひょうひょうとしていて、何を考えているのかよくわからない。

映画の中に、説明らしい説明も、描写らしい描写も一切ない。
説明的な言葉や映像を、極力排している。
そうなのだ。
勝手に解釈してくれということのようだ。

登場人物たちの過去に何があったか、回想も描写もない。
彼らの会話(台詞)から想像するのだから、覚束ない。
それが狙いの作品だとしたら、ずいぶんと身勝手な映画だ。
この種の作品で、観客の想像に任せるとは・・・。

ひとつの小さなプールに、水がたたえられている。
プールの傍らにソファーがあって、いつも誰かがいる。
犬が寄ってきて、餌をやる。
誰かと誰ががそこで顔を合わせる。
空気が澄んでいるから、「とてもいい空気ね」と空を見上げ、「美味しいわね」と言って、鍋料理をほおばる・・・。
場面が変わったら変わったで、とりとめのない(?)会話が、お互い同士で延々と交わされる。
こういう場面を観ているほうは、もうあきあきしてくる。
だからどうした?それからどうした?そしてどうなったのさ?エトセトラ・・・。
プールを取り巻くように暮らしている、この映画の登場人物たちは、何故ここにいるのか、そんなことも誰ひとりとして語られることはない。
説明なくして見えるものは、何なのか。

大森監督は、京子の人物像を、常識からかけ離れた母親として描いているのだろう。
娘の養育を放り出して、一向に反省の気配もない。
わけありの母親を登場させて、台詞も、いまひとつぴんと響くものが感じられない。
とにかく、まるで肝心の中身がない(?!)といったら怒られるだろうか。
人物が、風景の中に立っているだけで、どうしてすべてが解るというのか。
 「チェンマイを舞台に、小林聡美の映画を撮ってみたい」
ただ、それだけのことなのか。
今回の大森作品には、はっきり言って失望である・・・。


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3 コメント

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小林聡美と (茶柱)
2009-09-17 00:54:36
もたいまさこというと昔「やっぱり猫が好き」というドラマを思い出します。

まあ、三姉妹が毎回コメディのようなことを繰り返す毎日を描いたストーリーらしいストーリーのないドラマでした。
なんとなく感想を読んで、「そういう話なのかなぁ」と思った次第。でも、ドラマならともかく映画でそれはちょっと「キツイ」ですよね・・・。
外国の女性監督も・・・ (Julien)
2009-09-18 19:38:26
大勢いますが、社会派の監督さんなんかもいて、問題作、話題作などいい作品をどんどん発表しています。
日本の女性監督の作品は、どうも独りよがりの大学生の卒業記念作品のような、そんな気のする作品が多く感じられてなりません。
とても悪い表現ですが、幾つになっても少女小説のような、自分の日記のような・・・、作品がその域から出ていないんです。
いや、いい過ぎてごめんなさい。
Unknown (あんみつ)
2019-08-15 06:45:59
昔の記事にコメントしてすみません。
わたしも映画を観終えてすぐは「???」といった感じでしたが
あのゲストハウスはHIV感染孤児のために開設されたものだそうです。
この存在を知ることでやっと、きっとあの男の子は孤児で…母は…彼は…とストーリーに深みが出てくる作品なのかなあと思いました。

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