
この家に集うと、喜びは倍に悲しみは半分になる。
名匠マイク・リー監督の、長編第11作目だ。
ひとつの幸福な家庭と、そこの集まる人々の明暗を描く。
時にユーモラスに、時にシニカルに描いた、味わい深い一作である。
マイク・リー監督の同世代の登場人物が中心だ。
60歳を過ぎているからこそ見えてくる、人生の機微がある。
それを、めぐりくる四季の彩りの中に綴っている。
夫婦であれ、友人であれ、親戚であれ、みんな何らかの苦しみを抱えて生きている。
そんな日常を、お互いが語り合うことで、人生を生きる意味も見えてくる。
『家族の庭』予告編
トム(ジム・ブロードベント)とジェリー(ルース・シーン)は、人生の秋を迎えた、初老の夫婦である。
それぞれが打ち込める仕事も持っているし、休日は野菜作りを楽しみ、美味しい手料理とワインを味わう、恵まれた日々だ。
おまけに、弁護士の息子ジョー(オリヴァー・モルトマン)も、親思いの好青年だし、誰もが羨む幸福な人生を送っていた。
一方、彼らの家を訪れる友人たちは、それぞれが孤独を抱えていた。
とくに、ジェリーの同僚であるメアリー(レスリー・マンヴィル)は、男運に恵まれない自分と、幸福なジェリーを比べては、落ち込みもひどく煙草とワインが欠かせない。
家族とともに、平凡でも穏やかな日々を過ごすジェリーと、前向きに生きようとすることで様々なストレスを抱えてしまうメアリーだが、どちらの人生も決して意味のないものではないことを、静かに諭してくれているようであった・・・。
登場する俳優たちと、即興(アドリブ)を積み重ねながら、キャラクターとストーリーを造り上げていくのが、マイク・リー監督の特徴だ。
人生の深遠を静かに見つめながら、人々のひだを探り、家族と友情、愛と温もりを模索し確かめるような、穏やかな人間ドラマだ。
短くシンプルだし、格別大きな出来事が起きることもなく、日々は過ぎていく。
感慨めいたものは、観終わってからやんわりと心に迫ってくる。
登場人物たちの個性はもちろん、庭を渡る、風の色までも感じられる、豊かな映像が心地よい。
風香る庭、菜園に人々は集い語り合う、言ってみればそれだけのドラマなのだが、中身は濃い。
とても悪い(?)女がいる。
それは、このドラマではメアリーだ。
「私、車を買うの」「私ね、聞き上手なのよ」「私って、若く見えるでしょ」等々・・・、いつもいつも「私」が世界の中心にいるように考えている。
そんな女性って、いまの社会に多いのではないか。
このメアリーを演じるレスリー・マンヴィルの、さすがに、細やかな陰影に富んだ演技に引きつけられる。
これはもう、彼女のための映画だ。
イギリス映画、マイク・リー監督作品「家族の庭」は、強烈なドラマ性を期待するとがっかりするかもしれないが、じわじわと心にしみるような温もりを求めたい人には向いている。
幸か不幸か、寝不足の目で観たので、束の間睡魔に襲われたところもあったが・・・。
作品のラストショットは、いささか複雑だ。
流れている音楽が止まると、その静寂の中にメアリーが取り残される。
このとき、彼女はひとり何を思うだろうか。
彼女は、自分の人生を見つめなおし、立ち直ることができるだろうか。
いや、映画にとって大事なことのひとつは、観客に考える余地を残しておくことだそうで・・・。
考え続けて、キャラクターの人生に思いをはせる・・・、というのがまた映画の良いところでもあるのですが、大勢の観客がまったく違った解釈をしても、それがまた許されることでもあるので・・・。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)




明治時代初期から、昭和40年代頃まで、横浜をはじめ日本の主要な都市の街路には、路面電車の線路が張りめぐらされていた。











