雑にゃん日記<俺ってズレてる?>

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すごい良い!の「Arc(アーク)」みましたよーの感想

2021-07-06 12:24:11 | 映画

今話題なのかな?Arc(アーク)という映画作品を見てきました。

 

映画『Arc アーク』オフィシャルサイト|2021.06.25 FRI

人類初、永遠の命を得た女性の物語、主演:芳根京子が17歳から100歳以上までを熱演! 俊英・石川慶監督が世界的SF作家ケン・リュウの傑作短編...

 

 

 

見てきたのが2021/7/1。
「クワイエット・プレイス」と悩みましたが、タイミングで本作となりました。

映画としては、SFというジャンル。石川 慶監督で原作はケン・リュウさん。
はて?ケン・リュウさんって名前聞いたことあるぞ。
SF小説に疎くて、すみません。
先日・・・知っていたものの、見ていないOVA「ヨコハマ買い出し紀行」を見まして、内容のSFなところと日常なところの微妙な世界観に衝撃を受けました。
そのため、少し作品を調べてみたところ、ケン・リュウさんが「ヨコハマ買い出し紀行」に影響を受けて書いた小説が「SF短編小説『もののあはれ』」と知りました。
短編集なので、Arc(アーク)もその一つなのかな?
妙な流れですね。。。
(というか、ケン・リュウさん、どうやって「ヨコハマ買い出し紀行」を知ったのだろう 笑)

さて、話を「Arc(アーク)」元に戻します。
「役者の記念作品じゃないの」
「学芸会みたいに、怒鳴りあい作品なんじゃないの」
「お話の無い、ちゅっちゅ、ちゅっちゅやる恋愛ドラマなんじゃないの」
「アートに振るだけ降って、ストーリ、スカスカ」
と思っていました。
ほんと、邦画はこんなイメージしかないですので、期待していませんでした。

で、蓋を開けてみると・・・
「見ごたえのある、説得力・思想感のある作品。どんな切り口で見ても考えさせられる・・・頭を使う作品」
でした。
すごく良いです。
お話のこだわりでしょうか。
「起・承・転・結」
がわかりやすく、それぞれが絶妙なつながりを持って話されるので、飽きさせないストーリーです。

テーマは「不老」で、乗り越える・乗り越えた時、人はどうなるか。
そのためSFというよりか、群像劇という表現があっていると考えます。
間違ってはいけないのが、「不老」であり「不死」ではないんですよ。病気がありますしね。
ただ「不老」は、テロメア作用における動物のシステムですから「仕方のないこと」という意味合いが強いですが、それを題材にしている所が面白いです。
なぜなら「仕方のないこと」が「乗り越えられる」とわかると、人間はどういう行動を起こすか。
今の新コロナと同じ状況で、ほんと、同じことが現れましたね。
”ワクチン差別”
”同調圧力”
”新コロナ格差”
などなど。
同じことが、作中でも語られます。
多分狙ってこうなったわけではないでしょうが、やっぱり同じところに落ちてしまします。
これが、「起・承・転(の前半)」の部分。
ただ「答えはこうだ。こうあるべきだ」という結論で語られないという点が面白いです。
この手の作品では、悪を決めて懲らしめることで「満足感」を作り出し終了するという作品が多いと思います。
不老になるための薬争奪戦とか、特許戦争だとか、主人公が処置を受けていない人で処置をした人からうける差別を撃退するとか。
そんなこと一切語られずに、淡々とドラマが展開されます。そして結論を視聴者に任されます。
と言っても単に丸投げされるわけでは無く、色々な結論を持ったキャラクターを出すことで、見ている人の共感がどの”キャラクターに向けられるか、それぞれですよ”と言われている感じがしました。
それが、「転・結」の部分。

表現も面白く、「起・承」はアート作品のような見せる表現。色数をたくさん使ってきらびやかに、センセーショナルな雰囲気を作り出しています。
その中で、ワイヤーで人体を釣り上げて表現する「ボディーワーク」。これが結構センセーショナルに表現される。
よくよく考えると、ストーリ上の影響はあまりないんですね。
でも、映画の中で「イメージボード」「アートボード」で、良いエッセンスになっています。
まさしくアート。
中でも死体の表現もあるのですが、このアート的な表現があるおかげで、すべてがアートとして見えてしまうのも不思議です。

逆に「転・結」が、モノクロ(セピア?)表現で人間ドラマが表現されます。不老がメインになった社会で人間がどんなドラマを描くか。。。それをモノクロ(セピア)表現です。
途中から変わるので「何だ何だ???」と思ってしまいますが、見ている間に納得してしまいます。
まるで、ノンフィクションをドラマ調で見ている感じです。昔の再現ドラマなんかはモノクロで表現されるものがありましたね。
モノクロ(セピア?)で表現されることで、より人間臭く、泥臭く感じられるのが不思議ですし、そういう効果を見込んで作品を作っているのが脱帽です。
監督はじめ、すごいディスカッションがあったんでしょう。極力SF感を消そうと。

また、色々なところにリアリティを持たせるアイテムもちりばめられて、引き込まれれます。
後半セクションで、カーラジオから「出生率が0.2を下回りました。また、自殺件数が高止まりしています」と流れます。
聞き逃せば、どうでもよい情報なのかもしれませんが、よくよく考えてみると絶妙な表現だとわかります。
不老になると、子供は作らなくなりますし、終わらない人生であるがゆえに自殺が増えるでしょう。
こういうったところでリアル感を感じさせてくれます。
(ここで、子供を人工的に作るなんて話を入れると、物語が台無しです)

面白かったのが、前半にはボディーワークに依頼する人の面談、後半では「不老化処置」を受けていない人々が施設に入る前の面談が差し込まれます。
通常は、私の大っ嫌いな”自然体すぎる”汚い話し方、汚い行動を見せられます。
ただ、このストーリの中で見せられると、人間の色々な・・・姑息と言うか、利己主義とか・・・そういう部分がいいエッセンスになっています。
先にも書いた通り、新コロナ時の人間の行動”~警察、同調、差別、妬み”がある通り、作中の立場で面談すると、やっぱり同じことが出てくる。ちょっと笑ってしまいました。絶妙な演出だと。
前半の面談では、他人(亡くなった方)事を自分の都合で話している。ところが、なぜか悲壮感が見えない。
後半の面談では、あくまでも自分のことを話している。でも、他人のことがすごく気になってしまう。
前半は自分の都合、後半は他人の都合を語っている・・・そんな対照的な状況が見て取れます。
後半の面談で残った内容としては、高齢のおじいさんが語ります。
「不老処置をどうするか、みんなで話したんですよ。そうするとみんな、高齢なので受けないという話になりました。
  ところが、結果として不老処置を受けた人が多かったです」
笑いましたね。
新コロナのワクチンも「怖い怖い、副反応が心配、怖い怖い」と語っていた人が、予約もしていないのに、会場に押しかけてまでワクチン接種しようとした姿が重なりました。やっぱり、行っていることとやっていることが一致しないものなのかと。

この作品は、人間に「人生の時間を、長くさせた場合の実験」を見せられている、そして単純な人間ドラマではないと感じました。
前半のアート系映像に惑わされて、単純な人間ドラマとして捉える人もいるでしょう。
役者さんの演技も素晴らしかったので、その部分を注力してみてしまう人も分かるところです。
ポスターなどの宣伝媒体も、人間ドラマやSFを前面に出してミスリードしているように思えます。
しかし、そんな単純な物語ではないと思います。
どんな状況で、どう決断をするか。
それを「Aさんの場合」「Bさんの場合」と言う感じで示され
”さて、あなたは?”
と語りかけられる感じです。
主人公さんの、最後の決断は・・・見てみてください。
「やっぱり、そうなりますか・・・」
と思います。
限りあるから美しい。限りあるから愛おしい。
最後にはモノクロ(セピア)から、カラーに戻ります。この表現に脱帽です。

今を感じ、未来を感じ、そして過去を見返してみる。
上映を終えた後「時間とは残酷ですね・・・」。そう呟いてしまいました。

ただ、見ている人に「任せる」ことは、シン・エヴァンゲリオンに似ているな~と。これは、見る人によって分からない、批判に近いコメントが出るかもしれませんね。。。

コメント
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