浅野ゆうじの独り言

社会・政治に関連する本の感想や日々の出来事についての私なりの考え方を書いています。

宮本常一「民俗のふるさと」を読んで

2013-02-04 09:16:26 | 日記・エッセイ・コラム
 なぜかしら年を経るにつれて過去へさかのぼる歴史というものに興味を持つという思いは私だけでしょうか。 自分自身の思考や思想の底流にあるものがなんであるかを考えながら、歴史を知る、ルーツを探ることによって、さらに自分自身が肉付けされていくような感覚を得ることができる幸福感があります。まさにそうした感覚を与えてくれた本でした。

 歴史からくる成り立ちを、古いものとして切り捨ててしまうとか、慣習への盲目的な服従か、という二者択一のものではないことは当然です。歴史からくる現実の上に私たちは立っているのであり、それを踏まえたうえで私たちは未来を選択していかなければならないということでしょう。不変のものをしっかりと見極め、変えなければならないものをよりよいものにしていくという現実的な選択が必要です。理想を成し遂げようとするならば多くの現実な過程を踏まなければならず、バーチャルなりセットができる世界ではないのです。

 本文のあとがきに書かれてある文章を少し引用して終わります。

 「・・・慣習は法律でつくられたものではなく、人が共同して生きていくために、自然的に考えだした人間の知恵であり、しかもそれを持ち伝えてきたものであった。・・・生活の中にしみ込んでいるものとして、日常の何でもない行為やモノの考え方の中に生きていることが多い。・・・それがときにはわれわれの生活文化を停滞させることもあるが、誰に命令されなくても自分の生活を守り、発展させるためのエネルギーにもなる。本当の生産的なエネルギーというものは命令されてできるものではない。・・・」(P258抜粋)

以上


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