あれは確か高校2年の夏休みだった。久々にこの地を訪れたのだが、あまりの様変わりに母は驚き、
「これじゃまるでマンション街ね、山の緑が台無しじゃないの」
と憤り、それが一緒に行った最後の旅行になったのだが、
「でもね春子ここの景色は心によく刻んでおきなさい、勿論山や緑の、昔の景色をよ」
「なんで」
「ここがルーツだからよ」
母はそれしか語らなかったが、今その言葉が大きな疑問となって一気に膨らみ始めた。
母はここで生まれたのだろうか、でも今まで何回も来たが誰とも会った記憶が無い。
折角来たのだから何か調べてみようかしら。でもどうやって調べたらいいのか。
そんな事を考えている内に座り疲れてきて、少し歩く事にして又坂道を下っていった。
だんだんと暗い雲が広がり涼しい風が吹いてきた。この位が丁度いい等と思っている内にいきなり激しい雨が降り出し、慌てて線路の高架下のトンネルに避難した。
濃い森の匂いを含んだ、冷たい風が身に沁みて内にささり、滝に打たれる修行僧の儀式に否応無く参加させられる様な、厳しい空気感があった。
これもいい休養だわ、少しゆっくり立ち止まり、周りを見て感じて考えて結論を急がず、成り行きに任せる、それもいい、と。
母親だけで育てられ、何か暗い過去を感じてきた春子は負けん気が強かった。
受験も入社試験も、全て自分一人で目標を決め達成してきた。
後ろを振り返らず、気を緩める事は決してしなかった。油断したら負け、自分にも
他人にも厳しい、そんな今までだった。
でもこれからはどういう人生設計に変更していけば良いのか。
「これじゃまるでマンション街ね、山の緑が台無しじゃないの」
と憤り、それが一緒に行った最後の旅行になったのだが、
「でもね春子ここの景色は心によく刻んでおきなさい、勿論山や緑の、昔の景色をよ」
「なんで」
「ここがルーツだからよ」
母はそれしか語らなかったが、今その言葉が大きな疑問となって一気に膨らみ始めた。
母はここで生まれたのだろうか、でも今まで何回も来たが誰とも会った記憶が無い。
折角来たのだから何か調べてみようかしら。でもどうやって調べたらいいのか。
そんな事を考えている内に座り疲れてきて、少し歩く事にして又坂道を下っていった。
だんだんと暗い雲が広がり涼しい風が吹いてきた。この位が丁度いい等と思っている内にいきなり激しい雨が降り出し、慌てて線路の高架下のトンネルに避難した。
濃い森の匂いを含んだ、冷たい風が身に沁みて内にささり、滝に打たれる修行僧の儀式に否応無く参加させられる様な、厳しい空気感があった。
これもいい休養だわ、少しゆっくり立ち止まり、周りを見て感じて考えて結論を急がず、成り行きに任せる、それもいい、と。
母親だけで育てられ、何か暗い過去を感じてきた春子は負けん気が強かった。
受験も入社試験も、全て自分一人で目標を決め達成してきた。
後ろを振り返らず、気を緩める事は決してしなかった。油断したら負け、自分にも
他人にも厳しい、そんな今までだった。
でもこれからはどういう人生設計に変更していけば良いのか。