以前から読んでみたいと思っていた(が、ちょっと勇気がなくて読んでいなかった)梁石日の『闇の子供たち』を読了しました。
なんというか、「衝撃的」という言葉以外では表せないショックでした
文化人類学に携わる者として、アフリカの「女子割礼」やインドにおける婚姻と女性などさまざまな「問題」を読むことはありますが、文化相対主義を基本セオリーとする人類学においては、それらはある意味(問題解決のために)実際に介入することはタブーとされている部分です。また、ひどい言い方になりますが、そういった「問題」はあくまでも現地の伝統概念に基づいて行われているもので、私たちにとっては「遠い世界の出来事」でしかない、というのが現実です
本書では、まずタイの山岳地帯で育った貧しい8歳の子供が実の親に売られ(親はそのお金でテレビや冷蔵庫を購入)、何も知らないままに売春宿に連れて行かれる話から始まり、最後は臓器売買に関わる話で終わっています。
人身売買から児童虐待、レイプ、エイズ、ゴミ捨て場に捨てられて死を待つばかりの子供、と正直言って途中で読むのがいやになるような話しか出てきません。読了後も非常に後味の悪い感じになっています。18歳未満うんぬんの問題ではなく、初潮さえ来ていない、10歳にも満たない子供たち(女児とは限らない)を性欲の対象にする人の多さに愕然としました。
しかし、本書で語られていることは決して他人事ではなく、私たち日本人が加害者になっているということが改めて突きつけられており、読み終わってみると「私たちが知るべきこと、読むべき本だった」と思いました。これを「ノンフィクション(ドキュメンタリー)かフィクションか」ということで批判する人もありますが、それは問題の本質ではありません。幼児売春や臓器売買がこのような形態で存在しているのは事実であり、そこで搾取されているのは常にいわゆる「第三世界」の子供たちなのです。
日本人の「買春ツアー」なるものが話題になったのはもうずいぶん前の話だと思いますが、そういうものの中にも幼児売春の客となった日本人がいたのでしょう。また、最近になって児童買春・児童ポルノ禁止法などがたびたび話題になっていますが、日本はその「市場」に比べ(ヨーロッパ諸国で流通している児童ポルノのなんと8割が日本製、と「第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」でも厳しく批判されていました)日本のこの分野に対する法令の整備は非常に遅れているようです。また、本書のあとがきにもあるように、幼児売春のいい客である日本人の好みに合わせて「日本人に受けのいい顔立ち」をしたタイの少数民族の子供たちが高値で売買されるという事情もあるとされ、ますます陰鬱な気持ちになります。
こういった直接的な加害者ではなくとも、ウォーラーステインの世界システム論によれば、「中核」である日本が富むために「周辺」は不平等な交換に甘んじなくてはならず、結果として貿易が盛んになればなるほど両者の格差は拡大することとなっています。
日本は第三世界に多くの開発援助をしているといわれていますが、本書で書かれているように相手の国側はそれらを有効に利用するシステムそのものが崩壊している状態です。私たちにいったい何ができるのか、どうすれば幼い子供たちが搾取されなければならない状況を変えられるのか、考えてしまいました(答えはなかなか出ませんが)
この本は映画化もされているようですが、こちらでは見かけません。

ちなみに、作者の梁石日(ヤン・ソギル)は在日朝鮮人だそうですが、彼に興味を惹かれて、もう一つの話題作『血と骨』の映画版も見てみました。

この話も『闇の子供たち』とは違う意味ですごい話です。またビートたけしの演技も迫力でした
こんなに存在感がある役者だったのかと目から鱗でした
なんというか、「衝撃的」という言葉以外では表せないショックでした


本書では、まずタイの山岳地帯で育った貧しい8歳の子供が実の親に売られ(親はそのお金でテレビや冷蔵庫を購入)、何も知らないままに売春宿に連れて行かれる話から始まり、最後は臓器売買に関わる話で終わっています。
人身売買から児童虐待、レイプ、エイズ、ゴミ捨て場に捨てられて死を待つばかりの子供、と正直言って途中で読むのがいやになるような話しか出てきません。読了後も非常に後味の悪い感じになっています。18歳未満うんぬんの問題ではなく、初潮さえ来ていない、10歳にも満たない子供たち(女児とは限らない)を性欲の対象にする人の多さに愕然としました。
しかし、本書で語られていることは決して他人事ではなく、私たち日本人が加害者になっているということが改めて突きつけられており、読み終わってみると「私たちが知るべきこと、読むべき本だった」と思いました。これを「ノンフィクション(ドキュメンタリー)かフィクションか」ということで批判する人もありますが、それは問題の本質ではありません。幼児売春や臓器売買がこのような形態で存在しているのは事実であり、そこで搾取されているのは常にいわゆる「第三世界」の子供たちなのです。
日本人の「買春ツアー」なるものが話題になったのはもうずいぶん前の話だと思いますが、そういうものの中にも幼児売春の客となった日本人がいたのでしょう。また、最近になって児童買春・児童ポルノ禁止法などがたびたび話題になっていますが、日本はその「市場」に比べ(ヨーロッパ諸国で流通している児童ポルノのなんと8割が日本製、と「第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」でも厳しく批判されていました)日本のこの分野に対する法令の整備は非常に遅れているようです。また、本書のあとがきにもあるように、幼児売春のいい客である日本人の好みに合わせて「日本人に受けのいい顔立ち」をしたタイの少数民族の子供たちが高値で売買されるという事情もあるとされ、ますます陰鬱な気持ちになります。
こういった直接的な加害者ではなくとも、ウォーラーステインの世界システム論によれば、「中核」である日本が富むために「周辺」は不平等な交換に甘んじなくてはならず、結果として貿易が盛んになればなるほど両者の格差は拡大することとなっています。
日本は第三世界に多くの開発援助をしているといわれていますが、本書で書かれているように相手の国側はそれらを有効に利用するシステムそのものが崩壊している状態です。私たちにいったい何ができるのか、どうすれば幼い子供たちが搾取されなければならない状況を変えられるのか、考えてしまいました(答えはなかなか出ませんが)

この本は映画化もされているようですが、こちらでは見かけません。

ちなみに、作者の梁石日(ヤン・ソギル)は在日朝鮮人だそうですが、彼に興味を惹かれて、もう一つの話題作『血と骨』の映画版も見てみました。

この話も『闇の子供たち』とは違う意味ですごい話です。またビートたけしの演技も迫力でした

