「カムイ伝第二部」もいよいよ10巻目を読了。
11巻の冒頭にに置かれた「前巻までの概説」を全文引用しよう。
「前巻までの概説」とは要するによくある「これまでのお話」である。
〈日置領代官・錦丹波と娘・鞘香は、老中筆頭・酒井忠清を後ろ盾とする猿投沢城主・望月佐渡守の仕掛けた巧妙な罠にはまり、酒井の屋敷で、闇から闇に葬り去られようとしていた。/その時、今や酒井家の奥勤めをする身となっていた百姓娘・加代と再会。加代の命をかけた嘆願によって二人は処刑を免れる。/新たに日置領を預かることになった望月佐渡守は、意外にも竹間沢の庄屋を新代官に任命。百姓側の条件をすべて飲み、百姓の集団的戦闘訓練ともとれる稲刈り前の行事〝共鳴り〟をも許す。/佐渡守が竹間沢の案内で天領のお止め山であった狩場で鷹狩りを楽しんでいると、巨大な熊が出現。あわやというところを、苔丸(スダレ)に救われる。その褒美として、領内通行勝手の鑑札を得た日置影衆の頭・苔丸は……〉
長くなったが、じつはこの概説は本当におおまかな〈概説〉である。
400ページを超える〈あらすじ〉など、この字数で収まるはずもない。
ワタシがこれまで延々と書いてきたことがらも、全体のほんの一部でしかない。
米作りが終わったあとの百姓たちの、川を堰き止めた搔堀漁の描写は力強い。この第二部でもやはり農民、漁民の働く姿を描く白土三平と赤目プロの力量は並々ならぬものがあることが確認できる。
搔堀漁を百姓にまじって楽しむ錦丹波と望月佐渡守。
それはこの10巻の最後付近の〈共鳴り〉の描写においてもそうである。この〈共鳴り〉が百姓一揆における戦闘訓練でもあったという白土三平の解説は、第一部のクライマックス、日置藩大一揆を想起させずにはおかない。しかし、それはこの第二部で語られた天草のキリシタンも含めた百姓一揆のようにかつての記憶でしかない。この〈共鳴り〉と、〈領内通行勝手鑑札〉を手に入れた、日置影衆の頭・苔丸、そして代官となった竹間沢の庄屋がどのような動きを見せるのか。
百姓一揆における戦闘訓練の要素をもつ〈共鳴り〉。
笹一角を名乗る草加竜乃進は武士を捨て、医学を学ぶために妻アヤメと共に海路で長崎へと向かっている。
二度ほど物語に登場した、正助とナナの長男・一太郎はどうなるのか。
さらに、白い狼カムイ、日置城跡に棲む野生の猿の群れの運命は。あと二巻ですべてに決着がつくとは到底思えない。
〈続く〉