風鳴りの谷の湯番・喜太郎はついに金鉱(金脈)を発見し、
望月佐渡守により鉱山の奉行に抜擢される。
その前に喜太郎ははぐれ猿・歯ッ欠けに鉄製の義手とラッパを与える。
歯ッ欠けはその義手とラッパを武器に、日置城跡の猿の群のボスとなる。
これが11巻の主要な出来事である。
喜太郎の元に、カムイと一太郎が現れることも付け加えておこう。
また、洋犬グレードデーンをボスとする野犬の群と、
歯ッ欠け率いる猿の群との闘いもある。
さらに、鉱山を仕切る山師と百姓の対立も描かれる。
ここにあるのはエコロジーの観点からの、
自然の破壊に対する批判的な視点ではなく、
むしろ農林業と鉱業の抜き差しならぬ対立の提示だろうか。
最後の12巻では、カムイと白狼カムイの出会いから始まる。
このエピソードは感動的であるが、
物語の中でどういう意味をもつのかがはっきりしない。
12巻については後日感想を記す。
カムイと一太郎の修練のシーンはとても楽しく読める。
佐渡守から鉱山奉行に任命された喜太郎は、このあとどんな運命をたどることになるのか。
喜太郎から与えられた鋭い爪を持つ義手と、ラッパは歯ッ欠けの武器として、洋犬や熊との闘いに絶大な効果を発揮する。
11巻では鉱山労働者の姿も描かれるが、物語として発展することはない。
金銀の採掘のために切り開かれる山は荒れ、やがては農地をも破壊することになる。
12巻冒頭のカムイと白い狼の邂逅。
白狼はツレアイのメス狼を助けてもらうためにカムイを呼んだのだった。
こういうひとつひとつのエピソードはおもしろいのだが、
全体としての流れの意味するところがわからないのは、
作品の致命的な欠陥ではないだろうか。