散歩と俳句。ときどき料理と映画。

アンソニー・クイン 13 『25時』

アンソニー・クインの1967年の映画に『25時』がある。
C・ビルジル・ゲオルギュによる1949年の小説を原作とする、第二次世界大戦に巻き込まれたルーマニア人農夫を描いた映画で、監督はアンリ・ヴェルヌイユ。

『25時』オリジナルポスター。

国内での公開は1968年だから、ワタシが16、17歳のころになる。
なぜこの映画をわざわざ封切りの際に観に行ったのか、今では思い出すこともできない。
当時読んでいた映画関係の雑誌で好評だったのだろうか。
もしかするとソビエト映画『戦争と平和』(監督セルゲイ・ボンダルチュク 1965-1967年)が公開され、文芸大作映画の一環として観たのか。

1966年から68年にかけてワタシは劇場でよく映画を観ている。
当時の映画館の入場料金は封切館で大人で400円だから高校生はもっと安かったはずだ。

それにしてもこの『25時』は今では忘れ去られた映画という感じもする。

監督のアンリ・ヴェルヌイユは1955年の『ヘッドライト』でよく知られている。
ジャン・ギャバンとフランソワーズ・アルヌールが主演のこの映画を観たのはもちろんテレビでだが、1965年にNETテレビで放映されている。

 『ヘッドライト』オリジナルポスター。

しがないトラックの運転手(ジャン・ギャバン)と宿で働くウェイトレスの悲恋を描いたこの映画をワタシは一度だけしか観ていないが印象深い。
テレビ放映だから勝手なカットなど手を加えられている可能性はあるが、それは仕方ないことである。

 『ヘッドライト』

アンリ・ヴェルヌイユが『25時』を撮る4年前にはやはりジャン・ギャバン、そして先日亡くなったアラン・ドロンのふたりによる『地下室のメロディー』が公開されている。
この公開はやはり先日アップした短編映画『ふくろうの河』と同じ1963年の第3回フランス映画祭での公開である。

『地下室のメロディー』のオリジナルポスター。なんともヘタな絵である。

この映画もおそらくワタシはテレビ放映のさいに観たのだろう。

『25時』に戻ろう。

おおまかなストーリーは以下のようなものだ。

〈ルーマニアの農民ヨハン・モリッツは妻スザンナと子どもたちともに幸せに暮らすことを望んでいた。ところが、第二次世界大戦が起こり、警察署長のドブレスコがスザンナほしさにヨハンをユダヤ人と偽って強制労働収容所に送り込んでしまう。さらに悪いことに、ドブレスコはユダヤ人の土地が没収されると称してスザンナに離婚届の署名をさせてしまう。
それからしばらく後、ヨハンに収容所脱走のチャンスが回ってくる。彼はハンガリーに到着した際、パスポートを持っていなかったためスパイとして逮捕され、ハンガリー人の代わりにドイツの工場へ送り込まれる。そこで彼は親衛隊のミュラー大佐と出会い、オレンブルグ収容所の看守の職を得る。1944年、連合軍がオレンブルグ収容所に迫る中、ヨハンはワイマールにある連合軍の前線基地へ逃げ込む。そして、ヨハンはニューンベルグ裁判にかけられるが、スザンナから送られた手紙により無罪放免となり、妻子と再会を果たす〉

『25時』のアンソニー・クインとヴィルナ・リージ。

戦争と国家権力、そして地域の権力者にいいように引き回され、ヨーロッパ各地を転々とする主人公ヨハンを、アンソニー・クインは悲劇的にはならずにどこかユーモラスに演じていた記憶がある。

〈続く〉

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