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カムイ伝第二部を読む その六

『カムイ伝第二部』も九巻に入る。
ここでは義賊〈不知火〉の首領である医師の道無と、江戸北町奉行の石谷十蔵の過去の因縁が描かれる。
かつて二人は、1637年の島原・天草での切支丹信徒も含めた百姓大一揆で闘い合った関係である。この闘いで道無は石谷の手により、妻と生まれたばかりの子を殺害される。一揆が徹底的に弾圧され、数万人におよぶ百姓、切支丹信徒が根絶やしにされた数年後、石谷の遅くに生まれた娘が神隠しに合う。この石谷の娘が、道無の娘〈アヤメ〉ではないかと読者は想像することになる。

1637年の島原・天草での切支丹信徒も含めた百姓大一揆

石谷の手で殺される道無の妻と子

今では笹一角と名乗る草加竜乃進は、アヤメと愛し合うことになり、アヤメの医学修行のために長崎へ向かう途中、日置領を二人で訪ねる。ここで竜乃進は苔丸(スダレ)と再会する。竜乃進の目的はキギスが率いる夙谷の非人部落に新しい産業をもたらすことであった。それは表は竹皮張り、裏は皮でできた雪駄の製造である。この産業を軌道に乗せることで百姓仕事も始めることが可能だと、竜乃進は岡山藩の非人部落の例を持ち出して、さらに正助やカムイも協力すると提案する。

竜乃進と苔丸の再会

夙谷の非人部落を訪ねる竜乃進と妻のアヤメ

日置領ではあの冷酷非情の代官・錦丹波が百姓に混じって働く姿が描かれる。この人柄の変わりようは何を意味するのか。


この九巻のなかで、圧倒的な描写は道無と石谷が別々の場所で同時に語る島原・天草での切支丹信徒も含めた百姓大一揆の闘いである。しかし、これは過去の出来事である。いま現在の闘いは、たかだか義賊〈不知火〉と北町奉行所の人質となったアヤメの奪還の闘いである。人民の闘いはまだ描かれてはいない。
あと三巻、物語はどう展開するのだろうか。

〈続く〉

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