歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「島の千歳」 しまの せんざい

2009年11月01日 | 歌舞伎
所作(しょさ、踊りね)ものです。
白拍子(しらびょうし)という舞の始祖とされる、島の千歳(しまの ちとせ)というキレイなおねえさんの踊りです。
おねえさんの名前は「千歳(ちとせ)」なのですが、能の三番叟を意識して、タイトルでは「千歳(せんざい)」と読んでいますよ。

白拍子(しらびょうし)というのは、白い水干(すいかん)を着て刀をさし、烏帽子もかぶった男装姿で、職業的に舞を舞ったおねえさんたちの総称です。
平安末期から鎌倉時代にかけて流行りました。
「水干」というのは狩衣(かりぎぬ)によくにた、少しカジュアルな平安風の服です。

白い服を着ているから「白拍子」なのではなく、もともと「白拍子」というのは、踊るときの曲の拍子の名称だったようですが、
だんだんに、踊る人たちのほうを「白拍子」と呼ぶようになったようです(余談)。

とくにストーリーはなく、「島の千歳(しまの ちとせ)という名前のおねえさんが出てきて踊ります。
蓬莱山(昔はお正月の飾りの島台に絶対載っていた)の様子の描写や、
初春(はつはる)の若水(わかみず)は、汲めども汲めども尽きもせず、みたいなおめでたい内容の長唄とともに舞います。

最初は白い水干の男装姿で男舞を舞い、その後振袖の娘姿になって女舞を、最後に娘姿のままで格調高く男舞を舞って、おわります。
「ああ、おねえさんがキレイだなあ」とか、「初春らしいはれやかな雰囲気だなあ」とかそういうのを楽しむ踊りです。

内容は単純で激しい踊りでもないですが、女形(おんながた)にとってはわりと大切な踊りだと聞いたことがあります。

「若水(わかみず)」というのは、お正月にはじめて井戸から汲む水です。
一年の初めに使う水を、汲み置きの水(衛生面で多少不安)でなく、汲みたての水(新鮮で衛生的)を使うことで始め、
同時に新しい水の生命力を体に受けよう、みたいな意味あいがあります。

そんなかんじです。
気楽にご覧ください。

ところで、
徒然草によれば、「白拍子」の始祖は、源義経(みなもとの よしつね)の恋人として有名な「静御前(しずかごぜん)」の母の、「磯の禅師(いその ぜんじ)」というかただとされています。
こっちが定説として、よりポピュラーだと思います。
が、とりあえずここでは伝説的な「白拍子の始祖」ということで「島の千歳」というおねえさんが踊ります。

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