人ごとにご馳走し、
更に継ぎ足していくうちに
おでんの汁が一流店をしのぐほどの深い味わいになってきた。
料理には足すことで深まる味わいと
引くことで高まる味わいがある。
----------思えば人生も然り
なにもかも貪欲に吸収して深まっていく時代と
そぎ落とし、そぎ落として高まっていく時代。
さても人生の第四楽章をどう演奏しようか
おでんのような煮込みの人生は
もはや沢山のような気もする。
シンプル イズ ビューティフル
-------引くことの人生。
わずらわしい下世話の事柄には関わりを持たないように
静謐で孤高の世界。
若葉を吹いてくる風の囁きに耳を傾け
落葉の辛夷の幹を滴る雨の祈りに心を寄せ
ひたすら流れ消え行く雲の行方に人の生涯を重ね見て
大根という存在そのものの醍醐味を知りたいと思う。
駄菓子まころんを齧りながらラフマニノフを聴いていると
一編の穏やかな詩が生まれそうな気がしてくる。
大根やあかぎれの母夢のごとし