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ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

ポエムの窓

2007-02-28 12:20:00 | 

         琥珀

     おんなの胸の上で

     いちおくねん昔の吐息が

     静止している

     ほつ と

     ひとつぶの気泡

     だれが吐いた

     交尾を終えたオハグロトンボの哀しみか

     白雲を慕うアラウカリアの憂愁か

     それとも夢が精霊のつぶやきか

     [夜明けの空] を愛で

     賢治は

     黄褐色の雫の中にジュラ紀の恐竜を見た

     おんなは胸の肌で知っている

     ときの彼方に消えていった幾つもの風の音を

     なにひとつ閉じ込めてはおけないことを

     ようやくおんなが眠りについた明け方には

     琥珀の中でかすかに風が巻いて

     薄明の空を渡っていくものがある

     あれはカササギだろうか

       気泡がゆらめいている

                 *南洋スギ


ポエムの窓

2007-02-27 23:41:00 | 

          藪椿

       「鬼が来る!」 と

       押し入ってきては勝手に

       ふとんをかぶり

       中で念仏など唱える女

       ぼくら家族は黙々と

       塩引きで昼ごはん

       女は

       裏の藪に独りで住んでいる

       連れ合いは

       南の島で戦死した

       椿が咲くと

       脳ミソを食いに

       鬼がやってくるという

       ぽとぽとぽとぽと

       藪が血をしたヽらせ

       女だけに見えている鬼のすがた

       白い人たちに連れられて

       居なくなることもあるが

       いつの間にか藪に戻ってきている

       行き先を尋ねると

       「お・に・た・い・じ」と 

       髪を掻きながら仏のように

       やわらかくわらう

       むこう三軒

       あぶない女もお隣さんの戦後の昭和

       だれもが貧しく

       だれもがかなしく

       村のあちこち

       藪椿がたくさん咲いていた


風呂

2007-02-25 11:45:13 | 日記・エッセイ・コラム

我が家の風呂は母屋を十歩ほど外に出たところに在るが、
昨夜は電燈が切れたためローソクを点しての入浴となった。

ローソクのおぼろに揺れる炎の中で、
時間がゆるやかになっていくのを感じた。
そして始めて気が付いた。
蛍光灯の下では人は気ぜわしくなってしまうのだ・・・と。

暗がりの中でぼんやり炎に照らされながら
昔、農家に泊めてもらった日のことを想い出していた。
やはり手探り状態の暗い風呂場で、
あれは五右衛門風呂であったが
風呂のヘリには触れないよう、スノコ板の上にそっと沈んだ。
そして夕食に食べた山鳥のことを考えていた。
そこの主人は鉄砲撃ち。
縄で首をくくられた山鳥やコジュケイやキジなどが
黒くすすけた天井からぶら下がっている。
その一つを眼の前でさばいてくれた。
ナタのような刃物でぶつ切り。
血のかたまりや砕けた骨の破片が
ぼくの顔にも飛び散ってくる。
いろりでは鉄鍋がぐらぐら煮えたぎり
生乾きの薪のけむりがひどく眼にしみた。

外の深い闇ではふくろうが鳴いている。
長い時間湯に浸りながら
泊まりに来たのをずっと後悔していた。

あの十三歳の夜から、
ぼくは鳥や獣の剥製がきらいになった。



   青大豆

2007-02-23 14:49:23 | 日記・エッセイ・コラム

 いつもの直売所で青大豆を見つけた。
 一晩、水に浸してからそのまま味をつけずに煮る。
 煮あがったものに、塩をふって戴く。
  それだけのシンプルな食べ方であるが、実に旨い!
 モーツアルトのオーボエを聴きながら、
  ほろほろほろほろ食べていると、体の隅々に
     爽やかな緑が充ちてくる。
 そしてとつぜん訳もなく「シェルブールの雨傘」などが
  想いだされてくる。

      外はしっとり、艶やかな春の雨。


EAGLS

2007-02-22 13:29:55 | 日記・エッセイ・コラム

ぼくのケータイの着信メロデーはEAGLSの「ホテルカリフォルニア」。
70年代を代表する不滅の一曲。
切れ味のよいロック調に、メランコリックな歌詞がいい。
ぼくの好きな曲。
でもケータイから流れる曲は、
ほんのサワリの部分なので満足とはいかない。

     暗く寂しいハイウエイ
     涼しげな風に髪が揺れる
     コリタス草の甘い香りが仄かに漂い
     はるか前方には幽かな灯が見える
     頭は重く 視界もかすむ
     どうやら今夜は休息が必要だ
     礼拝の鐘が鳴り
     戸口におんなが現われた
     僕はひそかに問いかける
     ここは天国? それとも地獄?
     するとおんなはローソクに灯を点し
     僕を部屋に案内した
     廊下の向うからこう囁く声が聞こえる
     ようこそホテルカルフォルニアへ
     ここはステキなところ
     お客様もいい人たちばかり・・・・・・・

          歌詞の一部を紹介しました。
         *コリタス草とはスペイン語でマリファナ草のこと。