田園調布の山荘

「和を以て貴しとなす」・・ 日本人の気質はこの言葉[平和愛好]に象徴されていると思われる。この観点から現代を透視したい。

151216 16年前の日記から

2015年12月16日 20時41分56秒 | 時評

 「一流」大学を出て、学閥組織にのって昇進するシステムに乗っているだけで、若い時からチヤホヤされ、自然に庶民を見下すようになる。課長や部長になり、やがて局長や知事や国会議員になる、または教授や理事長などになる、そういった流れのなかにある一握りの人々は、公務員一般をも見下し、精神的にも服属させる。こうしたことは当たり前のようになっています。

わたしのよく行く新宿のおでん屋さんの江戸っ子おやじは、なかなか舌鋒が鋭い。酒をくびりくびり飲みながらおでんを煮る。時節柄、話はいつも同じところへ行く。「だいたい日本の経済を支えているのは中小企業だよね。景気がよいか悪いかは、小難しい統計を解説してもらうよりも、お客の来かたを見ればすぐわかるよ。」「今、中小企業はおろか大企業の人たちも店に来やしない。毎日開店休業だよ」とこぼす。「だいたい日本をこんな風にしたのも、T大を出て、何も苦労しないで天下に号令をしている役人たちだよな」と矛先は学歴社会に向かう。

 今税金に寄りかかって生きているのは役所だけではなく、民間企業(農協もそうですよ)が山ほどあります。これらは、役所と一体化して巧みに税金を食べます。最近は銀行やゼネコン、デパートまでその仲間に入った。

ドラッガーという経済学者は20世紀で最大に成長した部門は「政府」であるといっていますが、政府という怪物は国民の経済を完全に支配していて、経済の基礎単位である「家計」を容赦なく脅かします。政府というものは税金が足りなくなると、なりふり構わず国債を出して大盤振る舞い。この国債はまだ生まれてこない人たちからの借金です。こういうことを平気でするのです。

 政府は国民が稼ぎ出す所得の半分近くを国庫に召し上げて再配分します。政府は予算の流通業者で売人です。生産者は国民です。予算は財政とか金融を通じて、エリート役人の考えた配分方法で、いろいろな事業名で各省庁の流通組織で配られます。そこにもエリート役人が根を張っていて、地方の片隅まで公金が支配する構造になっています。公金が地方に再配分される基本的な目的は、地域間に経済力の差(貧富の差)が生じないように社会生活の基盤を公平に作るということですが、この配分が歪んでいる場合は、地域経済や家庭経済を暖める「利益」を作り出しません。最近の大型公共事業というのもそうだと思います。本来は教育、治安、国防、消防、社会保障など公共の利益のために予算が配分されるのですが、最近はどうも違います。

 強大な政府の成長で、日本では、国に関係なく自立している組織や企業はきわめて少なくなりました。自立している代表的なものが中小商工業(自営業)です。おでん屋も総菜屋も焼鳥屋も散髪屋もそうでしょう。わが ㈱地域事業研究所もそうですよ。農業も本来そうなんです。

中小商工業、農業は真の意味で国の宝ですね。おでん屋のおやじの舌鋒は激しさを増します。「運転資金を無制限に補給されていりゃどんな赤字会社でも倒れないさ」「そんな企業だったら社員は仕事するわけはないだろ」と税金で養われている組織の本質をズバリつく。零細企業のサラリーマンのお客はそのおやじさんの口舌に共感しながら、憂さをはらす。

 日本という国は、資本主義国(あるいは自由経済国)ではありますが体のなかに流れている血液(所得)の半分は、役人たちが考えた「手配図」に沿って別の経済(実は不経済)が出来上がり地域経済や家計と呼吸が合っていません。

この構造が、万年氷のように数十年も続いています。 景気がいつまでも恢復しないのは、取引が世界に広がり、国民は世界と競争を強いられているのに、役人たちが世界と関係なくこの万年氷の「手配図」を握って放さないからです。役人と共生した企業や役人のお手盛り組織(特殊法人や公営企業)が、特権的にぬくぬくと棲息している一方で、国民経済の真の担い手である中小商工業や農業がどんどん減り、地域活力が失われています。地域が壊れてしまって、人口が減り、企業がなくなるという大惨事がおきているのに、何も改まらない、キャリア役人はますますふんぞり返り、その中のかなりの人が汚職や利権保持に組み込まれている。

市場とは人だかりのこと、市場が作られるということは生産と販売が絶えず繰り返されていること、これこそ人の営為、生きている証拠なのに、その現場が失われ、人々が排除されつつあります。

全国の隅々に市場があることが地域活力です。中小企業や零細企業(農業をふくむ)に力を付けることで市場参加を助成することにこそ公的な資金は使われるべきなのに、市場を作らない(波及効果のほとんどない)ものに巨額の国庫資金投入が行われているわけですから、景気回復など夢のまた夢なのです。


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