日本の航空会社が発行する雑誌を購読していますが、最近の記事に
アメリカ、シカゴの鉄道の様子が書かれておりました。その中にシカゴ
郊外からダウンタウンへ通勤している乗客の話が載っております。
「以前は車で通勤していましたが、渋滞や駐車場の問題もあり今は
電車を利用しています。時間も正確ですし、2階建の車内は見た目
よりも広くなかなか快適です。駅には改札は設置されていないので、
乗車後に座席のクリップに切符を挟んで車掌の検札を受けるというのも
レトロ感があって楽しいものです」
このような通勤風景は日本、特に首都圏では終戦後から全く無縁の
世界です。日本では職場からかなり遠い郊外から電車に乗って、顔、
手、足が夫々別な方向を向きヨガの様な恰好で1時間も車内で揺られて
通勤します。何年か前から、通勤電車の座席が減少又はなくなり、
益々牛馬同然の状態で詰め込まれ運ばれるようになりました。以前、
海外駐在時代、運転手付きの車での通勤から、日本に帰国後、通勤電車
(痛勤電車)になってとてもこれに耐えられず、暫くの間グリーン車を
利用しておりました。費用は掛りましたが肉体的疲労、痴漢と間違えられる
リスクなどを考えてこの選択としました。
このグリーン車も2階建で、勿論必ず座って乗車出来ました。座席に
座ると眠くなる体質なので、切符は前席の後に着いているテーブルの
隙間に挟んで寝ておりました。しかしシカゴの電車の様にはいかず殆ど
検札の車掌に起こされ眠りを妨げられました。
先進国の中でこのような過酷な状態で通勤している国民は恐らく
日本だけではないかと思います。イギリス、ベルギー、ドイツ、フランス、
シンガポールなどで地下鉄、電車、長距離列車に乗車しましたが、
朝夕の通勤ラッシュ時でも日本の通勤電車風景とは相当違って
おりました。インドやインドネシアは、ご承知の通り、列車の屋根や窓の
外に雲霞のごとく張り付いて全く車両が見えないほどの乗車状態、恐らく
乗車率300%から500%で走っております。これ程酷くは無くても日本の
通勤状況は人間の尊厳を無視した受け入れがたい事象であることは
疑いの余地がありません。
首都圏の路線で、最も混雑する区間の最大乗車率は、総武線207%、
山手線216%、埼京線200%、中央線211%、とのデータがあります。
どうして牛でも豚でもないのに立ったまま運ばれなければならないのか?
アウシュヴイッツの強制収容所を思い出すのは考えすぎですか?
定刻通りの発車や到着、車内の安全性などの部分では他国に勝る
優れた運行を続ける日本の鉄道ですが、箱に入ったイワシの状態で
運ばれる通勤は是非改善されるべきです。都市への機能の集中化を
避けて地方分権を行い地方への人口移動を実現して、通勤地獄を
改善する事が必要です。東日本大震災の復興による国情の変革は
地方分権化を行う千載一遇のチャンスです。地方の疲弊や過疎化を
防止するためにも絶対やらなければならぬことだと思います。
この際、首都移転を行う方が良いかもしれません。人口が集中する
商業地区に首都を置くのは適切ではありません。世界の国々でも
多くの国が首都と商業地区を分けております。アメリカは一大商業圏の
ニューヨークではなくワシントンに首都があります。
同様にオーストラリアはシドニーではなくキャンベラ、ニュージーランドは
オークランドではなくウエリントン、南アフリカはヨハネスブルグではなく
プレトリア、ナイジェリアはラゴスではなくアブジャ、トルコはイスタンブール
ではなくアンカラ、モロッコはカサブランカではなくラバト、ミャンマーは
ヤンゴンではなくネビド―、ベトナムはホーチミンではなくハノイ、中国は
上海ではなく北京、ブラジルはサンパウロではなくブラジリア、等々。
首都は福島に移転するのが最良の選択と思います。
バングラデッシュの列車 http://www.telegraph.co.uk/から引用