第四章 あの夏の忘れもの(下)
駄文をお読み下さい・・・と嘯いて書き始めた『やながもんの唄』も四章の下に到達した。
まずは連載ペースが遅くなってしまっていることをお詫びしたい。
周囲から「読んでるよ!」という声に乗せられて、だんだんと物書き気どりになっていた自分に気づいた。変な色気が出てきて『う~んアレだぁもう少しドラマティックに』とか『その表現は面白くないな』とか考えて、筆が重くなってしまっていた・・・
素人なのだから素直に淡々と書けば良い!と気づきました。気分一新して連載再開!もうしばらく、この駄文にお付き合いください。
2013年の「恐怖の細道」の副題は『あの夏の忘れ物』と名づけた。
これは、「忘れ物」を取りに行ってしまった少年「やなお」を彼女のいる昭和の柳ヶ瀬に探しにいくというストーリーから想起している。誰もが少年時代に感じた切ない夏の思い出をお化け屋敷で思い起こしてもらいたい、そんな思いも込められた副題なのだが、やはり僕たち『やながもん』の思いも込められている。
僕たちは忘れ物をした・・・2012年の夏に、それを見つける事!
それが2013年のテーマだったのだ。
具体的に言えば、まず収益を上げることが出来なかったことだ。
夏だけでも昭和の賑わいを創出して収益を出し柳ヶ瀬の活性化の為に寄付する、それが出来なかったことは前章でも書いた、今度はお金を残したい!それがまず一つ。
そして終わってから良く聞いた話の中に「いつ行っても何時間待ちみたいに書いてあって結局入れなかったわ・・・」と言われたこと。会場に居た僕らは「おい、きょうはスッゲェぞ6時間待ち」などと悦にいっていたのだが、待ち時間が長すぎて入れなかったお客さんにしてみれば残念でしか無かっただろう・・・悪いことをした。
僕たちは2012年の事業の見直しから始めた。何が収益を痛めたのか?
まずはイベント!どれも思い出深く楽しかったのだが本当に赤字ばかりだった・・・・・・
・ライブイベント(バンド、ライブペイント、怪談、都市伝説トークショー、盛りだくさんで内容もバラエティーに富んで良かったのだが・・・)
・映画上映(これは申し訳なかった、ごめんなさい)
・手相(島田秀平さんに来ていただいて大変好評だったけど・・・・赤字)
・プロレス(なんと妖怪プロレスを開催した、アップルみゆき選手扮する口裂け女と、我らが刃駈選手、砂かけばばあにフランケンが妖怪ワールドカップ争奪戦を行った!スッゴク熱く楽しかったが・・・これも赤字!更にエキジビジョンで屋敷長と戦い僕は肋骨を負傷した)
などなど、これでもか!と打ったイベント・・・どれも楽しかったのだが、でも止めよう!お化け屋敷一本で行こう、と改めた。
営業、広報を強化した!ポスターを貼りまくり(名鉄さんの後援をいただき、駅全部に貼ってもらえたのは大きかった!)、どこにでも出掛けてPRしまくった。この年の広報、営業担当のイナガキ君のエネルギーはあきれる程に凄かった!
そして、柳ヶ瀬商店業連合組合に共催していただいた!これは大きかった。一年目の僕たちはなんの実績も無い有志の集まりだった。にも関わらず、僕たちの活動を評価して柳ヶ瀬が動いた!いや動いてくれたのだ!この年の事業委員長の林君は正に八面六臂の大活躍だった、一緒に広報営業に走り回り備品、資金調達、運営中は少し痛い「口裂けジジイ」まで演じてくれたし、僕の大切な優しい相談役でもあった。
それ以外にも、前年の反省から様々な見直しが行われ、運営システムがスマートになった。
そして、よりスムーズにお客さんが流れるように設計段階から綿密に計画した!
建築家の加納さんとアミューズメント性を高め且つ流れを作る動線を工夫した、前年の時空を越える6人乗り鵜飼舟は8人乗り路面電車になった!
余談だが、その巨大な路面電車を見た時の引っ張り役・刃駈選手の「マジッすか?・・・」と言った時の絶句ぶりは楽しい記憶だ(そう、あの乗り物は人力で動かしていたのだ!)。
建築もスムーズに進行した。
そして僕たちは2013年7月16日、「あの夏の忘れ物」を取り戻す旅に出掛けた。
二年目のジンクスを心配する僕たちの不安を他所に初日から大勢のお客さんが詰め掛けた。
いきなり500人を超えるお客さん。『待っててくれたんだ』心底嬉しかった・・・
沢山の人たちが喜んでくれた、柳ヶ瀬には子どもたちの嬉しい悲鳴が響き渡り、彼女は偶像(アイドル)になった!導線や運営面の工夫も功を奏し、お客さんを何時間も待たせるようなことも無くなった。何より嬉しかったのは、前年に来てくれたお客さんが多く訪れてくれたことだ。「あの夏の忘れ物」・・・置いてきてしまった記憶を取り戻しに来てくれた。いつの間にか、このお化け屋敷はたくさんの人の「思い出の場所」になっていたのだ。
この年の来場者数は当初目標の2万人を遥かに超え、2万2千人を超える動員となった。
そしてお金も残すことが出来た!さまざまな処から聞こえる賞賛の声も心地よかった!
そう、僕らは「あの夏の忘れ物」を見つけたのだった!
・・・かに見えた・・・
次章「一人飲みの夜」3年目の休催の真相に続く。