ブルースという音楽はアフリカから奴隷として連れてこられた人たちが過酷な労働の間に日々の悲しみや僅かな歓び(blue)を歌や音楽にして自分たちを慰める為に発生したものだそうです。
口裂け女という存在・・・彼女は妖怪なのでしょうか?私は違うと感じています。
彼女は悲しい事故にあったことによって変わり果てた自らの姿に苦しみ、悲しみ、魂の救いを求めて彷徨い彼女は呟く・・・・・「アタシ・・・・キレイ?」と。彼女のblueは果てしなく深くそして悲しい。
私たちのお化け屋敷「恐怖の細道」にも沢山の口裂け女がいました。彼女たちはお化け屋敷のある夏には「恐怖の細道」にいてくれますが、普段は人間の社会の中でそれぞれの生活を送っています。その姿は様々で主婦や学生、シングルマザーや女優や歌手、会社員やフリーター・・・そこにはそれぞれの営みがあり、それぞれのblueがあります。
「サチ」という口裂け女がいます。
彼女は、2012年の初年度から口裂け女をしています。役者やもちろんお化けの経験もなく、全くの素人でありました、私の荒唐無稽な『お化け屋敷計画』にシガラミの中で協力してくれていました。当初は普通のスタッフとして、会場のペンキを塗ったり、チラシを配ったりそういった協力をしてくれていました。
しかしオープンが近づくにしたがって決定的に不足しているものがありました。
それは「口裂け女」です。
私の「なあ、さっちゃん・・・・口裂け女やってくれへん?」というお願いの返事も無いままに、東京から来た初代口裂け女に口を裂かれ、あわれ、さっちゃんは「口裂け女サチ」と成り果ててしまいました。彼女の大活躍がはじまりました、色んなTVやメディアが彼女の勇姿を伝えてくれました。
もちろん問題が沢山起きました・・・・そこについて詳しく触れることは控えたいですが、私たちは共に困難、苦しみ(blue)を乗り越え歓喜の有終を迎えることができました。
その後も2013年、2015年、2016年、2017年の夏祭りの全てに参加してくれました。
魂が共鳴する同志というべき人の一人であります。
そんな彼女に、言葉に出来ない悲しい出来事がありました。
彼女を悲しみ苦しみから救いたいと願いますが力が足りません。
8年という歳月の中で、私は彼女たちの様々なblueを見てきました。他愛の無いものから深く悲しいものまで・・・不甲斐ない思いばかりの我が身でありますが、僅かでも彼女たちに澄み渡る青空のblueを見せてあげることが出来たらと思っています。
今年も先日『口裂け女オーディション』が開催されました。私たちのお化け屋敷に希望を持って参加を望んでくれた、新しい仲間が増えてくれそうです。
また、今年もそれぞれのblueを抱えた口裂け女たちと一緒に悩み、苦しみながらも最後に一緒に青空のblueが見られるような夏にしたいと思います。
頑張ろうね!
「やながもん」代表 吉村 輝昭
「口裂け女のブルース」~彼女のblue~