山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座121

2018-12-01 17:22:42 | 観天望気

~天気図に書かれていない気圧の谷が接近するときの北アルプス~

今回は11月29日(木)に白馬山麓から見られた雲についてです。この日は、後立山連峰の稜線も麓から望め、この時期としては穏やかな天気になりました。

写真1 大町市からの後立山連峰

しかしながら、午後になると、稜線近くに雲が現れていきました。

写真2 八方尾根上部に現れた雲

 

この雲は、次第に鹿島槍~唐松岳付近上空で雲が厚くなっていき、やがて白馬三山にも広がっていきました。

写真3 厚みを増していく雲

第94回の疑似好天 https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/202ee26b883e4cc2263c0aba3306d9d5 で説明しましたように、山脈に沿って帯状に広がる雲が山にかかり、厚みを増してきたときは悪天の兆しです。冬季においては、すぐに行動を中止して適切な幕営場所を確保しましょう。

実際、このときも夕方になると、写真4のように、山の上では雲がべったりとかかり、雲の上端は風になびいてギザギザしているのが分かります。荒れた天気となっている証拠です。 

写真4 旗雲(はたぐも)が現れた稜線

さて、この雲をもたらした原因が何か、天気図から見ていきましょう。

図1 11月29日(木)18時の天気図(気象庁提供)

上図(図1)は、29日(木)18時の地上天気図です。等圧線(図中の線)が高気圧から張り出している部分(図中の水色の二重線。これを尾根と呼ぶ)が中部地方から関東地方に延びています。尾根の部分では下降気流になってお天気が良くなります。このため、日中はお天気が良くなりました。ただし、そのすぐ北には等圧線が気圧の低い方から高い方へと張り出した、気圧の谷(赤い破線部分)があります。これが南下してきたため、午後から山の上で雲が出現しました。この天気図では18時でも白馬付近では尾根上にありますが、それはこれが地上の天気図だからです。上空ではもっと早く気圧の谷が接近してきました。また、谷が進んでいく方向(ここでは南側)では、風も強まっていき、山の上では荒れた天気となるので注意が必要です。 

秋から冬にかけて、天気図上に書かれていない、気圧の谷が接近することが良くあります。等圧線の張り出し具合を確認して、日本海に気圧の谷を見つけたり、ヤマテンの予報士コメントで「前線の位相(いそう)が接近するため」などの表現が出るときは注意しましょう。 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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